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RLUSDが変える機関投資家フロー XRPエコシステムの現在地|WebX2026

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

WebX 2026 | セッションレポート

RLUSDが変える機関投資家フロー XRPエコシステムの現在地

Fiona Murray × Asheesh Birla × パーク ロックス

2026年7月14日、WebX 2026のBinanceステージで「ステーブルコインが変える機関投資家フロー RLUSDとリアルタイム流動性」と題したパネルが開催された。Rippleのアジア太平洋担当バイスプレジデントのFiona Murray氏、EvernorthのCEOのAsheesh Birla氏、Doppler Financeの機関投資家事業責任者のパーク ロックス氏が登壇し、日本経済新聞の小柳建彦編集委員がモデレーターを務めた。規制準拠ステーブルコインの意義から機関投資家の参入加速、日本市場の展望まで、XRPエコシステムの現在地を語った。

Fiona Murray

Fiona Murray

Ripple
Vice President and Managing Director of APAC

シンガポールを拠点にRippleのアジア太平洋戦略・事業全体を統括。入社後、APAC各国での支払いインフラ整備や機関向けOTC取引の拡大を主導し、シンガポール金融管理局(MAS)のMPIライセンス取得にも貢献した。英オックスフォード大学で政治・哲学・経済学の修士号を取得。

Asheesh Birla

Asheesh Birla

Evernorth
CEO

シリコンバレーで25年超のキャリアを持つ起業家・ブロックチェーン経営者。Ripple在籍時に同社初のエンタープライズ向け仮想通貨製品の立ち上げを主導し、同社の急成長を支えた。MoneyGram・Bitsoなどの取締役も歴任。Wharton MBAホルダー。

パーク ロックス

パーク ロックス

Doppler Finance
機関投資家事業責任者

XRPレジャーネイティブのCeDeFi利回りインフラ「Doppler Finance」で機関投資家事業を統括。取引所・カストディアン・トレジャリー企業との連携を通じ、機関・個人投資家が安全に利回りを得られるXRPfiエコシステムの基盤を構築している。

小柳建彦

小柳建彦

モデレーター
日本経済新聞社 編集委員

1988年日本経済新聞社入社。シリコンバレー支局長、Nikkei Asian Review(現Nikkei Asia)創刊発行人、アジア各国駐在編集委員などを経て現職。テクノロジーと関連政策、インド政治経済を担当。著書に「ニッポン半導体 復活の条件」(日本経済新聞出版)。


XRPとRLUSDが担う役割

セッションは「Rippleはもともと機関向けの送金インフラを構築してきた。なぜ今、ステーブルコインが必要なのか」という問いからスタートした。Fiona Murray氏はまず根本的な誤解を解くところから始めた。
Fiona Murray
XRPはRippleが管理・発行するものではない。XRPレジャー上で流通する独立したトークンであり、日本を含む世界各地で取引されている。一方、RLUSDはRippleが米ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)の信託会社を通じて発行する米ドル担保のステーブルコインだ。最高水準の監督体制のもとで定期的な監査を受けており、機関投資家がデジタル資産への入口として安心して利用できる。
XRPはXRPレジャー上のネイティブトークンとしてガス代を担い、RLUSDは規制準拠のドル建て流動性を提供する。両者は競合するものではなく、補完関係にある。
Asheesh Birla
XRPレジャーは2012年に金融取引に特化した設計で誕生した。当時から分散型取引所(DEX)を内包しており、これは世界初だった。グローバルのFX取引の88%が米ドル建てで決済される現実を踏まえれば、トークン化が進む世界においてもドル建ての安定した流動性は不可欠だ。RLUSDがXRPレジャーに導入されて以降、月間取引件数は12倍に増加した。規制準拠のステーブルコインが機関投資家を呼び込み、それがさらなる流動性を生む好循環が始まっている。

XRPエコシステムの流動性基盤

WebX 2026セッション写真
続いて、それぞれの会社がXRPエコシステムでどのような役割を担うかが問われた。パーク ロックス氏はDoppler Financeを「トークン化の次のステップ」と位置づけた。
パーク ロックス
Doppler Financeはひと言で言えば利回りインフラの構築だ。機関投資家はデジタル資産を保有した後、「それをどう活用するか」という問いに直面する。現在、取引所・カストディアン・トレジャリー企業と連携し、XRPとRLUSDの運用プールを運営し、利回りを提供している。トークン化が「ステップ1」だとすれば、そのトークン化資産を「働かせる」インフラの構築が「ステップ2」であり、そこに私たちの役割がある。
Asheesh Birla
EvernorthはXRPの最大のデジタル資産トレジャリーだ。現在、約5億XRPを保有している。他のトレジャリーとの違いは、ただ保有するのではなく「XRPを働かせる」点にある。DopplerのようなインフラパートナーとともにXRPの利回りの創出を目指しており、XRPエコシステム全体にとっても、資産保有者にとっても双方にメリットのある形を追求している。
補足:Asheesh Birla氏はセッション中、EvernorthがSECへの上場申請の最終段階にあると明らかにした。承認が得られ次第、株式市場への上場を予定しているという。
Asheesh Birla
パーク ロックス氏のチームはインフラプロバイダーとして機能しており、私たちのようなトレジャリー企業がXRPから利回りを生むことを可能にしてくれる。今日、デジタル資産を保有するほとんどの人々はそこから利回りを得ていない。これを変えることが私たちの共通の目標だ。

