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Cryptoは、なぜ社会を変えきれないのか。異なる視点からみる、過去と今後の10年|WebX2026

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WebX 2026 | セッションレポート

Cryptoは、なぜ社会を変えきれないのか。異なる視点からみる、過去と今後の10年

渡辺 創太 × 三浦 和夫 × 近藤 智彦

WebX2026のセッション「Cryptoは、なぜ社会を変えきれないのか。〜異なる視点からみる、過去と今後の10年〜」では、ブロックチェーンインフラ、金融システム、暗号資産取引所とそれぞれ異なる立場で最前線に立つ3名が登壇し、暗号資産・ブロックチェーンが社会に浸透しきれていない理由と、気づかれにくい変化、今後の展望について議論した。モデレーターはNADA NEWS編集長の増田隆幸氏が務めた。
渡辺創太
渡辺 創太
Startale Group
CEO
2019年に日本発のパブリックブロックチェーン「Astar Network」を設立。2023年にStartaleを設立しCEOに就任。SBIホールディングスの社外取締役も務める。
三浦和夫
三浦 和夫
シンプレクス株式会社
エグゼクティブプリンシパル
2010年シンプレクス入社。FX/暗号資産ディーリングソリューションの開発・事業支援を経て、現在はブロックチェーン技術を用いた暗号資産・STO・ステーブルコイン領域のソリューション事業を統括。
近藤智彦
近藤 智彦
SBI VCトレード株式会社
代表取締役社長
2007年にSBIホールディングスへ新卒入社し、情報システムや電子決済事業を担当。2019年にSBI VCトレード取締役に就任し、2023年より代表取締役社長として暗号資産・ステーブルコイン事業を主導する。
増田隆幸
増田 隆幸
モデレーター
NADA NEWS 編集長
インフォバーン、Business Insider Japanを経て2019年CoinDesk JAPANに参画、2023年編集長就任。2025年12月より新生「NADA NEWS」編集長としてブロックチェーン・デジタルアセット領域の取材・編集を統括。

暗号資産業界に足を踏み入れたきっかけ

モデレーターの増田氏は、自己紹介に続けて、登壇者それぞれが暗号資産に携わることになったきっかけを尋ねた。
渡辺創太氏が説明する様子
渡辺創太
大学入学前に進路について悩んでいた時期、グローバルな視点を持ちたいという考えと、NPO活動に取り組む中でテクノロジーをレバレッジしなければ社会課題を解決できないという実感があったところに、2016年頃に雑誌『WIRED』のブロックチェーン特集を目にし、AIかブロックチェーンかで迷った末にブロックチェーンの道に進んだと振り返った。
三浦和夫
シンプレクスがもともとFXに強みを持つ会社であったことから、2017年頃、ドル円取引システムを利用していた顧客がビットコインの取り扱いに関心を持ち始めたことがきっかけで暗号資産分野に触れたと説明。同社が最初のサービスを提供したのは2018年頭だったと振り返った。
近藤智彦
2019年にSBIグループ内の配置転換で暗号資産事業に加わる前は、同グループでFX為替事業を担当していたと説明。当時からビットコインの価格を見てはいたが、実際に仕事として関わるようになったのは配置転換がきっかけだったと述べた。

普及にかかった時間と乗り越えてきた壁

増田氏は、業界に携わってきた年数を踏まえ、想定より時間がかかっていると感じる点について尋ねた。
三浦和夫氏が説明する様子
三浦和夫
ブロックチェーンという技術自体には可能性を感じてきた一方で、個々の企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)がそもそも進んでいない中で企業間連携の話を進めようとしても、大量の書類業務などの壁にぶつかり、なかなか本格的な導入まで話が進まなかったと振り返った。企業内の準備が整った段階でブロックチェーンが本格的に導入されればより良い取り組みが増えるとし、徐々にその機が熟してきているとの見方を示した。
近藤智彦
2018年のコインチェック事件、2019年のBITPOINT事件、2024年のDMM Bitcoin事件など、大規模な流出事件が繰り返し起きたことに触れ、いずれも親会社による補償で直接的な被害は生じなかったものの、それに伴う規制強化や世間の目線への対応にコストと時間がかかったとの認識を示した。
渡辺創太
技術の普及は一般に人々が想定する直線的な期待値ではなく、指数関数的な曲線を描くものであり、現時点では期待値に対してまだ浸透していない段階にあるとした上で、この1〜2年で急激に立ち上がる転換点を迎えるとの見方を示した。その転換点は、トランプ政権下でオンチェーン金融を国策として進める動きが強まっていることに関連し、米国のクラリティ法案の行方が一つの転換点になるとの見解を述べた。

