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予測市場と日本市場の未来、Limitless CEOが語る制度設計|WebX2026

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

WebX2026 | セッションレポート

予測市場と日本市場の未来|Limitless CEOが語る制度設計

CJ Hetherington

WebX2026のLimitlessステージでは、予測市場プラットフォーム「Limitless」を運営するCJ Hetherington氏が登壇し、Asia Web3 Alliance Japanの Asif ヒンザ氏をモデレーターに、予測市場の成長の背景から米国での規制対応、そして日本市場への展望までを語った。

CJ Hetherington

CJ Hetherington

Limitless & Limitless Research
CEO & Co-Founder

CJ Hetherington氏は、Base上に構築された予測市場プラットフォーム「Limitless」のCEO兼共同創業者であり、同プラットフォームは月間取引高16億ドル、年換算収益2000万ドルを記録している。また、フォーキャストに関する公共教育を目的とした独立系リサーチ・分析デスク「Limitless Research」も統括している。

Asif ヒンザ

Asif ヒンザ

一般社団法人Asia Web3 Alliance Japan
社長

ヒンザ・アシフは、一般社団法人 Asia Web3 Alliance Japan(AWAJ)の代表理事です。日本およびアジア太平洋地域において、スタートアップ、投資家、イノベーション・エコシステムの連携を推進しています。AI・Web3・ベンチャーキャピタル・海外展開を専門とし、スタートアップと投資家、企業、政府機関をつなぐ支援を行っています。国際的なパートナーシップを構築し、日本と世界のスタートアップエコシステムの発展に取り組んでいます。

Limitless創業の経緯、AIエージェント経済という発想

セッションはまず、CJ Hetherington氏がLimitlessを創業した経緯から始まった。
CJ Hetherington
2023年当時、私はウクライナに住んでいた。戦争が始まったことを受けて非営利の資金調達活動を立ち上げ、1000万ドルの人道支援金を集めた。ヴィタリック・ブテリン氏をはじめ多くの人が寄付をしてくれ、数千人を支援することができた。その活動の中で、後の共同創業者たちと出会った。
彼らはLimitlessを始める前、「Reface」という生成AIの消費者向けアプリを開発していた。2020年に爆発的にヒットし、100カ国以上でApp Store・Google Playの1位を獲得、ダウンロード数は3億に達した。あるとき、RefaceのCTOとランチをした際、彼は「自律型のAIエージェントの群れが、インターネット上の情報の真偽を判定するために互いに競い合う経済システムを作りたい」と語った。
真偽判定の精度が高いAIエージェントには投資ファンドのように年利で資本が還元され、精度が低い、あるいは市場を操作しようとするAIエージェントは、計算コストを回収できずに淘汰される、という仕組みだ。それを聞いた瞬間、予測市場こそがこの仕組みを実現するための最適な基盤インフラだと考えた。
当時、予測市場カテゴリ全体の月間取引高はわずか5000万ドル程度だった。今ではLimitlessのプロトコル単体で数十億ドルが取引されていることを考えると、非常に大きな変化だ。ただ、AIエージェントによる真偽判定というビジョンを実現するにはまだ時期が早いと判断し、まずは慈善事業ではなく事業として、エンドユーザーの課題を解決する消費者向けプロダクトに注力することにした。

実績の規模、取扱うカテゴリと米国市場への挑戦

CJ Hetherington
直近数カ月で、ノーショナルの取引高は約10億ドルに達した。その中には不正なウォッシュトレードとして検知した取引をフィルタリングした分も含まれる。他の取引所は通常こうしたフィルタリングを行わないが、我々の監視システムが疑わしい取引と識別した場合は、公開エンドポイント上で除外することにしている。先月はウォッシュトレードを除いたフィルタリング後の取引高が約6億ドル、これまでの累計ではノーショナルで数十億ドル規模になる。
グローバル市場で扱う契約の多くは、ビットコインの価格や株式・コモディティ価格に関する短期間の予測だ。サッカーを中心としたスポーツも扱っており、ワールドカップの盛り上がりもあってイングランドの勝利には特に沸いた。eスポーツも急成長しているカテゴリだ。
Asif ヒンザ
機関投資家向けの取り組みについてもう少し伺いたい。日本はコミュニティ主導ではなく、機関同士のパートナーシップを軸とする国だ。Limitlessはそのギャップをどう埋めていくのか。
CJ Hetherington
現在、米国市場ではCFTC(商品先物取引委員会)による180日間の審査期間の最中にある。技術の仕組み、監視体制、コンプライアンス、インサイダー取引の監視・防止の方法、資金洗浄対策、顧客管理といった項目について厳格な精査を受けている。Limitlessは現時点で米国では利用できないが、認可を得てローンチする際は、リテールではなく機関投資家や専門投資家を中心に、ヘッジやリスク移転の商品に重点を置く方針だ。
補足:CFTCの180日審査期間は、新規デリバティブ商品の指定申請に対する標準的な審査プロセスの一つで、監視体制やコンプライアンス体制の妥当性が厳密に検証される。予測市場は近年、米国においてDeFiプロダクトから規制対象のデリバティブ商品へと位置づけが移行しつつある分野で、Limitlessもこの流れの中で認可取得を進めている。

