仮想通貨リスク注視するシャンムガラトナム氏
前シンガポール金融管理局(MAS)長官のターマン・シャンムガラトナム氏は2日、シンガポールの次期大統領に選出された。同氏は、暗号資産(仮想通貨)に対して否定的な態度を示してきた人物である。
シャンムガラトナム氏は、70.4%の得票率により当選した。ただ、シンガポールでは、大統領は予算の拒否権などを有するものの、主に象徴的な役割を果たす。内閣の助言に基づいて汚職捜査を開始することなどもできるが、その権限は限られている。
最近の発言例としては、シャンムガラトナム氏は1月の世界経済フォーラムで、仮想通貨について「純粋に投機的」であり「少々クレイジー」だと指摘していた。
また、規制当局は仮想通貨に関連するリスクについて「極めて明確」にしておくべきだとも続けている。
シャンムガラトナム氏は、2018年時点では「仮想通貨とそれに関連する取引活動はシンガポールの金融システムにいかなる脅威も与えておらず、それを禁止する必要はない」と意見していた。
その後2022年には、旧テラエコシステムの崩壊の影響で、仮想通貨ヘッジファンドThree Arrows Capital(3AC)が破産するなど、仮想通貨市場に混乱が見られた。
シャンムガラトナム氏はこの時期、金融規制当局および中央銀行である金融管理局(MAS)長官を務めている。また、3ACはシンガポールに2021年まで拠点を置いていた。
こうした背景が、同氏の仮想通貨への批判的な見方を強めた可能性もある。
シャンムガラトナム氏はFTX破綻後の2022年11月、MASがシンガポールの銀行に対して、ビットコイン(BTC)など仮想通貨へのエクスポージャーに1250%のリスクウェイトを課す枠組みを準備していると述べた。これは、100ドルの仮想通貨に対して125ドルの資本を用意する必要があることを意味する。
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規制を強化するシンガポール
MASは特に2022年に仮想通貨企業の債務不履行連鎖や、FTXの顧客資産流用など杜撰な経営が発覚した後に、規制強化の方針を取っている。
MASは7月、仮想通貨サービスプロバイダーに義務付ける、新たな投資家保護措置を発表したばかりだった。顧客資産の分別管理や、顧客資産についての適切な帳簿の維持、カストディ部門の独立、リスク開示などを盛り込んでいる。
さらに、リテール顧客に対してレンディングやステーキングのサービスを提供することを制限する提案を検討しているところだとも明かした。
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ステーキングとは
特定の仮想通貨を保有することで、その通貨のブロックチェーンネットワークを管理することに貢献し、対価として報酬を得る仕組み。厳密には、仮想通貨を保有するだけでなく、ネットワーク上に預け入れておく必要がある。銀行口座に法定通貨を貯金し、一定期間後に利子を受け取る仕組みに類似しているといえる。なお、ステーキングは、PoS(Proof of Stake)のコンセンサスアルゴリズムを採用している通貨で行うことができる。
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さらに、MASは8月にステーブルコインの規制枠組みも発表した。規制対象となるステーブルコインが満たすべき要件を明確化するものだ。