気づかれていない構造変化

続いて増田氏は、社会の変化として気づかれにくいものの、実際には進んでいる変化について尋ねた。
三浦和夫
暗号資産交換業者向けのシステム提供を通じて、口座数がすでに1000万口座を突破しており、一つの産業として確立されてきていると説明。投資対象としても、国や企業に紐づく従来の金融資産とは異なる特性を持つものとして受け入れられ始めており、日本のNISA口座数(約3000万)と比較しても、暗号資産はその手前まで来ているとの認識を示した。
近藤智彦
SBIグループにおいても暗号資産交換業がより金融機関らしい体制に変わってきていると説明。資金決済法の枠組みから金融商品取引法の対象へと移行が進んでいる状況を紹介し、コンプライアンス対応や売買審査といった体制整備が水面下で進んでいると述べた。第一種金融商品取引業のライセンスをすでに保有していることから、金融商品取引法への移行に大きな違和感はないとの認識を示した。
渡辺創太
AIがフロントエンド(顧客が触れる部分)の革命であるのに対し、ブロックチェーンはバックエンド(裏側のシステム)の革命であると位置づけ、株式トークンのような形になっても利用者が触れる体験自体は大きく変わらない一方で、裏側の運用コストが大幅に下がる点に意義があると説明。チーム13人規模のDEX「ハイパーリキッド」が、規模はまだ小さいものの、取引高でNASDAQに匹敵する場面も出てきていることを例に挙げた。

社会実装に向けた最後の壁

増田氏は、社会に広く実感される変化を起こすために、最後に乗り越えるべき壁について尋ねた。
近藤智彦氏が説明する様子
近藤智彦
変化が実感されるかどうかは、多くの人に実際に使われているかに尽きるとした上で、PayPayの大型キャンペーンのような普及の仕掛けを例に挙げ、ステーブルコインもまだ生活の中でプラスの実感を持てる段階には至っていないとの認識を示した。もっとも、iPhoneの普及が10年に満たない期間で進んだ例を踏まえ、ステーブルコインの普及もそこまで長くはかからないとの見方を示した。
三浦和夫
ステーブルコインの整備が進みつつあることが重要な前提の一つであるとした上で、ブロックチェーンの技術特性を活かせる領域を見極め、ビジネスとして成立させながら普及させていくことが課題になると説明。金融機関との対話の中でも、最初の一歩をどこに置くかが焦点になっていると述べた。
渡辺創太
関心の薄い層にとってはトークン化されているかどうかは関心事にならず、生成AIがトランスフォーマー技術の登場から数年を経て誰もが使えるUI/UXを備えたサービスとして普及したように、ステーブルコインについても日本円と変わらない使い勝手のアプリケーションが登場するかどうかが今後1〜2年の分水嶺になるとの見方を示した。クラウドサービスへの移行がコスト面のメリットから進んだように、ブロックチェーンも意識されないまま既存サービスに組み込まれて使われる形で普及していくとの見通しを示した。

2030年の姿と展望

増田氏は、4年後にあたる2030年の暗号資産・ブロックチェーンの姿について尋ねた。
近藤智彦
日本の個人金融資産2400兆円のうち、暗号資産が占める割合は現在1%未満にとどまるが、4年後には10%程度、100兆円から200兆円規模まで拡大しているのではないかとの見方を示した。
三浦和夫
ブロックチェーンが特別な技術として扱われる段階を脱し、必要な場面で当たり前に選択される技術になっているといいとの考えを示した。
渡辺創太
AIとブロックチェーンの融合は、4年ではやや早いかもしれないが、5〜6年程度で訪れるとの見方を示した。AIエージェントがインターネット上での活動を通じて人間の活動を上回る可能性もあるとし、AIエージェントがブロックチェーン上のウォレットを持って取引を行うようになり、取引ボリュームで人間を上回る可能性もあるとの見方を示した。

セッション総括

モデレーターの増田氏は最後に、登壇者それぞれから一言ずつメッセージを求めた。
近藤氏は、SBIグループがステーブルコインをはじめとする分野に継続的に投資してきたことでプレゼンスが高まっているとし、事業者に対しては爆発的な普及が起きる前に思い切って投資判断をすることの重要性を呼びかけた。三浦氏は、シンプレクスは裏方として多くのシステムを支えてきたが、あまり知られていないとした上で、今後も黒子としてこの領域に本気で取り組んでいきたいと述べた。
渡辺氏は、ブロックチェーンのような汎用技術で日本が世界の上位を狙える数少ない機会だとし、規制緩和とグローバルでの成果創出が今後2年程度で重要になるとの考えを示し、セッションを締めくくった。
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