内部告発で違法マイニングの摘発
イラン配送電公社Tavanirが、無許可でマイニングを行っていた1100のマイニングファームを閉鎖したことがわかった。現地英字メディアFinancial Tribuneの報道によると、内部告発者が当局に報告したことが、違法マイナーの特定に繋がったという。
Tavanirは先月、違法マイニングの検挙につながる情報を提供した内部告発者には、1億イラン・リヤル(約25万円)の報償金が与えられると発表していた。
Tavanirの広報担当者によると、一部の無許可のマイニングファームは、電力消費量が大きく、既に稼働している工業用・農業用設備にマイニング機器を設置するため、電力消費量に大きな変化が現れないという。そのため、定期的な電力消費パターンのモニタリングだけでは、違法なマイニングを特定することは困難であり、内部告発者の協力が必要だったと述べている。
合法マイニング事業をサポート
イランは、昨年7月、仮想通貨のマイニングを合法化し、産業鉱山貿易省が運営許可を与える形を取っている。今年1月の時点で1000件以上のライセンスが付与されたと報道されたが、ライセンスは30キロワット以上のエネルギーを消費する機器を持つマイナーに限定されるとのこと。
マイナーにとってイラン最大の魅力は、その電力料金の安さだろう。マイニングファームが支払う料金は、通常1キロワット時(kWh)4800リヤル(約12円)だという。しかし6月から9月までの夏のピークシーズンには、料金はその約4倍の19300リヤル(約48円)と跳ね上がる。そのため、Tavanirは合法なマイニング事業をサポートするために、その料金を最大47%カットすると発表した。
ただし、このインセンティブの対象となるには、古いエアコンを交換するなど、Tavanirの「電力効率化プロジェクト」に参加する必要があるとのことだ。
明確さに欠けるマイニングを取り巻く環境
先月6日、イランのEshaq Jahangiri副大統領は、仮想通貨のマイナーに対し、1ヶ月以内に身元確認をはじめ事業規模やマイニング機器の種類を登録するよう命じた。この措置は、マイニング機器の密輸を防ぐ意図とともに、マイニング政策や関税に関して曖昧な部分が残るイランで、「仮想通貨活動家の混乱を排除する」狙いがあるとのことだ。
内部告発を奨励し、多数の違法マイニングファームを閉鎖に追いやったのも、マイニング事業を厳しく管理する施策の一環だと言える。
一方、副大統領の発表から間もなく、300メガワットの容量を持つ14のマイニングファームが、政府から承認を受けたことが明らかになった。さらに、先月末、発電所でも、助成金を受けていない燃料を使用すること、また余剰電力を活用することなどの条件付きで、マイニング業務が許可されることとなった。
マイニングに対する国家戦略策定を指示
イランのロウハニ大統領は5月、イラン中央銀行をはじめ政府のエネルギー及び情報通信技術部門関係者に、規制やマイニング収益を含むマイニングに特化した新たな国家戦略の策定を呼びかけた。この大統領の鶴の一声が、マイニング規制を明確化し強化する流れを後押ししたようだ。
イランでは現在、マイニングは合法な産業として認められているが、仮想通貨取引は全面的に禁止されている。しかし、仮想通貨が持つ様々な可能性を、より真剣に受け止めるべきだとの指摘する国会議員も現れた。現在、産業鉱山貿易省の管轄であるマイニング産業から生み出されるビットコインの管理は、中央銀行が行うべきだと主張している。
仮想通貨取引所の中央銀行への登録を義務付ける法案も議会に提出されており、仮想通貨取引規制が明文化されれば、取引再開の可能性もある。マイニング規制の明確化がその先駆けとなるのか、今後の動きが注目される。