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元Metaエンジニアらが開発する新ブロックチェーン「Aptos」とは

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

バイナンスやa16zも投資のL1チェーン

「仮想通貨の冬」や「弱気市場」と称されている2022年においても、大手投資機関から計450億ドル以上の出資を受け業界の注目を集めているプロジェクトの一つに、L1チェーンの「Aptos(アプトス)」があります。

アプトスとは、安全性とスケーラビリティに重点を置いたL1(レイヤー1)ブロックチェーンであり、Meta(旧Facebook)が開発を手がけていたディエム(旧リブラ)の元開発者が創設したことでも知られています。

本記事では、その特徴やユースケースから今後のロードマップに至るまで詳細に解説し、アプトスが、イーサリアムやソラナ、アバランチを始めとするその他L1チェーンとはどう異なっているのかについて見ていきます。

開発背景—元Meta社員の創業

アプトスとは、「最速かつ最もスケーラブルなL1ブロックチェーンの構築」をモットーとしたプロジェクトであり、世界中の何十億人というインターネットユーザーがアクセスできる分散型ブロックチェーンを開発しています。2021年に本格的に始動したプロジェクトですが、その起源はそれ以前にまで遡ります。

創設者のMo Shaikh氏(CEO)およびAvery Ching氏(CTO)は、元Meta(旧Facebook)の社員であり、ディエム(旧リブラ)およびウォレット「Novi」の初期開発に携わっていました。

ディエム(Diem)とは、Metaが独自に開発していたブロックチェーンおよびそのステーブルコインの名称です。銀行口座を持たないような人でも誰でも世界中で利用できるデジタル通貨および経済ネットワークの構築を目指していました。

元々は「リブラ(Libra)」と呼ばれており、複数の法定通貨に裏付けられたステーブルコインを発行する計画だったものの、規制当局からの懸念などにより、最終的には名称がディエムに変更され、担保資産も米ドルのみという方針に変わりました。その後は紆余曲折を経て、22年2月には銀行などを運営する米シルバーゲート・キャピタル社へディエムに関する知的財産権が全て売却され、Metaとしてのディエム事業は解体されました。

関連:メタ(旧フェイスブック)社、米シルバーゲート銀行にディエムの知的財産権(IP)など売

関連:仮想通貨リブラ(ディエム)とは|初心者でもわかる特徴を解説

Shaikh氏およびChing氏の二人は、志半ばに終わったディエムのミッションおよび技術を引き継ぎ、Meta退社後にアプトスを立ち上げました。そのためアプトスでは、Meta開発の技術が多数採用されており(下記参照)、他のブロックチェーンとは異なったユニークな特徴が見られます。

特徴—セキュリティとスケーラビリティ

共同創設者の「ブロックチェーンが広がるにはユーザー体験を向上させなければならない」という考えに基づいているアプトスは、「セキュリティ」および「スケーラビリティ」を念頭に開発されました。ブロックチェーンにおけるセキュリティとは、コードの脆弱性やネットワークにいる悪意ある攻撃者に対する耐性を意味しています。スケーラビリティとは、ネットワークの規模(ユーザー数、トランザクション数およびdApp数など)が拡大しても適切に機能する能力を指しています。

22年7月時点ではテストネットしか稼働していないものの、ファイナリティ形成にかかる時間は1秒以下で、1秒間に処理できるトランザクション数(TPS; Transactions per Second)は、現在約1,000だと言われています。TPSが12〜15のイーサリアムや平均7のビットコインと比較しても、これは非常に大きい数ですが、アプトスチームは、近い将来この数を1万にまで拡大する予定で、最大時には16万TPSにも達する可能性もあると述べています。(試験的な数値であり、実際にはこの通りでない場合もあります。)

セキュリティおよびスケーラビリティという、ブロックチェーンが大衆に受け入れられるために不可欠な側面を向上させるためにアプトスで用いられている技術が、Metaのディエムでも採用されていた「Move言語」および「Diem BFT」と呼ばれるコンセンサス・メカニズムです。

Move

アプトスの最大の特徴の一つが、「Move」と呼ばれるブロックチェーン用のプログラミング言語が利用されている点です。Moveもディエムと同時に、Metaで開発されていた技術です。

