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現金・MMF・株式、次の主役は トークン化RWAの現在地|WebX2026

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

WebX 2026 | セッションレポート

現金・MMF・株式、次の主役は トークン化RWAの現在地

Emily Parker × Min Lin × Chetan Karkhanis × Franklin Bi

現金・預金・MMF(マネー・マーケット・ファンド)といった伝統的な流動性資産は、オンチェーン化によって何が変わるのか。WebX 2026のBinanceステージでは、フランクリン・テンプルトン、オンド・ファイナンス、パンテラ・キャピタル、RWA.xyzの幹部4名が、RWA(現実世界の資産)のトークン化が急拡大する背景から、ステーブルコインとの棲み分け、リテール普及の壁、次の注目領域まで幅広く議論した。

Emily Parker

Emily Parker

RWA.xyz
Strategic Advisor

ニューヨーク在住のRWA市場アナリスト・アドバイザー。東京にも頻繁に渡航し、トークン化資産の動向と規制環境を幅広く調査・発信する。業界カンファレンスや執筆を通じてRWAの現状と課題を発信している。

Min Lin

Min Lin

Ondo Finance
Managing Director, Global Business Development

アブダビを拠点とするオンド・ファイナンスのグローバル事業開発担当。2026年初頭に参画し、トークン化証券・MMFの世界展開を統括。同社の許可不要(パーミッションレス)型トークン化商品の普及を推進する。

Chetan Karkhanis

Chetan Karkhanis

Franklin Templeton
Senior Vice President

シンガポール拠点のフランクリン・テンプルトン・デジタル資産チームに所属。アジア太平洋地域の機関投資家向けデジタル資産パートナーシップを統括し、同社のトークン化MMFプロダクト「Benji」の普及を主導してきた。

Franklin Bi

Franklin Bi

Pantera Capital
General Partner

パンテラ・キャピタルのゼネラル・パートナーとして、2013年からブロックチェーン・仮想通貨のアーリーステージ投資を主導。参画以前はJPモルガンに在籍し、2015年に同社のブロックチェーンチームを立ち上げた。

Alice French

Alice French

モデレーター
ブルームバーグ 記者

ブルームバーグの金融・テクノロジー担当記者。日本市場にも精通し、デジタル資産分野の取材を継続的に行っている。本セッションのモデレーターを務めた。


MMFトークン化の起点と現在地

フランクリン・テンプルトンがトークン化MMF「Benji」の開発を始めたのは、約10年前にさかのぼる。カーカニス氏はその経緯を「純粋な実験から始まった」と振り返った。
Chetan Karkhanis
最初にMMFを選んだのは、2008年のリーマン危機を除けば市場で最も値動きの少ない商品だったからだ。純資産価値が1ドルで安定している。ここでトークン化の便益を試した。移送エージェント業務は実質的に台帳システムであり、それを分散化して効率を高められるかを検証した。
今日、RWA.xyzのデータによるとトークン化MMF市場全体は約150億ドル規模に達しており、われわれはその15〜20%を占める。他のプレーヤーが参入してきたのは良い傾向だ。ただし、伝統的な流動性商品の市場規模は約13兆ドルある。トークン化MMFはまだその入り口に過ぎない。
補足:フランクリン・テンプルトンのBenji(ベンジー)は現在10のパブリックチェーンと1つの半プライベートチェーン上で展開されており、パブリックチェーンの透明性と効率性を重視した設計を採用している。
Min Lin
オンド・ファイナンスでは、複数のトークン化MMFをまとめたラッパー商品(OUSG)を提供しており、6本以上のファンドを組み込んでいる。パーミッションレス(許可不要)型として展開した結果、リテール層での採用が急拡大した。トークン化株式・ETFプラットフォーム「オンド・グローバル・マーケッツ」は、ローンチから約8ヵ月でTVL(預け入れ資産)が10億ドルに達した。ステーブルコインが10億ドルに到達するまで要した期間と比べると、格段に速い成長だ。

