- 米SEC、有価証券判断に投資家への聞き取り調査
- Telegramの独自仮想通貨Gramが未登録有価証券にあたるとした米SECが、投資家の聞き取り調査を活用していたことが分かった。テレグラム側と主張の食い違いを見せる中、今月24日に公聴会が開かれる。
有価証券判断に投資家への聞き取り調査
人気メッセージアプリ「テレグラム」の独自仮想通貨Gramは未登録の有価証券にあたるとして、そのローンチに待ったをかけた米国証券取引委員会(SEC)は、その判断の根拠として、投資家への聞き取り調査から得られた情報を活用していたようだ。
去る11日、SECは、プライベートセールで17億ドル(約1800億円)の資金調達に成功したテレグラムのブロックチェーンプロジェクトTONの稼働停止を要求する訴えを起こした。SECは同日、米国内におけるTONの仮想通貨Gramトークンの販売または配布を停止する緊急差し止め命令が承認されたことを発表している。
SECのプレスリリースによると、約29億のGramトークンが世界で171名の投資家に販売され、そのうちの10億トークンがアメリカを拠点とする39の投資家に販売されたという。ニューヨークタイムズの報道では、その中には著名ベンチャーファンドのLightspeed VenturesやSequoia Capital、Benchmark等も含まれている。SECの訴状によると、アメリカのトークン購入者の投資額は、全体の約25%に当たる4億2450万ドル(約460億円)を占めているという。
アメリカおよびロシアの投資家の代理人を務める、仮想通貨投資銀行HASH CIBのCEO、Yakov Barinsky氏によると、SECは9月の時点で、アメリカ拠点の投資家にコンタクトを取り、テレグラム社がトークンセールに当たり、どのような情報を提供したかについて尋ねたという。Barinsky氏は仮想通貨メディアCoinDeskに次のように語っている。
SECは、クライアントに接触し、どのように取引が調整されたのか、どのような情報をTONが共有したのか、どのような文書が配布されたのか、また欠落していた情報はなかったかなどについて尋ねたことが分かっている。
SECの訴状では、Gramトークンの有価証券としての特性を裏付けるものとして、次のような投資家の具体的な体験も例に挙げている。
2018年1月、テレグラム社はアメリカ拠点の投資家に、「優秀なエンジニアチーム」や「0xー50xのリターンのチャンスがある」ことを語り、「その時点でも、ローンチ時点でも使用できないトークン」であるにも関わらず、その投資家は、2750万ドル(約30億円)相当のGramを購入した。
この事実が、Gramの価値が上昇する可能性から、利益を得る意図があることを実証している。
食い違う双方の主張
SECは、訴訟に踏み切った要因の一つとして、テレグラム社が「行政召喚状の受け取りを拒否した」ことをあげているのに対し、テレグラム側は、一年半に渡り、SECにTONプロジェクトに関する協議の場を求めてきた関わらず、訴訟という手段に訴えたSECの判断に、「驚き、失望している」と投資家への書簡で述べるとともに、SECの法的立場には賛同できないと主張した。
また、10月31日に予定されていたTONメインネットの稼働を延期するべきか検討中だという。さらに、TONとGramに関する情報を発信していた公式チャンネル「TON Board」は、規制の不確実性が高まる中、これまでの投稿全てを削除するとともに、「新たな情報の分析とポリシー調整のため」一時休止すると発表している。
SECの仮想通貨規制の基準に関しては、明確さを欠いているなど、批判する声も聞かれる。
先月末、アメリカ連邦議会の12人を超える有志議員が、SECのJay Clayton会長に書簡を送り、デジタル資産について同委員会が、より明確な定義を明らかにするよう求めている。また今年4月には、米国証券法から暗号トークンを免除する法案「トークン分類法」が議会に再提出されている。
TONネットワークの差し止め命令に関する公聴会は、10月24日にニューヨークで開かれる予定となっている。用意周到な訴状を提出したSECに対し、テレグラム社がどのような反論を展開するのか、注目される。
参考資料 : CoinDesk