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タイ発の注目Web3ゲームプラットフォーム「GuildFi」とは|特徴と仕組みを解説

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用
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ブロックチェーンゲームからGuildFiの誕生まで

暗号資産(仮想通貨)の基盤技術として利用されているブロックチェーンは、早くからゲームでも応用されています。ブロックチェーンを活用するとP2E(Play-to-Earn:遊んで稼ぐ)の仕組みをゲームに導入しやすくなるため、ゲーム業界からのブロックチェーンに対する注目度は一段と高まってきました。

ブロックチェーンゲームについては、仮想通貨市場が低迷して「冬の時代」に突入しても、影響は限定的であるとするレポートが2022年7月に公開されています。このDappRadarのレポートによると、22年2Q(4月から6月)にベンチャーキャピタルがブロックチェーンゲーム領域に行った投資の総額は約3,400億円(25億ドル)。21年の年間投資額である約5,400億円(40億ドル)の半分以上が、仮想通貨の冬の時代とされた22年2Qだけで投資されており、注目度の高さが窺えます。

関連:ブロックチェーン(NFT)ゲーム業界、弱気相場でもVC投資など堅調

また今年5月には、英国の比較サイト「Finder.com」によって、P2Eゲームの国別普及ランキングが発表されています。このランキングからは、アジアの国々におけるP2Eゲームの普及率が高いことが分かりました。

関連:P2EのNFTゲーム、国別の普及ランキング=Finder調査

本記事では、現在注目度が高まっている、アジアの国「タイ」発のゲームプロジェクト「GuildFi」をご紹介します。

概要

GuildFiは、メタバース(仮想空間)上の様々なゲームやコミュニティ、NFT(非代替性トークン)を結びつけるためのプラットフォームです。

ゲームにおける「ギルド」とは、ゲームプレイやお互いのサポートなど、共通の目的のために集まった組織的なプレイヤーの集まりを表します。特定のゲームの名称ではなく、Web3(分散型ウェブ)時代のゲームのインフラ(基盤)を指します。

本記事執筆時点でイーサリアム(ETH)とバイナンス・スマートチェーン(BSC)に対応。今後は他のブロックチェーンもサポートしていくと説明しています。

出典:GuildFi

現在GuildFiが対応しているゲームは、以下の4種類です。

  • アクシーインフィニティ:NFTのキャラクターを育成したり戦わせたりするゲーム
  • ザ・サンドボックス:土地購入したりして遊ぶメタバース系NFTゲーム
  • CyBall:フットボールをテーマにしたNFTゲーム
  • Apeiron:プレイヤーが神々となり惑星を支配するゲーム
  • 関連:メタバース系NFTゲーム「The Sandbox(SAND)」とは|主な特徴と将来性を解説

    GuildFiのプロジェクトは、ブロックチェーンとNFTの技術が、ゲーム体験のレベルを向上させることができると考えています。ブロックチェーンゲームとメタバースが日常的な存在になり、メタバースが実世界のようにニュー・ノーマルとなる未来を見据えているのです。

    ゲームの課題

    プレイヤーの成績が1つのゲームに限定されてしまうこと以外にも、GuildFiは現在のブロックチェーンゲームの課題を挙げています。例えば、ブロックチェーンゲームが増えてきた一方で、プレイヤーが実際に遊ぶことは容易ではありません。

    ブロックチェーンゲームを始めるのに高額なキャラクターを最初に購入しなくてはいけなかったり、そのために用意されている従来型の奨学金(スカラーシップ)制度も断片的だったりしている現状を課題としてGuildFiは指摘しています。ゲームにおける奨学金制度とは、プレイヤーが最初にキャラクター等を借りることができ、ゲームを進める中で初期費用を返済していく仕組みのことです。

    またギルドは従来、プレイヤーが収益共有モデルでP2Eゲームを始められるようにゲーム固有の奨学金プログラムを提供したり、プレイヤー間のゲーム戦略議論を促進するコミュニティサポートモデルを提供することで知られていますが、GuildFiはそれら以外にも、以下のような特徴を備えています。

  • 奨学金(スカラーシップ)アグリゲーターであること
  • プレイヤーのプロフィールに基づいたゲームのキュレーションと発見機能
  • プレイヤーや開発者がパフォーマンスを確認するためのツールを提供
  • Guilds-as-a-Service(GaaS)モデルを提供
  • プレイヤーへの新たな報酬システム
  • ゲームや暗号資産について学ぶためのコミュニティ
  • 様々なゲームをまたいで、プレイヤーや投資家らにこういった課題を解決できるプラットフォームを提供しようとしているのがGuildFiのプロジェクト。ゲームを提供するだけではなく、ゲームに関連する人々に包括的なサービスを提供しようとしていることが、このプロジェクトの大きな特徴です。

