仮想通貨テゾスを解説
国内の暗号資産(仮想通貨)取引所のbitFlyerとGMOコインが取り扱っている仮想通貨テゾスは、分散型アプリケーションのプラットフォームとなることを目指し開発されています。21年5月には、F1(フォーミュラーワン)のレッドブル・ホンダと提携したことで、仮想通貨業界外でもその存在が知られるプロジェクトとなりました。
本記事では、テゾスの仕組みや特徴などについて解説します。
1.テゾスとは
仮想通貨(暗号資産)国内大手取引所のbitFlyerとGMOコインに上場するテゾス(XTZ)は、21年8月時点で、CoinGeckoで時価総額42位のメジャーアルト。2014年よりスタートしているプロジェクトで、分散型アプリケーション(dApps)などで利用されるプラットフォームです。
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テゾスは、独自の検証メカニズムを持つスマートコントラクト機能と、ハードフォークすることなくブロックチェーンのアップデートが可能な自己修正機能などの特徴を有しています。スマートコントラクトの安全性、アップグレードのしやすさ、意思決定への参加障壁の低さを同時に実現させることで、ブロックチェーン技術の普及をテゾスは推進しています。
通貨名 | テゾス(Tezos) |
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通貨コード | XTZ |
公開日 | 2017年7月1日 |
コンセンサスアルゴリズム | LPoS(Liquid Proof of Stake) |
公式ウェブサイト | https://tezos.com/ |
公式Twitter | https://twitter.com/tezos |
medium | https://medium.com/tezos |
2.テゾスの特徴
テゾスには、主に3つの特徴があります。
スマートコントラクトの実証機能
テゾスの特徴としては、形式検証(Formal Verification)と呼ばれる技術者によるスマートコントラクトの内容の実証機能が挙げられます。これは、契約情報をテゾスのブロックチェーン上に設定し自動化できるスマートコントラクトの内容を、数学的な視点から技術者が検証を行う方法論です。
コンセンサスアルゴリズムにLPoSを採用
テゾスでは、データ処理にLiquid Proof of Stake(LPoS)を採用しており、マイナーが必要ありません。また、LPoSでは、承認者に選ばれたとしても権限そのものを他人に譲渡することも可能であり、保有者の中から承認者がランダムで選択される為、通貨の保有量などの要素を気にしなくてもいいというメリットがあります。
なお、PoS(Proof of Stake; プルーフ・オブ・ステーク)は、仮想通貨の保有量や保有年数に応じて報酬が決まる仕組みです。
メリットとして、悪意のある攻撃(PoWの51%攻撃など)に強い、マイニングにかかる電気消費量を抑えることができ、環境にやさしいなどがあります。その一方で、富裕層に優位という点がデメリットとして挙げられることが多いです。
ハードフォークすることなくアップデートが可能
テゾスの特徴の中でも異色と言えるのは、システム修正時に対して互換性があるという点です。
ビットコインやイーサリアムは、既存のシステムに疑問を持った人々がシステムを修正したことでハードフォークを経てビットコインキャッシュやイーサリアムクラシックが誕生しています。
しかし、テゾスの場合は、通貨を分裂させることなく、新しい通貨の定義と既存のシステムに互換性を持たせることが可能で、テゾスのシステムを応用した場合、ハードフォークの必要性がなくなるとされています。
3.独自通貨XTZとは
テゾスブロックチェーン上で稼働する独自の仮想通貨名もテゾスと呼ばれ、ティッカーシンボルはXTZです。このXTZは、ビットコイン(BTC)が抱える4つの問題を解決するために発行されています。
- ハードフォークの問題、調整問題へのダイナミックな革新力の欠如
- PoWにおけるコストの悪さと中央集権的なシステム
- ビットコイントランザクション言語の限られた表現力、それに伴うスマートコントラクトの他のブロックチェーンへの強制移行
- 仮想通貨の実行におけるセキュリティ問題への懸念
ベーキングとは
テゾスでは新規ブロックをブロックチェーンに追加し繋げる作業を「ベーキング(Baking)」と呼びます。これはPoS上のブロックチェーン生成であり、テゾスの取引記録を承認する作業のことで、ビットコイン(BTC)で採用されているPoW(プルーフ・オブ・ワーク)のマイニングに相当します。
このベーキングを行うノードをベーカー(Baker)といい、取引記録の責任をもっています。ベーカーになるノードは、安定したインターネット環境と万全なセキュリティ対策を整頓している必要があります。
ベーカーになるには、10,000XTZを保有している必要があります。しかし、仮に必要量に満たしていない場合でも、他者に自分のテゾスを委任し総量が10,000XTZとなることで参加することもできます。
委任システム
PoSにおけるセキュリティデポジット(保証金)は、コンセンサスの過程に参加し、インフラ(物価上昇)の影響を回避することが必須です。PoWにあるように、コンセンサスプロトコルはセキィリティが公正な多数派によって決められ、テゾスプロトコルで奨励され、不正の行為にはペナルティを公正な行為には報酬を与えます。
仮に参加者が不正を犯したとすれば、保証金はなくなります。コンセンサスに参加を望まないユーザーは、他のユーザーに権利を委任する選択権があります。
4.ユースケース
テゾスのユースケースとしては、以下のケースがあります。
- 2019年2月:テゾスの最大のベーカーの一つであるテゾス・キャピタル(Tezos Capital)がStakerDAOを発表。StakerDAOは、テゾス初のDeFiアプリケーションで金融を分散的にマネジメントするプラットフォーム。
- 2019年3月:南米の大手投資銀行BTGパクチュアル(BTG Pactual)とドバイにあるファンドのダルマ・キャピタル(Dalma Capital)が、10億ドルのSTO(セキュリティトークンオファリング)のパイプラインにテゾスブロックチェーンを利用することを発表。
