未認可で年金ファンドの投資呼びかけ
オーストラリア証券投資委員会(ASIC)は12日、事実上の破綻状態に陥ったブロックチェーンマイニング企業NGS Crypto、NGS Digital、NGS Groupの3社と、それぞれの取締役であるブレット・メンダム氏、ライアン・ブラウン氏、マーク・テン・カテン氏を提訴したと発表した。
ASICは、これらの企業がオーストラリアの法律に違反して、同国で金融サービスライセンスを取得せずに事業を行っていたとして、次のように申し立てている。
NGSは、オーストラリアの投資家を対象にして、固定金利の得られるブロックチェーンマイニングパッケージに投資するよう呼びかけていた。
また、規制下のスーパーファンドから自己管理型スーパーファンド(SMSF)に資金を移し、それを暗号資産(仮想通貨)に投資することを勧めていた。
SMSFは、個人がみずから投資判断を行って年金資産を管理するもので、プロが運営する規制されたファンドよりも多様な資産に投資することができる。
自己管理型スーパーファンド(SMSF)とは
オーストラリアの被用者に加入が義務付けられる私的年金の種類の一つ。加入者4名以下の個人向け小規模ファンドで、加入者が運用内容を自由に選択できる。
▶️仮想通貨用語集
NGSは仮想通貨マイニングへの出資により、年間6~16%のリターンを得られると宣伝していた。ASICによると、約450人の投資家がすでにNGSに約6,200万豪ドル(約62億円)を出資していた。
ASICはNGS企業に対し、金融サービスライセンスなしで事業を行うことを禁止する差し止め命令を裁判所に求めている。
また、ASICは、顧客が預けた資金を失うリスクがあることも懸念。顧客資産保護のために、約6,200万豪ドル相当の仮想通貨を、独立系顧問で企業再建に携わる企業McGrathNicolに引き渡すことも要請した。
オーストラリア連邦裁判所は10日、McGrathNicolが管財人としてこの資産を預かることを許可している。
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年金ファンドによる仮想通貨投資が増加
ASIC委員長のジョー・ロンゴ氏は、次のように注意を呼びかけた。
年金ファンドを自己管理することを決めたオーストラリア人は、自己管理型スーパーファンド(SMSF)でブロックチェーンマイニングなどの仮想通貨関連の商品に出資する際にはリスクを考慮する必要がある。
NGS以外でも、オーストラリアでは規制違反を行う企業が現れている。例えばDCAキャピタル、デジタル・コモディティ・アセット、デジタル・コモディティ・アセット・ファンドなどが、管理不適切、規制違反などの関連で清算手続きや訴訟に直面している。
清算人によると、これらの企業は投資家100人に対して総額1億豪ドル(約100億円)の負債を抱えている状況だ。
オーストラリアではSMSFの仮想通貨投資額が増えていることも背景にある。
オーストラリア税務局によると、2019年からの4年間で、SMSFの仮想通貨への資産配分は約5倍に増加した。2023年9月末までの四半期で計970億円相当の仮想通貨を保有していた形だ。
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