    GuildFiのエコシステム

    GuildFiのエコシステムは、以下の画像のように構成されています。

    出典:GuildFi

    上記エコシステムの中で、プレイヤーにとって中心部分となるのは以下の2つ。本節では、構造を詳しく紹介していきます。

  • Gaming Center:ユーザーがアクセスする中心部分
  • Zones:ビジネス活動を促す機能を提供する部分
  • Gaming Center

    出典:GuildFi

    さらに細かく見ると、Gaming Centerは以下の4つの要素で構成されています。

  • GuildFi ID:ユーザーIDのこと。メタバースを利用する際のパスポートの役割を担い、メタバース全体におけるプレイヤーの成績や行動履歴がGuildFi IDに紐づいて記録されます。
  • Game Discovery:プレイヤーが好みに合ったゲームを選んだり、逆にゲームクリエイターが適切なプレイヤー層を探したりすることをサポートする機能です。
  • Guild Discovery:GuildFiの奨学金プログラムを提供する機能。世界のプレイヤーがP2Eゲームを始めやすくするための機能で、プロジェクトの資金やパートナーのギルド、NFTのファンドから奨学金を提供します。
  • Proof-of-Play Rewards:プレイヤーの活動を証明することで、あらゆるゲームで遊んで稼ぐことを可能にする機能。GuildFiのエコシステムではプレイヤーに、報酬に代えることができる「GXP(GuildFi Experience Points)」と呼ばれる経験値やランキングが付与されます。この機能によって、プレイヤーはNFTのキャンペーンで割り当てを受け取れたり、ボーナス金利を受け取ったりできるようになります。GXPは、エコシステム内のレベルやランキングの決定にも利用されます。
  • Zones

    続いて、Zonesについてご説明していきます。Zonesにアクセスしたユーザーが利用する機能は大きく分類すると以下の3つです。

  • NFT Zone:NFTに関する機能を提供します。NFT Zoneで最初に作られたプロダクトは「MetaDrop Launchpad」。MetaDrop Launchpadは、限定NFTを発行したり、ゲームプロジェクトの資金調達「Initial Game Offering(IGO)」を行なったりする機能をユーザーに提供します。将来的にはNFTの電子市場やレンディングアプリといったプロダクトもNFT Zoneで提供する予定です。
  • Tools Zone:ゲームで活用するツールを提供する機能。GuildFiは、すでにアクシーインフィニティで利用するツールを提供しています。ツールはプレイヤーだけでなく、ゲームのギルドも利用することが可能。Tools Zoneにアクセスしてツールを使うことで、奨学金プログラムを管理したり、ゲームの進捗状況を管理したりすることができます。ホワイトペーパーによると、奨学金を管理するツールは数百のギルドが利用しているそうです。
  • Guild Zone:ギルドに関する機能を提供します。例えば「Guild Network」という機能では、メタバース上のギルドを集めてネットワークを作れるようにして、ギルド間でNFTを貸し借りすることを可能にします。また、Guild Networkを奨学金プログラムの機能と接続すれば、プレイヤーが奨学金制度を利用したい時に、資金を提供してくれるギルドを選びやすくなります。
  • 出典:GuildFi

    その他にもGuild Zoneでは、「Guild-as-a-Service(GaaS)」という機能も提供。最近は「〜as-a-Service」という言葉が多く使われていますが、GaaSも他のサービスと同様の意味です。GaaSはギルド用のサービスで、例えば資金を提供するだけでギルドの運営等を代わりにGuildFiに行ってもらうことが可能。他にも、資金の運用を任せたり、NFTを貸し出したい人がサポートを受けたりすることができます。

    出典:GuildFi

    そして、GuildFi自身のギルドによるサービスも、Guild Zoneにアクセスして利用する仕組みです。GuildFiのギルドは最初、タイで最大級のギルドになりました。

    GFトークノミクス

    トークンの用途

    GuildFiのエコシステムでは、「GuildFi Token(GF)」というトークンを利用します。

    GFトークンは、イーサリアムの規格「ERC-20」で発行。総供給量は10億で、ホワイトペーパーで紹介されている主な用途は、「ステーキング」と「ガバナンス」です。

    ユーザーはGFトークンをステーキングすることで、ステーキング数量に応じて様々な特典を受けることができます。特典の例として挙げられているのは以下の4つです。

  • GuildFiからステーキング報酬がもらえる
  • 各ゲームパートナーから限定NFTやトークンのエアドロップが受け取れる
  • プレイヤーやギルドの限定ツールにアクセスできる
  • ゲームへの早期アクセス
  • なお、ステーキングの報酬や仕組みに関する詳細は、これから発表すると説明しています。

    トークン配分

    GFトークンの配分割合については、以下のように説明しています。

    出典:GuildFi

  • エコシステム:40%
  • トレジャリー(資金):14%
  • チーム:15%
  • アドバイザー:2%
  • シードの資金調達:24%
  • パブリックセール:5%
  • 上記の用途に応じたリリーススケジュールは以下のグラフの通り。横軸が「月(Month)」、縦軸が割合を表しています。

