クレディ・スイスの再建策
スイス第二の大手銀行クレディ・スイス・グループは27日、2022年第3四半期(7-9月)決算を発表。4四半期連続の赤字となり、40億3,000万フラン(約6,000億円)の純損失を計上した。
損失の16%(約979億円)は投資銀行部門によるもの。再建プランに関する不確実性の中で、富裕層顧客が資金を引き揚げ、129億フラン(約1.9兆円)の純流出となっている。
同日にクレディ・スイスは事業再建プランを発表しており、証券化事業(SPG)の一部売却など業績不振が続く投資銀行部門を縮小する一方で、主力事業であるウェルスマネジメント部門を中心に収益安定化を図る。
現在の52,000人から2025年末までに43,000人に縮小することで、全体のコストを15%(約3700億円)縮小できるという。
クレディ・スイスはまた、最大40億スイスフラン(約6,000億円)の資金調達を計画。調達資金は、再編費用などに充てられる。ディクシット・ジョシ最高財務責任者(CFO)は「資本に関するいかなる疑念も解消し、今後の事業再編の基盤になる」と記者会見で述べている。
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株価暴落
クレディ・スイスの再建策について、市場からは失望の声が上がっている。有形自己資本利益率(ROTE)の25年の目標値が他の大手銀行より低いこと、再建プランの複雑さ、投資銀行部門の圧縮が不十分であることが指摘されている。(ROTE:自己資本(貸借対照表の純資産)に対する純利益の割合で、株主の投資額に対してどれくらいの利益を生み出しているかを示す指標)
27日の米株式市場でクレディ・スイス株は19%急落して引けている。1日当たりの下落率として過去最大だった。同社の株価は22年に57%下落。10月28日時点の時価総額は約1兆4,770億円(102億ドル)で、昨年の3兆2,280億円(223億ドル)から半減した。
これらの再建プランは、22年8月に就任したウルリッヒ・ケルナー最高経営責任者(CEO)のもと比較的短期間で打ち出された。
クレディ・スイスは、巨額損失によるファンドの閉鎖やマネーロンダリング幇助の疑いで起訴されるなど複数のスキャンダルに直面してきた。今後はリスク管理を含むガバナンス体制の改善と顧客の信頼回復が課題になる。
クレディ・スイスはスイスに拠点を置く世界有数の大型ユニバーサルバンク。世界各国で事業を展開しているため、仮に財政破綻に陥った場合には、2008年のリーマンショック以上の金融危機を引き起こす可能性を危惧する声も挙がる。
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