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米トップ大学の研究者25名が分析、AIと仮想通貨の融合に広がる「5つの誤解」

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事のポイント
  • 25名の研究者によるAI×仮想通貨の大規模な調査論文を公開
  • 業界で広まる5つの誤解を指摘し、今後の研究課題も解説

仮想通貨とAIの融合がもたらすもの

米コーネル大学を拠点とする学術研究コンソーシアム「The Initiative for CryptoCurrencies and Contracts(IC3:仮想通貨・契約イニシアチブ)」は8日、大規模な調査論文「Crypto x AI, AI x Crypto: A Survey(仮想通貨×AI、AI×仮想通貨:調査)」を公開した。

コーネル・テック(技術・ビジネス・企業を融合した大学院)、カーネギーメロン大学、プリンストン大学、イェール大学など複数のトップ研究機関から25名の研究者が参加した本調査は、現時点で、生成AI時代におけるAIと仮想通貨の相互関係を体系的に整理した包括的な分析であり、その融合がもたらす機会と課題について、明確な視点を提供している。

共同編集者のジュリア・ファンティ氏は、この分野において研究が急増している現状を挙げ、膨大な情報から「本質(シグナル)」を見極めることは極めて困難であると指摘。全体像を整理し、学術界と実業界の双方が取り組むべき課題を明示することが本論文の目的だと述べた。また、共同編集者のアリ・ジュールズ氏は、仮想通貨技術(「硬い技術」)とAI(「柔らかい技術」)の融合というビジョンにおいて、コミュニティを有望な研究分野へと導くことが目的であると付け加えた。

本論文は、AIと仮想通貨の関係を「互いのミドルウェア」として捉えることが最も適切だと主張している。AIが仮想通貨・ブロックチェーンを改善する「仮想通貨× AI」とブロックチェーン技術がAIシステムを強化する「AI × 仮想通貨」という双方向の視点から関係性を分析し、実用性の高いユースケースを提示している。

「仮想通貨× AI」領域では、AIによってブロックチェーンがより「柔軟で使いやすい」システムへ進化する可能性があると評価し、以下のような例を提示した。

  • ブロックチェーン上の不正取引の検出
  • 不正なスマートコントラクトの検出
  • コードの脆弱性分析

なお、これらの手法の多くは比較的単純な機械学習モデルを使用しており、十分な学習データが存在する環境で最も効果を発揮すると指摘している。

「AI × 仮想通貨」領域では、暗号技術がAIのセキュリティとガバナンスに役立つと論文は評価する。 ゼロ知識証明(ZK)や信頼された実行環境(Trusted Execution Environment:TEE)といった、仮想通貨分野で普及している技術は、AIの安全性強化に応用できると論文は述べている。

一方で、分散型ガバナンスやインフラ運営など、仮想通貨コミュニティで実装が進むアプローチは、主流のAIコミュニティにおいては未だ本格的に普及には至っていないとしている。

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5つの誤解

論文ではAIと仮想通貨の有意義な統合は「初期段階」にあり、業界で語られる多くの主張が誤解に基づいているとして、以下の五つの点について解説している。

  • ブロックチェーンはAI生成コンテンツを検知できる:誤り。真正性のメタデータ検証は可能だが、コンテンツ内容の検知はできない。
  • 分散化技術はAIのバイアスや公平性の問題を解決する:誤り。ガバナンスの透明性は向上する可能性があるが、アルゴリズム内在のバイアス自体は解決しない。
  • ウォレットを与えれば、AIエージェントは自律的になる(自身で稼ぎ、消費し、生存可能):誤り。自動化は可能になるが、それは自律性とは異なる。決済の自動化にブロックチェーンは必須ではない。
  • AIモデルの学習データや推論結果をブロックチェーンに記録すれば、信頼性の高いAI運用が可能になる:誤り。ブロックチェーンは事後的なデータ改竄を防ぐことはできるが、元のデータ自体の信頼性は検証できない。また大規模なプロセスの検証は、ブロックチェーンの処理能力とコストに見合わない。
  • 分散化によって、AIの学習や推論のコストは必然的に下がる:誤り。ネットワーク遅延やスループット次第で、中央集権型より高コストになるケースも少なくない。

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今後の研究課題

本論文は今後の重要な研究課題として、AIの安全性をモデル単体ではなく、システム全体で確保する必要性を挙げている。

現在のAI業界では、入出力を制御するガードレールなど、モデルレベルでの対策が主流となっている。しかし、AIエージェントが自律的に動作し、金融システムやインフラへのアクセスを広げていけば、モデル単体での対策では対応しきれなくなる恐れがあると論文は警告する。

この観点から、検証可能な実行環境や認証済みパイプラインといった暗号技術を活用したブロックチェーンのツールは、モデルレベルの防御策では届かないシステムレベルの安全対策を構築する上で極めて大きな力を発揮すると見ている。

また、AIと仮想通貨の融合そのものが新たなリスクを生み出す可能性にも言及している。AIによる資産運用ではプライバシーと公平性の両立が課題となるほか、自律型AIエージェントと仮想通貨を組み合わせることで、「制御不能な自律型エージェント」や「悪意のあるスマートコントラクト」が生まれる危険があると警鐘を鳴らした。

どの脅威が現実に起こり得るかを見極め、実効性のある対策を整備することが、今後の研究の中心課題になると研究者らは述べている。

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