    出典:GuildFi

    主な資金調達先

    GuildFiは21年11月、約8億円(600万ドル)の資金調達を行なったことを発表しました。

    この資金調達は、事業の初期段階に行う「シードラウンド」。DeFiance CapitalとHashedがシードラウンドを主導し、コインベースベンチャーズやアラメダリサーチ、アニモカブランズ、Dapper Labs、Pantera Capitalなどの著名企業が出資に参加しました。前節のトーク配分にあった「シードの資金調達」の項目は、このシードラウンドでトークンを販売して、資金調達したことを意味しています。

    出典:GuildFi

    当時の発表では、調達した資金を活用して多くの機能を提供し、エコシステムの基盤になれるように開発を継続すると説明。創設から3カ月経ったシードラウンドの時点で、以下の数字を達成したと公表しました。

  • 登録ユーザー数が10万超
  • 1日のアクティブユーザー数が2万5,000超
  • 奨学金利用者数が1,500超
  • このような数字を達成できた主な要因は、特にタイの初期ユーザーがサポートしてくれたことによって卓越したギルドをローンチできたこと、またアクシーインフィニティのツールを市場に提供できたことだと説明しています。

    なお、22年8月の最新発表によると、登録ユーザー数は28万人まで増加。また、ウェブサイトへのトラフィックも大幅に増加しており、総アクセス数は200万を超え、22年7月だけでも50万以上のアクセスがあったことを公表しました。

    関連:タイのGameFiプロジェクト「GuildFi」、22年上半期の現状報告を発表

    GuildFiのパートナーシップ事例

    GuildFiは開発と並行して、ゲームやゲーム企業ともパートナーシップを進めています。

    22年6月には「ニノ国:Cross Worlds」とパートナーシップを締結したことを発表。ニノ国は「Cross Worlds」を含むゲームシリーズで、アニメーション制作にスタジオジブリが参加したり、音楽制作に久石譲氏が参加したりしていることでも広く知られています。

    パートナーシップを記念して、参加者がトークンやゲーム内アイテムを獲得できるキャンペーンを開催。このキャンペーンが成功したことで、8月には参加者がGXPなどを得ることができるイベントを、続けて開催することを発表しました。

    このキャンペーンでは、2週間の期間中に8,000件以上の応募があり、その結果期間中に35万人以上の訪問者がサイトを訪れたほか、12,000人のユーザーが新たにクエストに挑戦しました。

    他にも8月には、LINE Games子会社で、ブロックチェーンゲーム開発プラットフォームである「LUXON」に出資を行い、協業することを発表。両社で協力して、ゲーマーやゲーム開発者のWeb3への移行を加速させるとしました。

    また同月に、ブロックチェーンメタバース「Highrise World」の開発を主導する企業「Pocket Worlds」との提携も発表。サービス開始時にはHighrise WorldをGuildFiのプラットフォームで利用できるようになる予定です。

    今後の方針と目標

    Web3ゲームの最初のフェーズでは、「アクシーインフィニティ」のようなプロジェクトがP2Eゲームの可能性を示し、何百万人ものプレーヤーがWeb3エコシステムに参入しました。現在のP2Eゲームは、参入障壁が高いにもかかわらず、多くのゲームギルドは奨学金(スカラーシップ)プログラムに重点を置くことを決定しています。

    GuildFiは現在も強力な奨学金制度の基盤を有しているものの、GuildFiチームは、奨学金を活用しないプレイヤー基盤を成長させることでビジネスを多様化させることを優先すべきであると考えています。P2Eモデルの参入障壁は、市場の大幅な落ち込みによって増幅されたため、これは正しい方針であるとGuildFiは考えています。

    前述したように、GuildFiチームの主な目的のひとつは、強力なゲームスタジオや販売者と連携し、面白いゲームをGuildFiコミュニティに提供することです。これにより、連携したゲームは「アトミックネットワーク(一定のプレイヤー数がないと楽しめないゲーム)」を実現でき、GuildFiのゲーマーコミュニティもゲーム内でより良い体験を得られるという、ウィンウィンの状況を生み出します。

    2022年8月に発表された中間報告では、GuildFiはWeb3ゲームのエコシステムを超えて拡大し、従来のゲームのサポートや提携も開始したことを紹介しています。Web2とWeb3のハイブリッドマーケットプレイスである「プロジェクトMorroc」のベータアクセスの開始により、チームはWeb2とWeb3ゲーム間の相互運用性を提供し、最終的に従来のゲームからWeb3エコシステムにゲーマーを橋渡しして取り込むことを目標としています。

    関連:タイのGameFiプロジェクト「GuildFi」、22年上半期の現状報告を発表

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