懲役25年と最大1.7兆円の没収
米国地方裁判所のルイス・カプラン判事は28日、破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXのサム・バンクマン=フリード前CEOに対して懲役25年の判決を言い渡した。
サム氏は、米カリフォルニア州ベイエリアのセキュリティ程度の低い刑務所で服役することになる見込みだ。
カプラン判事は、サム氏に「明らかに反省が欠如している」として、この量刑を行った。懲役とは別に、FTXの投資家や貸し手に、最大110億ドル(約1.7兆円)を返済することも命じている。
事前に米国の検察当局は、被害や違法行為の範囲が広いとして、サム氏に懲役40年から50年の判決を求めていた。一方で、サム氏の弁護士側は、物理的な暴力を伴わない犯罪であることを強調し、懲役約5年から6年半に減刑するよう訴えていた。
量刑前に米司法省は、被害者が苦境を訴える数十件の陳述書を提出。仮想通貨による返済を求めるユーザーも多かった。
FTXとは
サム・バンクマン=フリード被告が率いていた仮想通貨取引所。2019年の創設後、急速に頭角を表し、業界最大手バイナンスに次ぐ大手取引所へと成長していた。その後に経営破綻し、破産申請を行なっている。
▶️仮想通貨用語集
サム氏側の発言と判事の反論
サム氏は、判事への20分間の発言の中で、FTXの顧客が被害を受けたことを認め、元FTXの同僚らに謝罪したものの、犯罪行為は認めていない。サム氏は、次のように述べた。
FTXの元ユーザーは苦しんでいる――私はそのことを軽視するつもりはまったくなかった。このことは、これまで私が言い落していたことだと思う。そのことを申し訳なく思う。
また、「私は利己的な決断を下した」とも話しており、元同僚らがFTXに多くの努力を費やしていたが、「自分がそれをすべて捨ててしまった」とも発言している。
弁護人のマーク・ムカシー氏は、サム氏は「冷酷な金融連続殺人犯」ではなく、むしろFTX破綻後に顧客のお金を取り戻そうとした「不器用な数学オタク」であると擁護した。
ムカシー氏は、サム氏は「悪意を持って判断を行うわけではなく、数字を使って判断を行う」とも申し立てている。
しかしカプラン判事はこれに反論し、「被告は自分のしていることが間違いであり、犯罪であることを知っていた」と述べた。また、サム氏は自分を善人であるかのように見せようとしていたが「権力と影響力を目指していた」と付け加えている。
サム氏は昨年11月、電信詐欺、商品詐欺、証券詐欺、マネーロンダリング、電信詐欺の共謀などで有罪を言い渡されていた。
FTX破綻後には同社の杜撰な経営状態が明らかになっている。特にFTXの顧客資金を80億ドル(約1.2兆円)以上、姉妹会社アラメダリサーチに不正に横流ししており、バハマの不動産、新興企業への投資、政治献金に費やしていた。
関連: 仮想通貨取引所FTXのサム前CEO 7つの容疑すべてで有罪判決