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地域をともにつくる Web3×関係人口の挑戦|WebX2026

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

WebX 2026 | セッションレポート

地域をともにつくる Web3×関係人口の挑戦

山谷和洋 × Hisanori Sato × 吉田健一 × 青山達哉

写真を撮るとトークンが稼げるアプリ「SNPIT」と旅行大手HISの連携、古民家再生から生まれた貢献型クラウドファンディング「ジパングDAO」、島根県・海士町が実践する「AmanowaDAO」。三者三様のWeb3活用モデルを持つ実践者4名が、トークンインセンティブ・DAO・関係人口をキーワードに40分の議論を展開した。モデレーターは合同会社暗号屋代表社員の紫竹佑騎氏が務めた。

山谷和洋

山谷和洋

株式会社エイチ・アイ・エス
Web3事業グループ グループリーダー

2022年よりHISのWeb3プロジェクトを立ち上げ、旅行と地域創生の文脈で新事業を開発。SNPITとの連携や長野県を舞台にした地域応援トークン発行など、ゲーミフィケーションを活用した地域PR施策を展開する。

Hisanori Sato

Hisanori Sato

Sun Sun House株式会社
執行役員

古民家の再生事業を手がけ、「もったいない日本をもう一回幸せ先進国にできないか」をミッションに掲げる。DAO・AIを組み合わせた継続支援型プラットフォーム「ジパングDAO」を通じて、地方の産業・文化に資金とコミュニティを届ける仕組みを構築中。

吉田健一

吉田健一

SNPIT
ディレクター

2016年よりブロックチェーンに関わり、GameFi・DeFi領域でのアドバイザーを経て、株式会社GALLUSYSにてSNPITの開発を担当。写真撮影にゲーミフィケーションを組み込み、地域PRとトークンエコノミクスの融合を実践する。

青山達哉

青山達哉

海士町
関係人口経営特命官

島根県海士町出身。2019年に海士町役場入庁後、地方創生事業に従事し「関係人口経営」を提唱・実践。AmanowaDAOを通じて地域外の人々が継続的に地域づくりへ参画する仕組みを構築。Web3の分散性・貢献可視化の思想を地域経営に接続する。

紫竹佑騎

紫竹佑騎

モデレーター
合同会社 暗号屋 代表社員

サイバーエージェントでのエンジニア経験を経て2017年に独立。仮想通貨取引所Mr. ExchangeのCTOとして立ち上げを担当後、DAO・トークンエコノミクス設計の専門家として医療・地域創生・ゲームなど現実産業へのブロックチェーン接続をテーマに活動。


SNPITと旅行の融合:写真×トークンが生む自発的な地域PR

WebX 2026 セッション写真
「スニーカーNFTで歩くと稼げる」ゲームとして知られるSTEPNの発想を写真に応用したアプリ「SNPIT」は、撮影という日常行為にゲーミフィケーションを組み込み、月間数万人のアクティブユーザーを持つサービスに育っている。吉田氏がその仕組みとHISとの連携経緯を説明した。
吉田健一
SNPITはSTEPNのカメラ版として始まりました。スマートフォンで写真を撮るという行動にゲーミフィケーションを加え、撮影データを活用するのが目的です。HISさんとコラボした「HISコラボカメラ」では月に1回ルーレットを回すと全国47都道府県のいずれかが出てくる。その都道府県で撮影するといつもより報酬が多くなる仕組みで、わざわざ旅行に行ってくれるユーザーが生まれています。
山谷和洋
SNSを見ると「ルーレットで○○県が出たから行きます」という投稿や動画をよく見かけます。HISコラボカメラを持っているユーザーはほぼ毎月旅行に行くくらいに動いてくれていて、トークンのインセンティブが旅という行動を実際に生み出していると実感しています。
吉田健一
月間アクティブユーザーは数万人規模です。群馬県の榛名湖では、SNPIT上の写真バトルで榛名富士の写真が話題になり、ユーザーが自発的に日の出を撮りに泊まりがけで訪れる「聖地化」現象が起きました。こちらが何も仕掛けていないのにコミュニティが自然に動いた事例で、他の地域でも再現できないかと考えています。
補足:SNPITは現在、旅先での感動をシェアして写真バトルに参加できる「旅シェア」機能を開発中。バトル上位のユーザーはその地域のアンバサダーになれる仕組みで、旅行後も地域とのつながりを維持する導線として設計されている。
山谷和洋
旅行は行って帰ったらおしまい、というのが従来のモデルでした。でもゲーミフィケーションや報酬設計によって、旅行者が帰ってからもその地域のPRをし続ける構図が作れる。そういった取り組みで地域の魅力を広め、地方創生に繋げていけたらと思っています。

ジパングDAOの設計:お金以外の貢献をトークンで動かす

WebX 2026 セッション写真
古民家の再生事業を手がけるHisanori Sato氏が推進する「ジパングDAO」は、継続支援型のクラウドファンディングにDAO・AIをかけ合わせたプラットフォームだ。特徴的なのは、金銭だけでなく「お金以外の貢献」をトークンで評価する設計にある。
Hisanori Sato
AIが普及し切った後も残るビジネスは、飲食や観光など300年前から存在するものだと思っています。まずそこにお金とファンを集める仕組みを作りたい。消えかけている灯しびに資金とコミュニティを届けるイメージで、ジパングDAOを動かしています。
紫竹佑騎
ジパングDAOで試みているのは、お金以外の貢献もクラウドファンディングの対象にするという設計です。例えばポイント(トークン)を対価にインフルエンサーに紹介してもらう。クラウドファンディングの成功率はインフルエンサーの参加有無で大きく変わるので、その力をトークンで動かそうとしています。
Hisanori Sato
経営で言えば理念と利益の両立と同じで、この人を無条件で応援したいと思わせる「侍」(プロジェクトの立ち上げ人)がいて、その周りに影響力のある人が集まってくる。やったことがちゃんと報われる仕組みを作ることが最も大事だと思っています。一次産業の方々は作ることは得意でも発信が苦手なケースが多い。誰かが代わりにPRして、みんなで繋がれる仕組みが整えば、地方の価値が世界に届くようになると思っています。
補足:ジパングDAOでは地域内でプロジェクトを立ち上げる人を「侍」と呼ぶ。特に一次産業の担い手など、作ることは得意でも発信が苦手な人材を各地域で発掘し、インフルエンサーが代わりに発信・PR する仕組みを構築しようとしている。