Moveでは、トークン情報やスマートコントラクトをリソース(プログラムが使用するデータ)として保存しますが、リソースのコピーや紛失が起こらないような設計が言語の中に直接組み込まれているため、二重支払(同じトークンを不正に二度送信すること)や所有権の重複というバグが起こりえません。そのため、イーサリアムなどで利用されている言語「Solidity」などに比べ、セキュリティが高いと言われています。

Diem BFT

Moveと共にアプトスのセキュリティおよびスケーラビリティを担保している技術が、元々はディエムが開発した「Diem BFT」と呼ばれるコンセンサス・メカニズムです。

ブロックチェーンにおけるコンセンサス・メカニズムとは、「合意形成に関する既定ルール」のようなものです。分散型のネットワークでは、特定の人や組織がトランザクションを承認および記録するのではなく、一定条件を満たせば誰でも承認者および記録者としてネットワークに参加可能です。誰でも参加可能というオープンな性質だからこそ、ネットワークが機能するには、誰がどのようにしてトランザクションを承認および記録するかなどといった様々なルールを予め制定しておく必要があります。ネットワーク参加者は、このような既定ルールに従ってトランザクションを承認または否認し、これによりネットワーク全体の総意を形成します。

Diem BFTは、「HotStuff」と呼ばれるビザンチン障害に耐性のある(ネットワーク内の一部のノードが正常に作動しなくても機能する能力のある)プロトコルを基盤にしています。HotStuffは、端的に言えば「全ノードが互いにコミュニケーションを取る代わりに、選出されたリーダーがノード間の連携を司るシステム」です。これにより、ノード同士がやりとりするメッセージ数が格段に減少できるため、合意形成にかかる時間が短縮されます。

さらなるスケーラビリティおよびセキュリティを追求するために、Metaは主にHotStuffのリーダー選出プロセスに改良を加え、Diem BFTを開発しました。アプトスではDiem BFTの最新版であるバージョン4が採用されています。

並列処理によるスケーラビリティ向上

Aptosでは、Block-STMと呼ばれるエンジンを活用し、トランザクションの並列処理を可能にすることにより、スケーラビリティを向上させています。

EVMチェーンを初めとした多くのブロックチェーンでは、基本的には一つずつ順番に、一度に一つのトランザクションしか処理されません。これは、例えば「AさんからBさんへ1ETH送金」と「CさんからDさんへの1ETH送金」という互いに関連性のないトランザクションであったとしても、まずは「AさんからBさんへ1ETHの送金」または「CさんからDさんへの1ETHの送金」のどちらかを最初に実行し、それが終わり次第、もう一つのトランザクションを実行しなければなりません。この方法では、トランザクションの実行およびファイナリティ形成に時間がかかってしまうことが、問題視されています。

一方でAptosでは、Block-STM(STMとはソフトウェア・トランザクショナル・メモリの略、並列計算を行う技法)を活用することにより、ブロック内にあるトランザクションはおそらく互いに関連性がないだろうと楽観的に(Optimistic)に仮定して、さらにコンセンサス・プロトコルをトランザクションの実行から分離することにより、トランザクションを同時並行的に実行しています。仮に関連性のあるトランザクションが発見された場合、再度実行および検証され、ブロック内のトランザクションが全て実行されるまでこれを繰り返します。

この方法では、ネットワークの中央集権化が加速するかもしれないなどというリスクもありますが、スケーラビリティに関しては格段に改善すると考えられています。

エコシステム

上記のような特徴を有するアプトスは、DeFi、NFTおよびゲームなど様々な分野での利用が見込まれており、メインネットのローンチがまだである執筆時点においても、既に100以上のプロジェクトがエコシステム内に構築されています。

Liquid Swap(AMM)

アプトス上で最大級の規模を誇るプロジェクトが、Pontem Networkが開発するAMM(自動マーケットメイカー)型DEX(分散型取引所)の「Liquid Swap」です。Uniswapなどと同じ仕組みで、トレーダーはトークンが集められているプールを相手にトレードを実行します。

