WebX完全ガイド
TOP 新着一覧 取引所 WebX
CoinPostで今最も読まれています

ビットコインの量子耐性、主要提案の全体像を整理 複数提案が連動へ=レポート

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

この記事のポイント
  • BIP-360とSHRINCSで公開鍵を事前に保護する構想
  • 退避策としてLifeboatとDropkickも浮上

ビットコインの量子耐性ロードマップ

海外向けビットコイン専門ニュースレター「BTC Before Light」を執筆するクリスティーン・D・キム氏(Christine D. Kim)は15日、量子コンピュータに対するビットコイン(BTC)の防御構想を整理した記事をX(旧Twitter)上で無料公開した。同氏は、複数の技術提案が組み合わさることで防御網の輪郭が見え始めていると位置づけている。

一方で、キム氏が取材した開発者らは、量子問題の解決にはなお多くの未解決点が残ると釘を刺しているという。

ここでいう量子コンピュータの脅威とは、将来登場しうる「暗号学的に意味のある量子コンピュータ(CRQC)」が、公開されたビットコインの公開鍵から秘密鍵を導き出し、資金を不正に送金してしまうリスクを指す。

キム氏によると、数週間前にニューヨークで開催された開発者向け勉強会「Bitdevs」で、Lightning NetworkやUtreexoの開発で知られる研究者タッジ・ドライヤ氏(Tadge Dryja)が、量子復旧の仕組み「Lifeboat」を発表した。この発表の前日には、Brinkの支援を受けるBitcoin Core貢献者「conduition」氏が、耐量子署名方式「SHRINCS」のBIP草案を初めて公開したという。

関連記事:100人超の研究者ら、ビットコインとイーサリアムの量子攻撃計算量見積もりを半減

仮想通貨業界の研究者らがビットコインとイーサリアムへの量子攻撃について、鍵となる計算量の見積もりをグーグルの基準から半分以下に引き下げた。既存システムでの解読は不可能だが、想定される移行時間軸の見直しを迫る内容だ。

BIP-360とSHRINCSによる事前対策

BIP-360は、ソフトフォークを通じて新しい出力形式「P2MR(Pay-to-Merkle-Root)」を導入する提案。ユーザーが事前にP2MRアドレスへ資金を移すことで、送金時まで公開鍵を隠したまま複数の送金経路を持てるようになる。現在のビットコインは送金時に必ず公開鍵を明かす仕組みのため、この設計はCRQC登場前の予防策として機能する。

SHRINCSはブロックストリーム(Blockstream)の研究者が開発した「縮小版SPHINCS」で、ビットコインのマイニングにも使われるハッシュ関数SHA-256を利用する。新たな数学的前提を追加しない点が特徴で、conduition氏によると公開鍵は48バイトと小さく、通常の署名は最小548バイト、状態を持たない代替方式では5,777バイトになるという。他のハッシュベース耐量子方式と比べても1桁小さく、検証も高速としている。

BIP-360とSHRINCS、それに対応する署名検証用のオペコードが揃えば、CRQCが実在する前の段階で、全ユーザーへの強制なしに耐量子的な資金保護を選べるようになる。いずれもソフトフォークによる後方互換のアップグレードとして実装できる設計だという。

LifeboatとDropkickの退避策

問題はBIP-360やSHRINCSを使わないまま移行期を迎えたユーザーだ。こうしたアドレスは送金時に公開鍵を明かす必要があり、CRQCを持つ攻撃者に秘密鍵を先回りで導出され、送金を横取りされる懸念がある。

この「量子の先延ばし組」を救済するため、ドライヤ氏の「Lifeboat」とconduition氏の「Dropkick」という2つの退避プロトコルが提案されている。両方式とも、攻撃者より先にアドレス情報を知っていたことをオンチェーンで証明する仕組みを土台とする。ドライヤ氏はCRQCの存在をオンチェーンで証明しソフトフォークを自動的に起動する仕組みまで具体化しているのに対し、conduition氏はDropkickの起動方法を未確定のまま残しているという。

関連記事:仮想通貨の量子コンピュータ対策【2026年】主要5銘柄の最新動向を解説

量子コンピュータが仮想通貨の暗号を解読するリスクとは何かわかりやすく解説。ビットコイン(BTC)をはじめ、ETH・XRP・SOL・BNBの量子コンピュータ対策状況を一覧で整理。50万物理量子ビット基準や各ロードマップの違いを、初心者にもわかるよう解説します。

未解決の課題

キム氏は、BIP-360とSHRINCS、LifeboatまたはDropkickを組み合わせれば量子問題への包括的な備えになり得るとしつつ、複数の宿題が残ると指摘する。SHRINCSのBIP草案は2026年8月下旬に公開されたばかりで、安全性証明は未完成。十分なテストベクトルと第三者による仕様レビューも今後の課題という。

署名サイズの圧縮も課題だ。SHRINCSの署名は現行のSchnorr署名の約10倍に及び、鍵を繰り返し使う場合や代替方式にフォールバックする場合はさらに大きくなる。conduition氏は複数の署名を1つの証明にまとめる集約技術についても検討を進めており、イーサリアム開発者の研究を参照しているという。所有者がアクセスできなくなった「失われたBTC」をCRQC登場後にどう扱うかも、答えが出ていない論点として残る。