海士町AmanowaDAO:関係人口の可視化と信頼スコアの実践

WebX 2026 セッション写真
島根県・隠岐諸島に浮かぶ海士町(人口約2300人)では、地域外の「関係人口」とDAOを組み合わせた地域経営モデルが動いている。青山達哉氏は、ブロックチェーンによる貢献可視化の試みとその本質的な課題を率直に語った。
青山達哉
AmanowaDAOで最も大切にしているのは、「DAOをやりたくて始めたわけではない」という出発点です。まずアンバサダー制度で関係人口500人に登録していただき、その人たちと一緒にイベントを開いたりディスカッションしたりしているうちに、たまたまDAOという概念に行き着いた。関係人口のコミュニティが先にあって、DAOはそれを動かす手法として後から見つけたものです。
紫竹佑騎
地域創生DAOがうまくいかない事例が多い中で、海士町の取り組みが続いている理由がそこにあると思います。技術や仕組みが先行していない。
青山達哉
AmanowaDAOでは貢献度合いをブロックチェーンに記録して信頼スコアとして可視化し、その積み上げによって地域への参加資格を広げていくことを目指しています。ただ一周回って課題も出てきていて、インセンティブがなくてもやってくれるような熱量の高い人たちから「なぜわざわざ記録する必要があるの?」という声が上がり始めた。貢献を可視化したいと言っていたのに、実際にはそこが繋がりきれていないという現実があります。
海士町に集まってきている若者たちは、島に来る中で「自分の地元をどうしたいのか」を考える場を求めているのだと感じています。地域への共感が最初にあってこそ、DAOの設計が意味を持つ。
補足:海士町は島根県隠岐郡に属する離島自治体。かつて合併検討の対象となった際に独自路線を選択し、農業・漁業・観光を柱に自立的な地域経営を実現してきた。離島でありながら良質な水資源と農地を持ち、「ないものはない」という言葉を掲げる独自のウェルビーイング哲学が国内外から注目されている。
青山達哉
海士町で積み上げた仕組みを他の自治体にも横展開できると思っています。似た課題を抱えた自治体同士で関係人口をシェアできるようになれば、Web3の技術を基盤にした地域経営のムーブメントが生まれるかもしれない。

インセンティブ設計の2類型:経済報酬型と信用スコア型

SNPITが採用する「経済報酬型」と、海士町が探求する「信用スコア型」。対照的に見える2つのアプローチは、それぞれ固有の強みと課題を持つ。登壇者が互いの方式を率直に比較しながら、理想的な設計を探った。
吉田健一
SNPITはトークンのインセンティブを前面に出す経済報酬型です。初期から2年以上毎日使い続けてくれるユーザーが集まるほど熱いコミュニティができています。一方で暗号資産の価格変動がサービスの評価に連動してしまうというデメリットも感じています。振り返ると、ブロックチェーンの技術が好きだったがゆえに「使いたくて使う」という目的と手段の逆転があったとも思っています。
青山達哉
信用スコア型のメリットは、インセンティブがなくてもやってくれる人が集まることです。地域にとってはそういう人こそ本当に信頼できる関係人口になる。ただデメリットとして、そういう人ほど「なぜわざわざトークンに記録するの? そんなものなくてもやるよ」となってしまう。一周回って、インセンティブ設計をやはり考えなければという課題に戻ってきています。
紫竹佑騎
信用スコアとインセンティブを組み合わせた設計も可能だと思っています。今日出てきた2つのアプローチはそれぞれ良さがあって、うまく組み合わせた設計ができると地域創生にWeb3がより実効的に機能するのではないか。
吉田健一
どの地域にも熱い方がいらっしゃると思っています。榛名湖の事例のように、そういった方と連携できれば予算をかけずに地域PRの流れが自然に生まれる可能性があります。Web3はコミュニティを作れる強力な手段。AIにだいぶ勢いを持っていかれていますが、改めて盛り上げていきたい。

セッション総括

各登壇者が最後にひとことずつ締めくくった。

青山達哉
地方創生のDAOには2種類あると思っています。関係人口を増やしたいDAOと、すでにいる関係人口の貢献を可視化して一緒に街づくりするDAO。地域が本当に求めているのは後者です。そういう取り組みをする自治体が増えれば嬉しいし、海士町も連携していきたい。
Hisanori Sato
DAOやWeb3を通じて、地方を世界と勝負させてあげないといけない。消えそうな職人の技や地域の産業だって、世界と比べれば何倍もの価値がある。そういう地域にお金とファンを届ける仕組みを皆さんと一緒に作っていきたいと思います。
吉田健一
Web3はコミュニティをうまく作れる仕組みで、地方だけでなく学校や様々な場所に使える手段です。SNPITを是非使っていただきながら、ご相談もお待ちしています。
山谷和洋
旅行者がゲーミフィケーションや報酬設計によって自発的に地域の魅力を発信し、帰ってからもその地域とのつながりが続く構図を作っていきたい。こういった取り組みを活用しながら地方創生を進めていければと思います。
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