- 8年の研究集約ポータルを開設
- 2029年までにL1対応完了へ
量子耐性へ万全の体制
イーサリアム(ETH)財団は24日、量子耐性(PQ)セキュリティに関する取り組みをまとめた専用ポータルサイトを開設した。これは財団内の複数のチームによる8年以上にわたる研究成果を集約したもので、量子コンピュータがもたらす将来的な脅威に備えて、ネットワークの対応を本格的に進めるイーサリアムの姿勢を示している。
イーサリアムは、数十年ではなく「数世紀」にわたって使える、自律的で頑健なインフラを目指しており、安全性は譲れない要件だと財団は強調する。その中には、情報処理の根本的な変化、特に量子コンピュータによる公開鍵暗号の破壊にも耐えられるよう設計する責任も含んでいると述べた。
量子コンピュータは、最終的には所有権の管理や認証、コンセンサスを支える公開鍵暗号を破る可能性があるが、財団の研究者らは「暗号学的に意味のある量子コンピュータ」がすぐ近くに迫っているとは考えていない。
一方で、分散されたグローバルプロトコルの移行には、数年の準備と徹底的な検証が必要なため、脅威が到来する前から対応を始めることが重要だと強調した。
ポータルサイトは、イーサリアムに関するPQ情報の包括的なレポジトリとなっており、PQが各プロトコル層に与える影響やPQロードマップ、開発のための各種リソース、PQに関するFAQなどが掲載されている。
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イーサリアムのPQアプローチ
イーサリアムは、PQへの転換を「暗号的柔軟性(cryptographic agility)」の観点から捉えており、ネットワークの安定性を維持したまま、コアとなる暗号プリミティブを更新できる設計を前提としている。また、量子リスクを「プロトコル設計の最先端技術を進歩させる機会」として捉えており、それぞれのチームが並行して、PQアルゴリズムの形式検証を進めている。
現時点では、どのPQ方式が安全で効率的であり、かつグローバル規模な展開に適しているかが不確実な状況にあるため、イーサリアムでは特定の暗号方式を早々に固定せず、暗号的柔軟性を優先する方針をとる。方式を早期に固定するのではなく、将来的な弱点発見や性能改善に対応できる設計を重視することで、性急な移行が新たな脆弱性を生むリスクを回避する。
PQ対応の取り組みは、複数のレイヤーから構成されている。
実行層では、ネットワークに混乱を生じさせることなく、ユーザーが量子耐性のある認証へ移行できるようにすることに重点が置かれている。アカウント抽象化(ERC-4337など)を活用し、ユーザーが量子耐性署名に段階的に移行可能な設計とし、PQ署名検証の標準化とオプトイン方式での採用が進められる。
コンセンサス層では、現在のバリデータ署名方式(BLS)を、ハッシュベースのleanXMSSへ置き換える計画がある。署名サイズが大きくなる問題に対処するため、最小zkVMであるleanVMを使ったSNARKベースの集約手法が開発されている。
データ層では、PQ対応のブロブ処理などを検討する。
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FAQの回答より
量子コンピュータのリスクについて
- 主なリスクは「公開鍵暗号(デジタル署名)」に集中。Shorのアルゴリズムで公開鍵から秘密鍵を復元でき、資金盗難やなりすましが可能になる
- イーサリアムの場合、EOA(外部所有アカウント)とバリデーター鍵が影響を受けやすい
- 過去のブロックや確定済みの履歴が書き換えられるわけではない
- 「今データを盗んで後で解読」は主に暗号化データの話で、ブロックチェーン署名には影響しない
最も懸念されるリスク領域 (優先順位順)
- ①ユーザーアカウント(EOA)— 最大の資産プールであり、取引後に公開鍵が露出ー
- ②取引所、ブリッジ、カストディホットウォレットなどの高額な運用鍵
- ③ガバナンスおよびアップグレード鍵:プロトコルを管理する運営者マルチシグ
- ④バリデーター鍵:コンセンサスへの参加に影響
長期間使われていない資金や放置ウォレットについて
- 公開鍵が一度も公開されていないアカウントは直接リスクなし
- イーサリアムの場合、移行できない資金は供給量の約0.1%程度(ビットコインは約5%:サトシ・ナカモトの約100万BTCを含む)
- 「何もしない」か「凍結する」かはコミュニティで議論。チームは簡単で低コストな移行経路を優先。
PQ移行の予想タイムライン
- L1プロトコルのアップグレードは2029年までに完了する見込み
- 実行レイヤーの完全な移行にはさらに数年を要する
- 移行は3つのフェーズで展開
- 準備とインフラ整備
- 段階的な導入
- プロトコルレベルの統合
量子コンピュータはブロックチェーンに新しい機会をもたらすか
- はい。PQ暗号への移行は、暗号技術の柔軟性を高め、特定の仮定への依存度を低減する
- より大きなデータを効率的に扱う必要から、集約技術や証明ベースの圧縮の研究が加速し、オープンソースの公共財として発展している
- PQ暗号の統合は、ネットワークや検証プロセスの再設計を促し、プロトコル全体の複雑さを軽減する機会にもなる
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