Google Newsでフォロー
CoinPost App DL
厳選・注目記事
注目・速報 市況・解説 動画解説 新着一覧
09/15 火曜日
11:57
ビットコインの量子耐性、主要提案の全体像を整理 複数提案が連動へ=レポート
ビットコイン開発者が進める耐量子コンピュータ対策の全体像を海外ニュースレターが整理。BIP-360とSHRINCSで事前防御、Lifeboat・Dropkickで事後救済を図る構想と残る課題を解説する。
11:30
イーサリアムとベースがAAで別々の規格を採用か、Ethlabsメンバーが報告
Ethlabsのデレク・チャン氏は、アカウント抽象化の実装で仮想通貨イーサリアムのブロックチェーンとベースが別々の規格を採用することになったと報告。メリットを生む可能性にも言及した。
10:54
ソラナ保有企業DeFiデベロップメント、239万SOLに拡大 3億ドルの調達枠新設
DFDV(DeFi Development Corp.)がSOLトレジャリーを238万8,923SOLに拡大したと発表。最大3億ドル規模のCHAD ATMも新設し、調達資金はSOLの追加購入に充てる方針。
09:40
上場ビットコインマイナー3社が8月の採掘実績を報告、明暗分かれる
ビットコイン採掘企業ビットフフとクリーンスパークは8月の採掘量の回復・微増を発表した。一方、カナーンは減産が継続しており、保有ETH売却資金などで自社株買いを実施した。
09:25
オンチェーン金融データ『カイコ』、S&P主導の増資でシリーズBを1.1億ドルに拡大
オンチェーン金融データを手掛けるカイコが、S&Pグローバル主導の増資でシリーズBを1.1億ドルに拡大した。BNPパリバなど新規12社が参加し、カイコが議長を務める業界作業部会にも加わった。
08:05
米KULR、保有ビットコインを全て売却 財務運営の一環で
KULRテクノロジー・グループは、仮想通貨ビットコインを約764BTC売却したことを米SECに報告。これで全て売却したことになるが、保有量を減らすことは事前に発表していた。
07:40
上院民主党、クラリティー法案採決直前に対抗案協議|一部同党議員は採決前進を後押し
上院民主党の議員グループは米15日夜、共和党が最終提案として示したクラリティー法案への対抗策を協議する見通し。16日の審議入り採決が法案前進の可否を左右する。
07:15
メタマスク、投資・ロマンス詐欺を送金前に警告する新機能導入
米メタマスクは14日、ロマンス詐欺や投資詐欺を狙った送金の直前に警告を表示し被害を防ぐ新機能を発表した。仮想通貨を保有する投資家が意図せず資金を失うリスクを減らせる可能性がある。
06:55
米上場ストライブが469ビットコイン追加購入、保有量2.5万BTCに
米ストライブは先週469BTCを追加取得し保有量が2万5000BTCに達したと発表した。取得資金は優先株式SATAで全額調達され、想定元本残高は10億ドルを超えた。
06:25
審議入り採決直前のクラリティー法案、銀行・仮想通貨業界も懸念示す
討論終結投票を15日に控える米上院のクラリティー法案最終案に、銀行業界団体はステーブルコイン報酬の緊急停止措置を不十分と批判した。仮想通貨業界は開発者の刑事保護削除に失望し、民主党は利益相反規制に反発している。
06:00
クラリティー法案に18州司法長官ら反対、投資家保護に懸念
米ニューヨーク州の司法長官ら18州・地域の司法長官は、仮想通貨市場構造法「クラリティー法案」に反対する書簡を米上院に送り、投資家保護のための州の権限維持を求めた。
09/14 月曜日
21:50
ストラテジー、2週連続ビットコイン購入見送り|優先株買い戻しを継続
ビットコインDAT最大手ストラテジーは9月8日から13日にビットコインを購入せず、2週連続で追加取得を見送った。代わりに約1.4億ドルを投じてSTRC優先株を買い戻した。
14:52
ビットコイン現物ETF、3週ぶりに流出転換
ビットコイン現物ETFは9月7日週に4.63億ドルの週間純流出を記録し、3週連続の資金流入が途切れた。SoSoValueのデータからARKB・GBTC・MSBTの内訳と市場全体の状況を解説する。
14:12
ビットバンク、ENJ価格乖離で10月16日に取扱い廃止へ
ビットバンクが2026年10月16日にエンジンコイン(ENJ)の取扱いを廃止すると発表。イーサリアム版とEnjin Relay Chain版の価格乖離が理由で、信用取引の追証リスクや出金期限、廃止後の円転換の流れを解説する。
13:44
SWIFTのブロックチェーン活用加速、シンガポール3行が銀行間トークン化預金取引に成功
DBS・OCBC・UOBの3銀行が10日、SWIFTのブロックチェーン台帳を通じて銀行間トークン化預金取引を初めて共同実施。8月以降、HSBC、シティ銀なども類似のテストを行っている。
今から始める仮想通貨特集
通貨データ
重要指標
一覧
新着指標
一覧