仮想通貨市況
9日の米国株式市場は、ダウ平均株価が前日比653.67ドル(1.99%)安、ナスダック指数が521.41ドル(4.29%)安と大幅続落となった。 世界同時株安で、欧州の主要株価指数も軒並み大きく下げている。
米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締め加速が進むとの思惑のほか、中国が新型コロナウイルスの感染再拡大対策でロックダウン(都市封鎖)を行いサプライチェーンの混乱もさらなる物価高を招くリスクがあることから、投資家心理の悪化に拍車をかけた。
ウクライナへの軍事侵攻に対する欧米各国の経済制裁強化策で、「ロシア産石油の輸入を段階的に禁止する措置」が発表されており、欧州経済を巡る懸念も強まった。
暗号資産(仮想通貨)市場も全面安に。ビットコイン価格は、前日比-6.7%安の408万円(31,167ドル)と大幅下落した。
今年1月の年初来安値32,933ドルを更新すると投げ売りが加速。30,000ドルの心理的節目を割り込み、一時29,735ドルをつける場面があった。
デリバティブ市場では、大規模ロスカットが発生。bybtのデータによれば、24時間で清算されたロングポジションは7億9900万ドル(1040億円)相当に達した。
今年以降は1月21日の9億8,700万ドルに次ぐ2番目の規模で、OI(未決済建玉)も大きく減少している。
この相場状況を重く見るPermission.ioのCharlie Silver CEOは、「インフレ抑制に傾倒するFRB(米連邦準備制度)が市場から流動性を引き揚げることで、すべてのリスク資産の相関係数が高まり売り込まれている」と解説、危機感を示した。
暗号資産ヘッジファンドBitBull CapitalのJoe DiPasquale CEOも「米国の金融政策の引き締め加速は、投資家がビットコインなどのリスク資産へのエクスポージャーを減らす主因となっており、S&P500との相関関係は一層強まりつつある」と指摘している。
一向に収束の兆しを見せない新型コロナウイルスの感染拡大やウクライナ情勢に関する地政学リスクと欧米の経済制裁に伴う資源高、世界経済の成長見通し悪化などの複数要因が、ビットコインなどリスク資産全般の下押し圧力として働いている。
経済指標では、11日発表の「米消費者物価指数(CPI)」が目先に控えており、米国のインフレ状況はFRBの金融政策判断に直結するため、極めて重要な局面と言えるだろう。
USTの影響
ステーブルコイン第3位で、テラブロックチェーン上で発行されるUST(TerraUSD)が一時0.6065ドルまで急落。
これを受け、Coinmarketcap(CMC)時価総額12位のテラ(LUNA)が、前日比-46%と暴落した。
「テラ(LUNA)の非営利組織であるLuna Foundation Guard(LFG)が、UST準備金として大量保有するビットコインを売らざるを得ない状況に追い込まれるのではないか」との憶測のほか、Curveなどのプロトコルに連鎖的な悪影響を及ぼすおそれなど、信用不安がDeFi(分散型金融)市場で強まったことも背景にある。
USTは、無担保型ステーブルコインの一種。Terraのネイティブ資産LUNAとアルゴリズム連動する形で米ドルとの1:1水準を維持する仕組みが機能してきたが、市況の急悪化と流動性を提供していた大口売りなどの影響で「1ドル=1UST」のペッグを保てなくなり、市場の動揺を招いた。
ステーブルコインとは
ボラティリティの高い従来の仮想通貨とは違い、一定の価格帯を保つことを目的とした暗号資産の一種。米ドルなどの担保資産の裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、分散型ステーブルコインのDAI、アルゴリズムを利用した無担保型のステーブルコインUST、USDDといった複数種類が存在する。
▶️仮想通貨用語集
UST価格は急落後に反騰したが、「1UST=0.77ドル台」で推移するなど依然としてdepeg状態にある。仕組み上一定のアービトラージ(裁定取引)需要はあるものの、予断を許さない状況と言えそうだ。
LFGは4日時点で、40億ドル相当のビットコイン(BTC)、アバランチ(AVAX)、UST(TerraUSD)、およびLUNAを備蓄していた。9日にはUST貸付けの臨時対策を打ち出すも、現時点では効果は限定的との見方がある。
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