日本市場戦略、機関投資家向けリスク移転ツールとしての可能性

CJ Hetherington
Limitlessはまだ日本市場に参入していない。現在注力しているのは「Limitless Research」という、予測市場に関する分析・フォーキャスト機能や教育コンテンツを提供する事業で、実際にプロダクトを日本で運用しているわけではない。規制環境の整備が進む中で、規制当局や企業と対話を重ね、市場に価値をもたらす方法を見つけたいと考えている。
予測市場はヘッジやリスク移転のツールとして非常に強力だと考えている。日本の金融業界は規模が大きいが、金利スワップやクレジット・デフォルト・スワップといった従来型のリスク移転商品は複雑で価格付けが難しく、バックオフィス業務や仲介機関への依存も大きい。ほとんどが取引所を介さない相対(OTC)取引だ。予測市場のようにシンプルでクリーンなリスク移転手段があれば、ポートフォリオの隙間を補い、市場の急変から資産を守ることができる。
なぜ今なのかという点では、世界がかつてないほど不確実性を増していることが背景にある。中東の地政学的な不安定さを例に挙げると、ロイズはホルムズ海峡を通過する商業貨物の海上保険の支払いを停止し、200億ドル規模の穴を米政府が埋めるという事態が起きた。こうした激動の時代にありながら、金融テクノロジーの新たな刷新期にも入っている。
ステーブルコインと低コストのブロックチェーン網の普及によって、規制の有無にかかわらず金融サービスが世界中に事実上輸出されるようになった。Limitlessでは、アフリカの農村部でStarlinkを提供する第三者パートナーが、現地の人々が現金をバウチャーに変換して予測市場に参加できる仕組みを構築している例もある。
米国では選挙後、政権のデジタル資産に対する姿勢がより協調的になり、ゲートキーピング型の規制からルールベースの規制体制へと移行した。これによって予測市場はDeFiプロダクトから米50州でアクセス可能な規制対象商品へと発展した。
日本は高度で先進的な金融規制を持つ国の一つで、高い債務残高を抱えながらも財政破綻を回避してきた稀有な国でもある。これは日本の国債市場における中央清算機関の利用率の高さによるものだと理解している。オンチェーンで始まり米国の規制市場へとつながったこの技術革新が、いずれ日本にも及ぶことを期待している。
CJ Hetherington
予測市場には大きく2つのモードがある。一つは一般消費者を対象にした、スマートフォンで予測を行う消費者向けプロダクト。もう一つは、機関投資家や適格投資家が、既存の株式・コモディティ市場では対応できないポートフォリオの隙間を、二値の予測市場でヘッジする、リスク移転手段としての活用だ。日本では規制サンドボックスや業界コンソーシアムによる実証実験(PoC)から始めるのが現実的だと考えている。

予測市場とギャンブルの違い

Asif ヒンザ
日本には独自のギャンブル規制があり、予測市場の議論は常にこの点に行き着く。ブロックチェーンとAIを活用した予測市場を、ギャンブルとどう区別できるのか。
CJ Hetherington
ギャンブルに存在する2つの重要な特徴が、予測市場には存在しない。一つ目は、不公平な優位性を持つ「ハウス(胴元)」を相手に取引することだ。これは参加者にとって期待値が負であり、繰り返すほど必ず損をする「ギャンブラーの破産」という数学的な現実がある。二つ目は、運や偶然に依存するゲームであることだ。
予測市場はこれとは異なり、自身の知識やスキルを試すためのフォーキャストツールだ。ハウスを相手にした不公平なチャンスのゲームではなく、勝者がいれば必ず敗者がいる、その逆もまた然りというピア・ツー・ピアの公開市場であり、娯楽や依存のために期待値が負のゲームに興じるのとは本質的に異なる。

日本のステーブルコインと、5年後のLimitless

Asif ヒンザ
日本にも独自の円ステーブルコインが誕生した。金融の未来はどのように変わっていくと考えるか。
CJ Hetherington
非常に良い流れだと思う。国債をステーブルコインという形でパッケージ化することで、そのエコシステムに参加したい人々からの需要を新たに生み出し、シームレスなオンランプ体験を提供できる。日本のステーブルコインは、日本にとっても、ユーザー体験にとっても、そして国債をより多く売却できる政府にとっても良い動きだ。
セッションの最後、CJ Hetherington氏は今後5年の展望について次のように語った。
「日本で規制の明確化が進み、機関投資家・専門投資家向けに何らかの認可や資格が発行されることを望んでいる。そうなれば、金利スワップやクレジット・デフォルト・スワップのような従来型のリスク移転商品にかかるバックオフィスの手間やコストを取り除きながら、取引所を介した新しい種類の保険的なデリバティブ商品を日本市場にもたらすことができる。」
Asif ヒンザ氏は、不動産や日本が取り組むセキュリティトークンなど、予測市場以外の領域でもLimitlessのようなビジョナリーな企業との協業に期待を示し、セッションは「the future is limitless(未来に限りはない)」というCJ氏の言葉で締めくくられた。
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