Pontem Networkは、21年には、DeFi投資会社Mechanism Capital主導の資金調達ラウンドにおいて、 Delphiベンチャーズ、Alamedaベンチャーズ、Animoca Brands、Republicなどを初めとした30以上の投資家から、450万ドル(約6億円)を調達しました。また、同年2月には、Move基盤の仮想マシンおよびそのエコシステムを、ポルカドットのエコシステム内へ広げることを目的に、ポルカドットの開発を手がけるWeb3 Foundationからも助成金を受け取っています。

Pontem NetworkのプロダクトはAMMだけに留まらず、ブラウザ上で利用できるMove用のコードエディタ「Move Playground」やウォレット、スマートコントラクト構築ツールなど、その範囲は多岐に及びます。

関連:AMM(自動マーケットメイカー)とは|仕組みやリスクを解説

Econia(DEX)

Econiaとは、アプトス上に構築されているオーダーブック式のDEXです。

これまでのオーダーブック式のDEX(例:ソラナのSerumなど)では、あるトークンペアを売買したいユーザーが多数いた際には、基盤となるブロックチェーンの性質上、トランザクションを一つずつ順番に処理する必要がありました。一方でEconiaは、Block-STMの実装(上記参照)によりトランザクションの並列処理が可能なアプトス上に構築されているため、下の図のように、ある一つのトークンペアの売買に関する複数のトランザクションを、同時に並列処理することができます。

これにより、既存のオーダーブック型DEXよりも、効率的なトランザクションが可能になります。

Martian(ウォレット)

アプトスで利用可能なウォレットを開発しているのが、Martinというプロジェクトです。イーサリアム系のMetaMaskと同様に、資産の管理やdApp接続時に利用されます。22年7月末時点で、1万5,000以上のユニークユーザー数が確認されています。

Hippo Lab(アグリゲーター)

カバ(英語でhippo)のロゴが特徴的なHippo Labは、アグリゲーターを構築しており、ユーザーはアプリを通して、エコシステム内にあるDEXの中から最良のトレードレートを見つけることができます。執筆時点では既に、テストネット上に複数のトレード用の機能がデプロイされています。

Googleとの提携

アプトスは22年4月、Google Couldとのパートナーシップ提携を発表しました。この提携によりノードの設定が簡略化され、ノードを運営したいユーザーは誰でも、15分ほどでセットアップを完了できるようになります。

この提携について、共同創設者のMo Shaikh氏は、以下のように述べています。

  

Google Cloudの行動力、10億人のユーザーがアクセスできる分散型技術への取り組み、および彼らが提供するインフラの性能には感心している。Google Cloudチームは非常に聡明で、我々と歩調を合わせてくれた。Google Cloudがアプトスユーザーに提供してくれる可能性に期待している。

  

資金調達

アプトスは22年に入ってから、バイナンスやa16z、FTXなど業界大手の投資機関から資金調達を実施しています。

22年3月

2億ドル(約270億円)調達

参加投資家:a16z(リード)、Tiger Global、Katie Haun、 Multicoin Capital、 3 Arrows Capital、 FTXベンチャーズ、コインベースベンチャーズ、Paypalベンチャーズ他

同月

バイナンスラボ(取引所バイナンスのVC部門)の出資(出資額不明)

関連:バイナンスラボ、ディエム(旧リブラ)出身者が開発するブロックチェーン「Aptos」に出資

22年7月

1.5億ドル(約200億円)調達

参加投資家:FTXベンチャーズ(リード)、Jump Crypto、Griffin Gaming Partners、Franklin Templeton、Circle Ventures、Superscrypt

関連:Diem系ブロックチェーンAptos、FTXなどから200億円調達

ロードマップ

アプトスは、22年Q2(執筆時点)までに、開発者ネットおよびテストネットのローンチを成功させています。開発者ネットには、既に2万以上のノードが参加しているとアプトスは述べています。コミュニティからの参加が必要なテストネットは、4回に分けて実行される予定であり、22年7月までに最初の2回が完了しています。

今後はQ3にメインネットのローンチが予定されており、その後は徐々に機能が追加される見込みです。

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