- 2020年2月:証券トークンを発行するセキュリタイズ(Securitize)企業と不動産のSTOを行うエレヴェッティド・リターンズ(Elevated Returns)が、テゾス上で10億ドル(約1.100億円)を目標に不動産のトークン化を実施することを発表。
テゾスはその自立性のあるアップデートと形式認証システムにより金融分野での利用が推進されています。また、テゾスは、dApps(Decentralized Application/分散型アプリケーション)ゲームにも着手しています。
- 2020年4月…テゾスの共同創設者のKathleen Breitman(キャサリン・ブライトマン)がゲーム企業Coaseを設立し、テゾスのブロックチェーン上で構築するカードゲームの「Emergents」をリリースすることを発表。
- 2020年7月:中国の国家ブロックチェーンインフラプロジェクト「BSN(Blockchain-Based Services Network)」にテゾスのブロックチェーンが統合されることが判明。
- 2020年10:^) テゾスのブロックチェーンが、フランスの都市の道路建設計画に関する投票に採用。
- 2021年3月:砂漠で行われるアートフェスティバル「バーニングマン」の開催地に近い米国ネバダ州のリノ市が、テゾスと提携し、DAO(自律分散組織)やNFT(非代替性トークン)の活用に取り組むことを発表。
- 2021年4月:フランスの大手銀行ソシエテ・ジェネラルグループが、テゾスのブロックチェーン上でセキュリティトークンを発行したことが明らかに。
- 2021年5月:レッドブル・レーシング・ホンダが、テゾスとの技術提携を発表。テゾスは公式ブロックチェーンパートナーとして、ファンに向けたNFTの提供等を行っていくことが判明。
- 2021年8月:スイスの仮想通貨関連企業であるCrypto Finance AG、InCore Bank、Inactaの3社は、規制下でテゾスの基盤技術を利用し、金融商品を機関投資家向けに提供することを明らかに。
5.開発者
この項では、テゾス開発に携わる人物や組織を紹介します。テゾスは、開発拠点をスイスに置いています。
開発者
Kathleen Breitman(キャサリン・ブライトマン)は、テゾスの共同創設者&最高経営責任者です。ブロックチェーンを基盤とし、オンチェーン上にあるガバナンス仕組みを用いたスマートコントラクトプラットフォームを構築しました。テゾスのネットワークの調整やアップグレードを推し進めています。
彼女はCornell University(コーネル大学)出身です。テゾスを創業する以前は、R3(分散型台帳技術を開発する企業)で戦略的な役割を担う先任者として活躍。アクセンチュア、ブリッジウォーター・アソシエイツ、ウォール・ストリート・ジャーナルで働いていた経験もあります。
Arther Breitman(アーサー・ブライトマン)は、キャサリンとともにテゾスを立ち上げた共同創設者であり、最高技術者(CTO)でもあります。セキュリティを高く保ちつつ、利便性の高いスマートコントラクトプラットフォームを構築しています。
テゾスを立ち上げる以前は、ゴールドマン・サックスとモーガン・スタンレーでクオンツ・アナリストとして従事していました。
テゾス財団とは
テゾス財団は、2015年8月1日にスイス財団が設立した組織です。スイス連邦財団監督当局によって管理されています。
テゾスは、新しい技術の促進と開発を目的とし、オープンで分散化型ソフトウエア構成の分野に力を入れています。テゾスの開発には、世界中からの多くの団体が貢献しています。テゾス財団はそのエコシステムの一部であり、エコシステム全体は開発者、ネットワーク上の取引を検証しブロックを繋げるベーカーなどにより支えられています。
6.ロードマップ
テゾスは2017年2月にローンチされました(Alphanet; アルファネット)。同年7月にICOを実施、2億3200万ドル(約255億円)を調達。18年6月にべーったねっとを、同年9月にメインネットローンチを完了しました。
メインネットローンチ後のアップデートは、以下の通りです。
- 2019年5月 プロトコル 004 Athens(アテネ) …Gas Limit緩和、ステーキング
- 2019年8月 プロトコル 005 Babylon(バビロン) …コンセンサスアルゴリズムの改良、スマートコントラクト強化、委任手続きの単純化など
- 2020年3月 プロトコル 006 Carthage(カルタゴ)…システム内のリモート呼び出し手順、一般的な操作の機能を拡張
- 2020年9月 プロトコル 007 Delphi(デルファイ)…ガスコストの改善、ストレージコストの削減など
- 2021年2月 プロトコル 008 Edo(エド)…トランザクションのプライバシー保護を可能する機能「Sapling」や、スマートコントラクトに許可の権限を付与するメカニズム「Tickets」の導入など。
- 2021年5月 プロトコル 009 Florence(フローレンス)…オペレーションサイズを2倍に拡大(16KB→32KB)、ガスの最適化、ガスの計算速度の向上など
- 2021年8月 プロトコル 010 Granada(グラナダ)…ブロック作成時間を半分に短縮、スマートコントラクトのガス消費量を平均1/3〜1/6まで削減など
過去の事件
2017年、テゾスの創設者のアーサー、キャサリン・ブライトマン夫婦とテゾス財団のヨハン・ゲーヴァース代表の間で知的財産権を巡る内部対立が起こりました。これによりプロジェクトが遅延し、2017年末に予定していたトークンの配布が停止されてしまいました。この内部の揉め事に不信を募らせた投資家たちは、集団訴訟を起こしました。
18年8月、裁判所で支払い請求が正式に却下されたことで収束に至りました。
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7.テゾスを取り扱う国内暗号資産(仮想通貨)取引所
国内の仮想通貨(暗号資産)取引所のうち、bitFlyerとGMOコインがテゾスを取り扱っています。
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