RWA急拡大の背景と次のフェーズ

直近1年でRWA市場が大きく拡大した背景について、パーカー氏とビ氏がそれぞれの視点を示した。
Emily Parker
要因はいくつかある。まずオンチェーンで利回りを得たいという需要の高まり。これはMMFやトークン化国債に顕著だ。次にブラックロックのような大手機関投資家がこの分野に参入したこと。ステーブルコインの規制整備もRWAへのオンランプとして機能している。そしてFOMO(乗り遅れへの恐れ)も無視できない。また、RWAの市場動向が仮想通貨全体の動きと逆行する傾向があることも注目に値する。ビットコインがインフレヘッジとして期待されていたほど機能していないという失望感が、RWAへの関心を後押ししている側面もある。
Franklin Bi
2018年にJPモルガンでこの議論をしていた頃、誰もがなかなか動こうとしなかった。当時唯一響いたメッセージは「コスト削減になる」という話だけだった。だが今は違う。フランクリン・テンプルトンやオンド・ファイナンスが示しているのは、収益の拡大、つまりトップラインの成長の話だ。オンチェーンの利用者という新たなAUM(運用資産)とフィー収入源を開拓できる。グローバルな流通チャネルにアクセスできる。これははるかに説得力がある。
さらに長期的には、AIへの対応という観点が重要になる。金融システムが人の目を奪い合う時代は終わる。AIエージェントが自律的に動くワークフローに対応した金融インフラが必要だ。オンチェーン金融は、私の見る限り、AIとネイティブに連携できる唯一の金融システムだ。
Min Lin
AIエージェントが資産を保有・運用する未来に向けて、トークンは自由に移転でき、DeFi(分散型金融)内で相互運用できる設計が必要だ。われわれはすでにVirtuals(AIエージェント開発プラットフォーム)と連携しており、約200のAIエージェントがオンドのトークンをポートフォリオ運用に活用している。パーミッションレス型の設計が、こうした次世代の採用を可能にする。

規制よりも問われるユースケース

規制の整備状況について、米国・日本それぞれの現状が共有された。両者で共通したのは、規制の壁よりも「誰が何のために使うのか」という問いの方が本質的という見立てだ。
Emily Parker
米国では、SECが近くイノベーション特例(innovation exemption)を公表する見通しで、これがトークン化株式にとってより直接的な根拠になる見込みだ。クラリティ法(仮想通貨規制法案)にもトークン化に関する条項(第505条)はあるが、実際にはトークン化をほとんど扱っていないという誤解が広まっている。米国における課題は規制の壁というよりも、「誰が使うのか」「何のために使うのか」という問いへの答えが、まだ十分に見えていないことだ。
日本についても同様だ。規制の障壁よりも、ユースケースが明確になっていないことの方が大きな課題だと感じる。ステーブルコインを巡っても「RWAにアクセスするためのステーブルコインが必要」「ステーブルコインのためにRWAが必要」という鶏と卵の問題が生じている。この業界には、問題を探している解決策が多すぎる。
Franklin Bi
規制の方向性については、Genius Act(ステーブルコイン規制法)以降、長期的な道筋はかなり明確になってきた。ただ、最終的な成否は規制よりも「確信」の問題だ。最も切実なユースケースから始まる、というのが私の見立てだ。新興市場では、ドル建て資産へのアクセスや強固な決済インフラがゼロから必要とされている。オンチェーンとステーブルコインのインフラは、その唯一の手段になる場合がある。成熟した資本市場である米国や日本では、むしろ「トークン化された資産の方が優れた商品かどうか」という競争になる。それはより時間のかかる変化だが、兆候はすでに現れ始めている。
補足:オンド・グローバル・マーケッツのトークン化株式・ETFは、現時点では米国のリテール投資家への提供を行っていない。SECのイノベーション特例が整備されるまでは、主に非米国ユーザー向けに展開されている(2026年7月現在)。

