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片山金融相インタビュー「暗号資産20%分離課税」2028年施行へ、ステーブルコインで日米協力

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

CoinPost編集部は、片山さつき金融担当大臣にインタビューを実施。暗号資産の分離課税をはじめとする税制改正、金融商品取引法への移行、ステーブルコインの戦略的意義、日米協力の展望について伺った。

片山さつき(かたやま・さつき)
金融担当大臣 / 内閣府特命担当大臣(金融)
1959年生まれ。東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。主計局、国際金融局などを経て、2005年に衆議院議員当選、2010年に参議院議員当選。財政金融委員会、予算委員会などで活躍し、税制・財政政策、金融行政に精通。2025年10月、高市内閣において、財務大臣・金融担当大臣に就任。

「デジタル元年」への抱負とWeb3への取り組み

金融担当大臣にご就任され、東証の大発会では「2026年はデジタル元年になる」と言及されました。Web3、暗号資産を含むデジタル金融資産領域において、具体的にどのような分野や課題に注力されるお考えでしょうか?

ブロックチェーン技術を使った金融サービスが健全な形で発展すれば、業務効率化とサービスの高度化が実現します。完全なピアツーピアで、ディセントラライズで処理が速いということは、コスト削減にもつながります。社会全体が良くなり、生産性が向上すると確信しています。

ただし、過去には不適切な利用事例やハッキング事案も発生してきました。利用者保護と健全な発展のバランスをしっかり取っていく必要があります。

日本はブロックチェーン関連商品を法令の下に取り込むのが世界で最も早かった国の一つで、ステーブルコインについては、すでに法整備が完了しています。

そして今回、業界のみなさんが長年要望されてきた暗号資産の分離課税が実現します。金融商品取引法の改正を前提に、税制については2028年1月からの施行を見込んでいます。施行まで時間がかかることについては様々なご意見があるかと思いますが、改正金融商品取引法を業界に十分周知し、暗号資産取引業者や自主規制機関の体制整備を強化させる必要があります。

施行までに自主規制団体における、暗号資産に関する審査体制の強化、そして審査基準の厳格化を完了させることが前提条件です。これらを確実に実現するためには、約2年の準備期間が妥当だと考えています。

金融商品取引法への移行 投資家保護とイノベーションのバランス

金融庁が暗号資産に係る規制について資金決済法から金商法への移行を検討しています。投資家保護と産業育成のバランスについて、どのようにお考えですか?

金商法への移行について、暗号資産投資を適正なものとし、利用者を保護するためには、まず情報提供の充実が不可欠です。ホワイトペーパーの記載内容が不明確である、あるいは実際のコードと異なっているといったご指摘を多数いただいており、発行者や交換業者には正確な情報提供義務を課す必要があります。

さらに、以下の3点が重要です。

第一に、無登録での投資勧誘の防止です。SNSなどで不適切な投資勧誘が横行しています。これは証券取引や未公開株の分野でも共通する課題ですが、暗号資産においても厳格に対処する必要があります。

第二に、インサイダー取引の防止です。欧州では既に法制化されており、IOSCO(証券監督者国際機構)も対応強化を勧告しています。

第三に、セキュリティーの確保です。ハッキングによる暗号資産の流出事案は以前から発生しており、これは当然対策を講じるべき課題です。

これらの課題に対応するには、金融商品取引法の枠組みが最も適していると考えています。

ただし、暗号資産の商品性そのものを過度に制限する意図はありません。適切な情報開示と不公正取引の防止、これが法改正の主眼です。

なお、この方向性は業界のみなさんと重ねてきた協議の結果であり、大きな齟齬はないと認識しています。昨年12月に公表された金融審議会暗号資産制度に関するワーキング・グループの報告書も、我々の考え方とほぼ一致しています。

暗号資産の税制改正 分離課税20%の実現

暗号資産の税制改正について、大臣のご見解をお聞かせください。

現行の最高税率55%では、実質的に暗号資産を売却しにくい状況でした。これまで所得がそれほど高くなかった方でも、近年の暗号資産の価格高騰により、売却すれば最高税率が適用されてしまうケースが増えています。これでは投資家が売却を控えるのも当然です。

株式投資やFX取引と同様に分離課税を適用すべきという声が、業界から強く寄せられていました。国内の暗号資産取引の口座数は1300万口座に達しましたが、これはFXが分離課税になった時点よりも多い水準です。こうした市場規模を踏まえ、分離課税が認められました。税制調査会の答申にもしっかりと盛り込まれています。

今後は、この税制改正大綱に基づき、今国会に税法改正案が提出されます。税法改正が先行し、それを実現するための金融商品取引法の改正案の国会提出は春頃になる見込みです。

自民党と連立を組んでいる日本維新の会や野党の国民民主党も、20%の分離課税を強く推進してきた経緯がありますので、速やかな可決を期待しております。

日米協力と国際競争力強化

トランプ政権の就任式に出席され、政権周辺の人物と意見交換されたとのことですが、日本の国際競争力強化の観点から、どのような施策を検討されていますか?

