エアドロの税金計算方法は
無料で仮想通貨(暗号資産)やNFTを入手できる「エアドロップ」は、原資を投じずに仮想通貨を得られることから人気を集めています。
レンディングやステーキングなど無償で仮想通貨を受け取る方法では、受け取った段階で税金がかかりますが、エアドロップの場合はどのような扱いとなるのでしょうか。また、仮想通貨とNFTでは適用される税制が異なるのでしょうか。今回は、エアドロップで仮想通貨やNFTを受け取ったときの税制面について解説します。
エアドロップとは?
エアドロップとは、事業者の資金調達やプロジェクトキャンペーンの一環として、仮想通貨などを配布するイベントのことです。
通常は新規プロジェクトや既存トークンの知名度を高める施策として行われます。これまでに実行された大規模なエアドロップには、Flare Networksの「フレア(FLR)」やStellar Development Foundationの「ステラルーメン(XLM)」などがあります。
エアドロップには大きく分けて「無償型」と「条件型」があり、受け取れるユーザーが異なるのが特徴です。
条件型は一定要件を満たしたユーザーのみエアドロップを受けることができ、その条件としては、例えば「過去にプラットフォームを利用したことがある」「特定日時にとあるトークンを保有していた」などがあります。一方、無償型は条件が細かく定められていないことが多く、誰でも申し込むことができます。
ただ、エアドロップを行う主な目的としては、条件型は既存ユーザーに報いるため、無償型の多くは新規ユーザー獲得のためであるため、無償型でも「SNS拡散」「コミュニティの参加」などトークンを得るための簡単なタスクが課せられることがあり、必ずしも完全な無条件とは限りません。
エアドロップでもらった仮想通貨にも税金がかかる?
エアドロップでもらった仮想通貨は条件によって課税対象となり、区分上では取引による利益と同様の雑所得として所得税がかかります。
その条件とは「エアドロップで受け取った時点で値がついているかどうか」になります。値がついている場合は取得時の時価がそのまま所得となり、値がついていない場合は売却時の利益がすべて所得となります。
また、エアドロップで入手した取得時点で時価のある仮想通貨は、売却して利益が出た際にも値上がりした分が追加の所得として加わります。
では、それぞれのパターンにおいて、どのように税金がかかってくるのかを細かく見ていきましょう。
時価のついた仮想通貨をもらった場合
エアドロップで受け取った仮想通貨の所得は「受け取った時点の価格(レート)」で計算されます。受け取ったときに価値がついていた場合は、雑所得として他の仮想通貨の利益などと合算しなくてはなりません。
【計算式】
所得額=受け取った数量 × 受け取った時点の価格(レート)
また、エアドロップで受け取った仮想通貨を売却し、差額で利益が出たときにも課税対象となります。このときは利益分のみが所得となるため、計算式は以下のようになります。
【計算式】
所得額=(売却数量 × 売却時点の価格(レート))-(売却数量 × 受け取った時点の価格(レート))
時価がついている仮想通貨をエアドロップで受け取った際は、受取時の評価額とそこから売却時にまで値上がりした分の差額をそれぞれ計算する必要があるため、所得額を計算する際には注意するようにしてください。
なお、2度の所得認識タイミングがありますが、利益に対して二重に課税されるようなことはありません。
時価のついていない仮想通貨をもらった場合
エアドロップで新興の仮想通貨が配布されたときは、どこの仮想通貨取引所でも上場しておらず、取引されていないために時価がついていないことも少なくはありません。このときは「価値のないものを受け取った」とみなし、実質的に「所得も無いもの」という扱いになります。
【計算式】
所得額=なし
しかし、受け取った仮想通貨の価格が上昇して売却したときは、その売却益が課税対象となります。スタート時点で無価値だった仮想通貨は上昇分のすべてが利益と考えられるため、売却額イコール所得額と考えて差しつかえありません。
【計算式】
所得額=(売却数量 × 売却時点の価格(レート))
エアドロップで生じた仮想通貨の損益計算例
実際に、エアドロップで生じた仮想通貨の損益計算の例を見ていきましょう。この例では経費について考えず、仮想通貨売却時の収入=所得と見なします。
時価のついた仮想通貨をもらった例
【ケース1-1:受取時】
エアドロップにより、仮想通貨Aを10枚取得した。このとき、仮想通貨Aの時価は1,000円だった。
計算式:10(Aの所有数)×1,000円=1万円(所得額)
