仮想通貨規制の明確化
南アフリカ共和国の金融セクター行動監督機構(FSCA)は19日、暗号資産(仮想通貨)を金融顧問及び仲介サービス法(FAIS)に基づく「金融商品」であると宣言した。待ち望まれた規制の明確化が実現したとして、業界からは歓迎の声が上がっている。
FSCAの通知書によると、暗号資産とは以下の「価値を表すデジタル表現」と定義されている。
- 中央銀行が発行したものではないが、自然人及び法人が決済、投資及びその他の有用性のために電子的に取引、移転又は保存が可能なもの
- 暗号化技術を用いるもの
- 分散型台帳技術を使用しているもの
現地の仮想通貨取引所VALRのFarzam Ehsani最高経営責任者は、この宣言を「南アフリカにとって歴史的な瞬間」と高く評価している。Ehsani氏は、仮想通貨の法的地位の明確化により、これまで仮想通貨への参入を躊躇していた南アフリカの「伝統的な金融機関」にとって、仮想通貨商品やサービスの提供開始に門戸が開かれることになったと指摘した。
規制への取り組み
南アフリカでは昨年6月、複数の金融規制当局から成る政府間フィンテック作業部会(IFWG=Intergovernmental Fintech Working Group)が、仮想通貨とその関連活動の政策スタンスに対する意見書(ポジションペーパー)を発表した。
IFWGは基本的な規制導入方針として、(1)マネーロンダリング防止とテロ資金対策(AML/CFT)のための枠組み、(2)国際送金の流れを監視するための枠組みと、(3)金融セクター法の適用を上げていた。
FSCAの今回の宣言は、仮想通貨を「金融商品」とみなし、仮想通貨サービス事業者をFSCAの監督下に置くというIFWGの方針に沿ったものだ。
国際送金に関しては、南アフリカ準備銀行(SARB)が監督することになるようだ。
規制の対象
FSCAの通知により、南アフリカの取引所や仮想通貨サービス事業者は、2023年6月1日から2023年11月30日の間、FSCAにライセンスを申請することが求められると、VALRのEhsani氏は説明した。同氏によると、マイナーとノードオペレーター、また現段階ではNFT及びNFTプラットフォームは免除されるとのことだ。
南アフリカの状況
南アフリカは、仮想通貨保有者が全人口の12.45%で世界3位にランクインするほど、仮想通貨の普及が進んでいる国だ。(仮想通貨分析会社Coincub調べ)
同時に、同国では1,000億円規模のビットコイン投資詐欺を起こした「Mirror Trading International」(2020年)や、4,000億円相当のビットコインの不正流出が発生した投資プラットフォーム「Africrypt」(2021年)などの大規模な仮想通貨詐欺が相次いで発生していた。
FSCAは、このような犯罪を金融詐欺として調査を始める一方で、これまで仮想通貨の法的地位が定まらず、金融商品だと見なされていなかったことから、正式な捜査として踏み切れていない状況だったという。そのため、南アフリカでは明確な規制の必要性が、長らく訴えられてきた背景がある。