国際競争力強化は非常に幅広いテーマですが、現在はAI(人工知能)、ロボティクス、半導体、量子技術など、日本が強みを発揮できる最先端分野への投資を進めています。こうした分野では日米協力の可能性も大きく、様々な連携が期待できます。

デジタル金融の分野では、特にステーブルコインにおける日米連携が重要です。ステーブルコインは日米が協力して統一的なシステムを構築しなければ、十分な効果を発揮できません。

ドル円取引は、ユーロドルに次いで世界第2位の取引規模を誇ります。米国でドル建てステーブルコインの利用が拡大した際に、それを円建てステーブルコインへ円滑に交換できるシステムを構築することが重要です。正確性、利便性、信頼性を備え、かつ低コストでの交換を実現できれば、これは円の国際的地位向上において極めて有効な手段となります。

米国のベッセント財務長官との具体的な協議はまだ実現していませんが、次回訪米の機会があれば、ぜひ意見交換をしたいと考えています。ベッセント長官は、ステーブルコインを含むデジタル通貨全般、そして暗号資産の導入推進において非常に積極的な姿勢を示している方です。長官との対話を通じて、日米のデジタル金融協力を前進させたいと思っています。

ステーブルコインの戦略的意義

ステーブルコインについて、大臣はどのような戦略的意義があるとお考えですか?

ステーブルコインは決済における革新だと考えています。JPモルガンをはじめとする大手銀行がトークン化預金に取り組んでいますし、日本国内でも同様の動きがあります。金融庁もハブとなって三メガバンクでステーブルコインの支払い実証実験を進めています。

米国がステーブルコインを推進する理由は、デジタル人民元を実用化しようとした中国への対抗という側面もありますが、それだけではありません。ステーブルコインを決済手段として使う場合、その裏付け資産は国債等でも保有できることになります。つまり、ステーブルコインの普及は自動的に国債需要を生み出すのです。米国はここに着目しています。

米国の財政赤字は大きく、単年度で見ると非常に深刻です。ステーブルコインの普及は、そのファイナンスの新たな手段となります。これは日本にも当てはまる戦略です。円建てのステーブルコインが海外を含め広く普及すれば、その裏付け資産として、これまで日本国債を保有していなかった層が国債を保有することになります。

流動性が高く、通貨や現金と等価で交換可能な資産は国債以外にありません。したがって、ステーブルコインの発行者は必然的に国債を購入します。これは日本の財政運営においても、国債の新たな購入層を創出するという点で大きな意義があります。

円建てステーブルコインの実用化と展望

先日、日本初の円建てステーブルコインが金融庁に承認されました。中長期的な視点で日本の財政や金融システムに与える影響をどのように捉えていますか?

円建てステーブルコインは、特に国際送金インフラが未発達な国々との取引において大きな価値を発揮します。SWIFTやコルレス(国際送金の中継システム)を利用した従来の送金では、処理に時間がかかる、手数料が高い、あるいは確実に届かないといった問題のある国がありました。ステーブルコインであれば、電子的に瞬時に送金が完了します。

こうしたニーズは、商社などが金融機関と連携して具体化していくことになるでしょう。特に発展途上国など、自国通貨の国際的な信用力が十分でない地域との商取引において、円建てステーブルコインは有効な決済手段となります。

想定される主なユースケースは、やはり貿易金融、特に比較的大口の取引になると考えています。

ヨーロッパではCBDC(中央銀行デジタル通貨)の議論が盛んですが、どのようにお考えですか?

欧州ではCBDC推進の議論が活発ですが、中央銀行がすべての取引を直接管理するという仕組みには、プライバシーの観点から慎重であるべきだと考えます。金融取引の秘匿性は、どの国においても重要な価値です。こうした観点から、中央集権型のCBDCよりも、ブロックチェーン型のピアツーピア方式が現実的な選択肢になると見ています。

手数料やガバナンスについてはどのような課題がありますか?

手数料水準をどこまで低く抑えられるのか、そしてシステム全体の維持コストを誰がどのように負担するのか、こうした点について国際的な議論が必要です。完全に手数料を無料にするのか、それとも最低限の手数料を設定するのか。後者の場合、税制上の扱いをどうするのかといった課題も出てきます。

ただし、従来の国際送金手数料と比較すれば、必要なのはシステム維持のための最低限のコスト、いわば保険料のようなものです。その水準は極めて低くなるでしょう。また、その保険料的な手数料の課税関係についても、今後検討が必要になってくるでしょう。

分散型金融(DeFi)とユースケースの重要性

分散型金融(DeFi)について、米国でも重要なテーマになっていますが、日本でも議論が進むのでしょうか?

DeFiは米国でも極めて重要な政策テーマとなっています。日本としては、米国がどのような具体的なユースケースを創出するかを注視しているところです。

DeFiに限らず、例えば、証券決済のトークン化により決済速度が劇的に向上する可能性があります。既にMMFのブロックチェーン化も実現しており、証券決済全体がこの方式に移行すれば、すべての金融機関がブロックチェーンネットワークに参加することになります。

規制とユースケースのバランスをどう取るべきでしょうか?

ユースケースの具体化こそが、適切な規制設計の鍵となります。何を防止すべきで、何を保護すべきかが明確になれば、過度に規制を強化する必要はありません。実態に即した柔軟な対応が可能になります。

日本は国内送金システムが高速かつ正確で、先進国の中でも優れた水準にあります。こうした既存システムの価値は否定されるべきではありません。また、利用者の中にはブロックチェーン型の決済を好まない方も一定数いらっしゃるでしょう。選択肢の多様性を確保することも重要です。

米国における具体的なユースケースの展開を見極めながら、日本としては、やはり貿易金融、特に大口取引が中心的な活用領域になると考えています。

まとめ

今回のインタビューを通じて、日本政府が暗号資産・Web3領域において、投資家保護と産業育成のバランスを重視しながら、着実に制度整備を進めている方針が明確になった。

片山大臣は「本当に今、ちょうど時代が動いてきているタイミング」と語り、日本の暗号資産・Web3産業の転換期を迎えている認識を示した。2028年の税制改正施行と金商法への移行という制度基盤の整備、そして日米協力によるステーブルコイン戦略の推進により、日本は「デジタル元年」を実現し、デジタル金融分野での国際競争力を飛躍的に高めていく方針だ。

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