受け取った時点の価格が1,000円の仮想通貨を10枚受け取ったため、全額の1万円が所得額となります。
【ケース1-2:全て売却】
エアドロップで入手した10枚の仮想通貨Aを、1万2,000円のレートで全て売却した。
計算式:(10×1万2,000円)-(10×1,000 )=11万円(所得額)
この場合、元々1枚1,000円だった仮想通貨Aが1万2,000円まで値上がりしたため、その分の利益を所得として計算します。なお一部のみ売却したときは、売却分だけを利益として数えます。
【ケース1-3:一部を売却】
エアドロップで10枚の仮想通貨Aを入手し、うち半数(5枚)を売却した。
売却時のレートは1万2,000円だった。
計算式:(5×1万2,000円)-(5 × 1,000円)=5万5,000円(所得額)
このように入手した仮想通貨Aの半数である5枚を売却した場合、この5枚について利益が確定したと考え、5枚分の売却益から入手したときの時価を差し引いて利益を算出します。
時価のついていない仮想通貨をもらった場合
【ケース2-1:受取時】
エアドロップにより、仮想通貨Aを10枚取得した。
このとき、仮想通貨Aの時価は無い状態だった。
計算式:10×0円=0円(所得が発生しない)
時価がついていなければ所得もないため、実質的に課税対象にはならず、確定申告も必要ありません。しかし、時価がついていなかった仮想通貨を売却して利益が出たときは、前述と同様に課税対象となります。
【ケース2-2:全て売却】
エアドロップで入手した10枚の仮想通貨Aを、1A=1万2,000円で全て売却した。
※Aの取得時にはどの取引所でも取り扱い(上場)がなく、時価の無い状況だったとする
計算式:(10 × 1万2,000円)=12万円(所得額)
上記のように、売却で得た利益の額を所得として計算します。一部を売却した際も同様で、その売却益がすべて所得になると覚えておきましょう。
エアドロップによる所得は確定申告でどう扱えばいい?
仮想通貨による所得は「雑所得」に分類されますが、これにはエアドロップによる所得も含まれます。雑所得は、会社員などの給与所得者なら所得が20万円を超える場合に確定申告が必要になります。
なお、収益を得るために支払った各種手数料や書籍代、パソコン代、光熱費などは経費として差し引くことができるため、過不足なく計上すれば節税対策にもなります。
雑所得は累進課税制度の対象で、合計の所得額が増えるほど税率が上がり、最高45%、住民税を含めると最高55%もの税率がかかります。税負担も増していくため、所得を得るタイミングや経費などをコントロールするとよいでしょう。
NFTのエアドロップ(Giveaway)では税金や所得はどうなる?
「Giveaway」というNFTのエアドロップイベントもプロジェクトによっては開催されることがあり、仮想通貨と同様に「条件型」と「無償型」の2種が主となっています。このイベントでNFTを取得した場合でも税金はかかりますが、取得方法によって「雑所得」「事業所得」「一時所得」のいずれかとして取り扱うことになります。
NFTのエアドロップにおいても仮想通貨と同様で、時価がある場合とない場合が存在し、損益計算の流れも同じになります。
ただ、時価の算定方法については明確に定められてはいません。
過去にマーケットプレイスで売買されたことがあるなど、時価がついていると考えられる場合にはまずは税理士等と相談することをおすすめします。
そして、所得のみなし方については、ある程度のアクションをした見返りにもらう「条件型」の場合は役務の提供として「雑所得」もしくは「事業所得」として扱い、ほぼ無条件でもらえる「無償型」の場合は偶発的な取得として「一時所得」になることが多いです。
一時所得となった場合は50万円の特別控除があるものの、他の所得とは損益通算ができないため、仮想通貨取引による損益とは合算できないことには注意してください。
まとめ
エアドロップで仮想通貨を受け取った場合、その時点で時価があれば「課税対象」、時価がなければ「非課税」となります。しかし、売却して利益を得たときはどちらも雑所得の対象になるため、受け取った時点でその日時や時価を記録しておくのがおすすめです。
またNFTのエアドロップ(Giveaway)で受け取った場合は一時所得の対象となることがあり、取得時価格の算出にはフロアプライスを用いるため、どのマーケットで売買されているのかをきちんと把握しておくようにしましょう。NFTに関する税制は定まっていない部分も多いため、今後の税制改正にも注目していきましょう。
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