仮想通貨取引禁止を求める嘆願書
イギリスのファイナンシャル・アドバイザー(FA)Neil F. Liversidge氏が、同国での暗号資産(仮想通貨)の取引を禁止する嘆願書を、英国政府に提出した。
嘆願書では、「英国居住者である企業および個人による仮想通貨の支払い・受領の禁止を法制化し、英規制当局がビットコインなどの仮想通貨による取引禁止を英金融機関に求める」よう訴えている。
Liversidge氏は、「仮想通貨には本質的な価値がなく、社会を不安定化する要因となり、しばしば犯罪行為に利用される」と主張している。また、英国での取引禁止により仮想通貨を利用する犯罪者を「邪魔する」ことが可能になり、仮想通貨の信頼に影響を与えることで、価格の下落を引き起こし「仮想通貨保有者の富と権力を縮小させる」ことも可能だと主張している。
さらに、仮想通貨は「法律を遵守する市民やビジネス」には必要不可欠なものではなく、マイニングは環境に有害であると批判している。
顧客体験に基づく判断
英メディアInvestment Weekの報道によると、Liversidge氏の顧客が仮想通貨に関連した詐欺や脅迫にあった経験があり、ビットコインによる支払いの強要やビットコイン詐欺グループにより、約70万円〜250万円ほどを失ったという。
「仮想通貨は本当の意味で詐欺だ」と語るLiversidge氏は、英国政府が嘆願書通りに仮想通貨を禁止した場合、連鎖反応により一晩で仮想通貨を崩壊させることができるだろうと主張している。
同氏は自社のファンドマネージャーには仮想通貨を購入しないと誓約することを求めているという。「もし、今仮想通貨を所有しているなら、あなたよりもっと愚かな人間を見つけて、すぐに投げ売りすることをお勧めする」とアドバイスしている。
ツイッターの反応
同氏が主張する「ビットコインに本質的な価値はない」「詐欺」「犯罪に利用」という語り口は、過去、多くの仮想通貨懐疑派の著名投資家にも使われてきたフレーズで、とりわけ新しいものではない。
もちろん仮想通貨を利用した詐欺や犯罪行為が行われているのは確かだが、それは限定的であり、また仮想通貨に限ったことではない。今日でも巨額の詐欺事件や資金洗浄事例は法定通貨では幾度も繰り返されている。
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Liversidge氏はツイッターでも嘆願書への署名を呼びかけているが、そのツイートへの反応は、概ね仮想通貨を支持するものが多いようだ。
Sign my petition. Cryptos have no intrinsic value, are a destabilising influence on society, and are used for criminal activity. The ‘mining’ of cryptos is harmful to the environment. Only criminals need cryptos. https://t.co/Ys2VV0G9L8 https://t.co/M7DAndh3yE
— Neil F Liversidge (@NeilFLiversidge) January 12, 2021
多くのコメントは法定通貨にも「本質的な価値はない」と批判しているが、ある中小企業の経営者は「インフレヘッジ」としてビットコインを利用し、ビジネスを拡張していると具体例をあげた。
また、Liversidge氏に仮想通貨についてもっとよく調べてから判断するべきだとの意見や、過去10年間で最高のパフォーマンスを見せた資産クラスへの投資を阻止しようとするのは、ファイナンシャル・アドバイザーとしてはいかがなものかとのコメントも多く散見された。
嘆願書検討までプロセス
イギリスでは英国市民あるいは在住者であれば、誰でも簡単にオンラインで政府に対し嘆願書を提出することができる。現在政府の嘆願書サイトには、学校での一斉テスト反対やペットホテル支援など、様々な嘆願書が掲載されている。
政府から何らかの回答を得るためには1万人の署名、英国議会で議論される可能性が検討されるためには、10万人の署名が必要とされる仕組みになっている。Liversidge氏の嘆願書の締め切りは今年7月7日だが、執筆時現在、111の署名が集まっている。