- 金融庁や政府が仮想通貨を無視できない4つの理由
- 日本の仮想通貨規制当局として注目されている金融庁。先日金曜日には、登録業者6社に対して業務改善命令を行うなど、金融庁や政府が仮想通貨業界に対して対応を苦慮している中、仮想通貨業界を無視できない理由について考察致しました。
理由①:仮想通貨が一定の規模のアセットへ成長
仮想通貨取引は顧客の入金状況の図を見ていただくと分かる通り、最も仮想通貨人気に火がついた2017年12月に1兆円もの入金額があり、また取引高も平成29年を通して現物で12兆円、証拠金・信用・先物取引で56兆円もの取引高を記録しております。
ピーク時からはやや入金額は落ち着いたものの、依然今年の3月の時点でも581億円もの入金額があります。
このことから、一定程度の預かり資産が仮想通貨取引所にある事が明白であり、仮想通貨価格の上昇も相まって、仮想通貨取引所に預けている金額や仮想通貨資産が既に金融庁も無視できない資産クラスになっていると考えられます。
理由②:若年層投資家の獲得
「貯蓄から投資へ」、「貯蓄から資産形成へ」と金融庁や金融業界は取り組んでおり、2014年からNISAが開始されるなど、その取り組みはまさに官民一丸と呼んでも誇張ではないレベルでしたが、思うように成果があがっていないと内外から批判されており、業界に対しても金融庁長官が苦言を呈する事もしばしば見られました。
しかし新しい投資家層は既存業界ではなく、皮肉にも既存金融のアンチテーゼの文化を持って誕生した仮想通貨という新しい市場で誕生していきます。
日本証券業業界のアンケートによる回答者の年齢層から見ると、既存の証券業界などの投資家層はその大半が40代以上であり中でも最も割合を占めている年齢層は50代である事から非常に平均年齢が高い事がわかります。
既存の金融業界では、より若年層の投資家の育成や獲得が課題でしたが、仮想通貨に投資する年齢層は上記の図を見ると、20代と30代で半分以上を占めております。
今まで既存の業界や金融庁が一生懸命取り組んでも、獲得できなかった若年層を獲得する事に成功した仮想通貨業界は、既存業界や金融庁は魅力的に映っているのではないでしょうか。
理由③:税収の増加
日経新聞社によると、2017年に仮想通貨取引を含めた収入が1億円以上あったと申告したのは331人で、仮想通貨の高騰により、多額の資産を築いた人間がそれだけの人数に上りました。
仮想通貨の税収について具体的な数字は出てきていないものの、総合課税という事もあいまって、一部では数千億円や数兆円などと噂されております。税収確保の観点から、当局や政府はある程度の枠組みを作り、その中で投資してもらう事がいいと考えているのではないでしょうか。
理由④:消費者保護と世論
しかし、ある意味で金融庁や政府が仮想通貨規制に取り組まなければならない理由はポジティブなものだけではありません。
コインチェックのNEM流出事件やそれらをきっかけとした交換業者への立ち入り検査で仮想通貨交換業のセキュリティ対策の脆弱性が明らかになり、消費者保護の観点や世論の強まりから仮想通貨交換業に対して金融庁も何らかのアクションを起こさなくてはならなくなりました。
立ち入り検査の結果、仮想通貨交換業登録業者やみなし業者かかわらずその実態が明らかになり、6/22の業務改善命令では登録業者において、反社会勢力に該当するかどうかのデータベースすら持っていない業者があるなどの実態が明るみになってしまい、金融庁もネガティブな理由から仮想通貨交換業への監督を強めなければならない実態に発展しております。
従来は、仮想通貨交換業に対して見守る態度でした。しかし、今回の業務改善命令のように登録審査内容に書かれていた事が実態とはかけ離れていたりするなど、交換業側にも責任がある事例が散見される他、金融庁の登録審査が甘かったのではと、金融庁に対する厳しい意見もあがりつつあります。
こうした状況から、監督を強めざるえない状況になっているでしょう。
まとめ
以上の理由から金融庁や政府は仮想通貨を無視できないだろうというのが今回の記事の総括になります。
ポジティブ、ネガティブ両面からお伝えしましたが、イノベーションと規制という狭間に当局が揺れているのは間違いないでしょう。
しかし、金融庁の仮想通貨交換業等の研究会で議論される内容は、既存の金融の枠組みからどう規制していくかという議論が多く、新しい枠組みが議論される機運は一部で見られるものの、比較的少ないように思われます。
規制はある程度必要である事は否定できない上、昨今の仮想通貨交換業の実態が浮かび上がってきている中、監督を強めるべきという意見は仕方のない事ですが、産業育成の観点から、テック寄りの人間を研究会に加えたり、発言の機会を設けるなどして、落ち着くべきところに落ち着いてほしい、それこそが仮想通貨ユーザーたちの願いである事でしょう。