ステーブルコインとの棲み分けと普及の鍵

ステーブルコインとトークン化MMFは競合するのか補完するのか。カーカニス氏が整理し、4人が「利用者に仕組みを意識させないこと」が普及の鍵だという点で一致した。
Chetan Karkhanis
ステーブルコインは価値の移転手段であり、トークン化MMFは利回りの積み上げ手段だ。機能が異なるため、補完関係にある。ただし「アヒルのように見えてアヒルのように鳴くなら、アヒルだ」という話でもある。ステーブルコインは利回りを生まず、利回り型トークンは利回りを生む。その区別をクラリティ法が明確にすることを期待している。問題は、ETFが1993年に誕生し2000年時点でもまだ650億ドル規模、現在でも14兆ドル(伝統的な資産全体の10%程度)であるように、新商品が市場に浸透するまでに25年かかる可能性があることだ。トークン化がどれだけのスピードでそれを成し遂げるかが問われている。
Min Lin
普及を広げるには、仮想通貨ネイティブ以外のWeb2ユーザー層を取り込む必要がある。そのためには、利用者がオンチェーンで取引していることを意識しない体験が必要だ。決済を通じて人々はステーブルコインにアクセスし、そこからMMFや仮想通貨にアクセスできる。次のステップは「使っていてもオンチェーンだと気づかない」ほど、インフラを当たり前の存在にすることだ。より速く、より安く、より確実な決済として浸透すれば、いつの間にかトークン化された資産が標準になっている、というシナリオが現実的だ。
Emily Parker
シームレスさは、仮想通貨全般が長年抱えてきた課題でもある。好例が香港でHSBCが提供するトークン化ゴールド商品だ。利用者の一部は「スマートフォンで金の端数を売買できる」と感じており、ブロックチェーンを意識していない。米国の一部の小規模事業者は、大手銀行へのアクセスがなく低利回り商品しか選択肢がないため、トークン化MMFに強い需要を持っている。「RWAとは何か」を説明し続けなければならない段階を超え、ユーザーが「これで自分の問題が解決する」と感じた瞬間に、本当の意味での普及が始まる。
Franklin Bi
リテール向けと機関投資家向けでは、アプローチの実行方法が全く異なる。リテールは消費者体験の設計であり、利回りをゲーム感覚のリワードに変えたロビンフッドのような発想だ。トークン化資産が生む利回りの「プログラマビリティ」は、今まで退屈だった金融体験をエンタテインメントに変える新たなツールになる。機関投資家は泥臭い個別交渉だ。内部の推進者を見つけ、パイロットで実績を積み、「これは本物だ」と組織に証明していく。哲学は同じでも、実行方法は全く別物だ。

次の注目領域

セッション終盤、モデレーターのフレンチ氏が「誰も見ていないが注目すべき分野」を問うと、4人それぞれの視点が示された。
Chetan Karkhanis
ウォレットだ。株式・債券・コモディティ・MMF、どの資産クラスも同じことが言える。市場を変えるのはクライアント体験であり、その核心にあるのがウォレットだ。伝統的な規制されたレールの外で、パーミッションレスな環境に商品を置けること、これが真のゲームチェンジャーになる。
Min Lin
株式のパーペチュアル(無期限先物取引)だ。ハイパーリキッドのような分散型取引所で既に急速に伸びている分野で、従来の先物取引をより資本効率よく設計したものだ。米トランプ政権下で関税を巡る不透明感が高まった局面では、週末に原油価格の値動きがハイパーリキッドなどの会場で起き、実質的な価格発見の場になっていた。オンドでもこの分野に参入しており、トークン化された株式をそのまま証拠金担保として活用しながらポジションを取れる仕組みを構築している。
Emily Parker
未来の話をする前に、まず今ある商品を実際に使うことだ。この業界では多くのことが語られるが、実際にこれらの商品を使っている人を周囲に知っているかどうか、自問してほしい。
Franklin Bi
オンチェーンIPO(新規株式公開)だ。まだ数年先の話だが、ある企業がIPOの5%をオンチェーンで実施する、というケースが近い将来に出てくると思う。企業が全株をオンチェーンで売り出すのではなく、一部をオンチェーンに乗せてグローバルな投資家層に届ける。それが実現した瞬間、市場は大きく動くだろう。

セッション総括

ビ氏はこう付け加えた。
「ビットコインやインターネットと同じだ。誰もその仕組みを動画で学ぼうとしていないのに普及したのは、使うことで価値が明らかだったからだ。RWAも説明し続けなければならない段階を抜けたとき、本物の普及が始まる」
トークン化MMFは150億ドル規模まで拡大したが、伝統的な流動性市場の13兆ドルと比べればまだ序章だ。ウォレット体験の革新、株式パーペチュアル、そしてオンチェーンIPOへと議論が広がったこのセッションは、金融インフラの「当たり前」が静かに更新されつつある現実を映し出していた。

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