機関投資家の変容と実装事例

議論の中心は「伝統的金融機関の態度がどう変わったか」に移った。Fiona Murray氏は10年前と現在を対比しながら、変化の質を語った。
Fiona Murray
以前は銀行を訪問するたびに笑われた。デジタルが資金移動の常識を変えるという話を持ち込んでも、真剣に聞いてもらえなかった。今は違う。「デジタルに移行すべきかどうか」という議論は終わり、「どの資産から始めるか」「どこまで速く動けるか」という段階に変わっている。
変化を牽引しているのは資産マネージャーだ。たとえばマネー・マーケット・ファンドをオンチェーン化すれば、投資家は従来2営業日かかっていた解約資金をほぼリアルタイムで受け取れるようになる。さらにトークン化されたMMFを担保として差し入れ、RLUSDで資金を調達し、それを再度レポに回す、という一連の操作がほぼリアルタイムで完結する。これは従来の金融市場では実現できなかったモデルだ。DBSおよびフランクリン・テンプルトンとシンガポールで取り組んでいるのがまさにこのケースで、資産マネージャーにとってはAUM(運用資産残高)を減らさずに顧客の資金ニーズに応えられる点でも画期的だ。
補足:日本での展開についてFiona Murray氏はセッション中に言及。「SBI VCトレードは現時点でRLUSDを取り扱える唯一の取引所であり、RLUSDの日本国内流通をSBI VCトレードを通じて開始したばかりだ」と明らかにした。
Asheesh Birla
ブラックロックは最初のブロックチェーンファンドで年間約2億ドルの収益が見込まれている。これを見た他の機関投資家が動き始めた。先週ニューヨークの大手銀行を訪問したが、すでに専任チームを組成し、オンチェーンへの移行準備が整っている状態だった。10年前とは全く異なる景色だ。
パーク ロックス
日本の機関投資家とも積極的に対話を進めている。かつての問いは「なぜデジタル資産が必要なのか」だったが、今は「どうやって活用するか」に変わった。日本はETF承認に向けた準備が進んでいると感じており、各社は規制の明確化を待ちながら内部態勢の整備を進めている。次の課題は規制後のオペレーション、リスク管理、監査体制の整備だろう。

多通貨ステーブルコインと規制の行方

小柳はドル建てステーブルコインの普及が各国の通貨主権を脅かすのではないかと問題提起した。3者はそれぞれの視点から答えた。
Fiona Murray
グローバル貿易の基軸通貨がドルであることは現実だが、デジタルが単一通貨を前提とするわけではない。円とドルは世界で最も流動性の高い通貨ペアの一つだが、日本企業が円を海外に送金する際のコストと時間は依然として高い。JPYの規制準拠ステーブルコインとRLUSDを組み合わせることで、そこにある非効率を解消できる。SBIグループが発行する円建てステーブルコインとの連携についても、前向きに道を探っている。
日本の規制に設けられた取引上限についても補足したい。一定額の上限はNYDFS信託発行のステーブルコインには適用されないカテゴリがある。日本のアプローチは「まず小さく試して前進する」というパイロット型であり、新しい領域への一歩として合理的だと思っている。
Asheesh Birla
日本政府が税金をドルで受け取るようになることはないだろう。各国のローカル通貨ステーブルコインはブロックチェーン上で共存でき、むしろそれが望ましい。大手送金会社でのボード経験から言えば、FXリスク管理に膨大な人員とコストをかけている現実がある。すべてがブロックチェーン上にあれば、プログラムで管理できる。多通貨化を歓迎する。それがより効率的なグローバル金融エコシステムを生む。
規制面では、米国のクラリティ法案が可決されれば他国も追随する動きが加速するとみている。XRPは法廷判決で非証券と認定されており、仮にクラリティ法案が今回の議会を通過しなかったとしても、XRPエコシステムは前進し続けられる。
パーク ロックス
規制の明確化こそが機関投資家のリスク評価を可能にする。「参入すべきかどうか」ではなく「どう参入するか」という段階に移行するためには、明文化されたルールが不可欠だ。クラリティ法案の可決はその意味で大きな転換点になると考えている。

セッション総括

WebX 2026セッション写真
小柳の「日本の金融機関や規制当局へ一言」という問いに、3者それぞれがセッションの締めとなるメッセージを語った。
パーク ロックス氏はこう呼びかけた。「今すぐ始め、小さく試してほしい。規制が整う前に実装の経験を積んだプレイヤーが、次の数年で市場のリーダーになる」
Asheesh Birla氏はより大きな文脈でメッセージを送った。「数兆ドルの資産がブロックチェーンに移行しつつある。これは1990年代のインターネット黎明期と同じ状況だ。まだ覇者は決まっていない。日本の金融機関には観客席にとどまるのではなく、飛び込んでほしい」
Fiona Murray氏は規制当局へのアドバイスは控えるとした上で、産業界に向けて言葉を選んだ。「ぜひ話しに来てほしい。世界中でこの実装は進んでいる。日本の金融機関も、個人投資家も、同じアクセスを持つべきだ。その実現に向けて一緒に動きたい」
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