南アフリカ:フィンテック作業部会の政策方針
南アフリカ共和国は暗号資産(仮想通貨)市場の規制に向けて一歩前進した。
6月11日、複数の金融規制当局から成る政府間フィンテック作業部会(IFWG=Intergovernmental Fintech Working Group)は、政策方針説明書で、仮想通貨とその関連活動に関する南アフリカの政策スタンスを見直すための25の提言を発表。仮想通貨を「段階的かつ構造的なアプローチ」で規制の対象とするため、仮想通貨サービス事業者(CASP)を介した規制導入のためのロードマップを提示した。
Moneywebなどの報道によると、1月、南アフリカで初めて1日あたりの仮想通貨取引額が20億ラント(約160億円)を超えた。これは、規制当局の手の及んでいない市場での取引によるものが大きな割合を占めているとされている。
また、同国では2020年末、ボットを使ったビットコイン(BTC)取引で高リターンを謳った国内最大のポンジスキームが破綻し、明確な仮想通貨規制の必要性が促されていた。
主要な規制方針
IFWGは基本的な規制導入方針として次の3つをあげている。
1.マネーロンダリング防止とテロ資金対策(AML/CFT)のための枠組み
- 金融情報センター(FIC)への登録
- 顧客確認の実施
- 顧客と取引情報の記録保持
- 不正行為の継続的な監視と報告義務
- 25,000南アフリカランド(約20万円)以上の現金取引の報告
- テロ活動やテロ組織関連の可能性のある資産を報告
2.国際送金の流れを監視するための枠組み
南アフリカ準備銀行の金融監視局が資金の流れを監督し、規制の責任を負う。
その場合は、財務省が為替管理規則を改正し、「資本」の定義に仮想通貨を含める必要性が生じる。
3.金融セクターの法律を適用
暫定措置として、仮想通貨を「金融商品」とみなすことで、仮想通貨サービス事業者が、金融セクター行為監督機構(FSCA)の監督下に置かれ、ライセンスを取得した仲介業者となる。
中期的には、金融セクター規制法に仮想通貨サービス事業者を含めることが推奨される。
仮想通貨を承認するものではない
IFWGの政策方針説明書は49ページに及び、具体的な規制指針を示しており、最終的には、個々の金融セクターの規制当局に対して、記載された推奨事項を実施する命令書としての役割を果たすものになるという。
その一方で、仮想通貨の規制環境整備は「暗黙的、明示的に関わらず、仮想通貨を承認していると解釈するべきではない」と、IFWGは改めて注意を喚起している。
南アフリカで仮想通貨に対する一般消費者の強い関心と市場参加が現実となっている中、消費者保護の必要性から、仮想通貨サービス事業者を規制の対象とする決定を下したと、IFWGは説明した。さらに仮想通貨に関連した活動状況の把握や監視の必要性、また金融活動作業部会(FATF)やバーゼル銀行監督委員会などの国際機関の要件を満たす目的なども、規制の枠組みを構築する理由だとしている。
IFWGは「仮想通貨そのもの」を規制するのではなく、仮想通貨関連のサービスを提供する企業を規制することで、「責任あるイノベーションを促進すること」につながると、その目的を強調した。