仮想通貨の会計規則変更
米国財務会計基準審議会(FASB)は13日、暗号資産(仮想通貨)の会計処理と開示の改善を目的とした新たな基準を発表した。この会計基準改訂により、企業は報告期ごとに、保有する仮想通貨を評価額で査定し、その変動を財務報告書に反映させる義務を負うことになる。
FASBは、米国における会計基準の設定を行う公益の民間非営利団体。米国証券取引委員会(SEC)により公開企業のための指定会計基準設定主体として認識されており、米国で上場している企業には、FASB基準に則った財務報告書の作成が義務付けられている。
リチャード・ジョーンズFASB議長は、「新たな基準は仮想通貨の会計処理と開示の改善が理事会の最優先事項であるべきと指摘した、広範な利害関係者のフィードバックに応えたものだ」と述べている。
従来の規則では、仮想通貨は無形資産とみなされており、企業が保有する仮想通貨価格が購入価格を下回った場合、売却していなくとも、帳簿上で減損損失を計上する必要がある。一方、資産評価の上昇で生じた利益を計上することはできない。
新たな規則では、企業には保有する仮想通貨を毎期、評価額で査定することが求められ、評価額の変動は純利益として認識される。さらに企業には、保有資産、契約上の売却制限、報告期間中の変動に関する情報を開示することが義務付けられる。
ジョーンズ氏は、新基準は現在の会計の複雑さを簡素化しつつ、仮想通貨が企業の財務状況に及ぼす実際の経済的影響を反映した、より関連性の高い情報を提供するものになると指摘した。
仮想通貨保有企業に朗報
米上場企業マイクロストラテジーのマイケル・セイラー会長は、評価額を反映する時価主義会計への変更を歓迎している。
FASB has officially adopted Fair Value Accounting for #Bitcoin for fiscal years beginning after Dec 15, 2024. This upgrade to accounting standards will facilitate the adoption of $BTC as a treasury reserve asset by corporations worldwide. https://t.co/4GOuji6cr0
— Michael Saylor⚡️ (@saylor) December 13, 2023
FASBは、2024年12月15日以降に開始する会計年度から、ビットコインの時価主義会計を正式に採用した。この会計基準のアップグレードにより、世界中の企業がビットコインをトレジャリーの準備資産として採用しやすくなる。
マイクロストラテジーは2020年8月、資本配分戦略の一環として2億5000万ドル相当のビットコインを購入した。同社のビットコイン投資に対する信頼は揺るぎないもので、その後もビットコインを継続して購入。2023年12月5日時点の保有量は、174,530 BTC(1兆740億円)に上り、上場企業として最大となっている。
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新たな会計基準は、2024年12月15日以降に始まる会計年度(当該会計年度内の中間期を含む)からすべての企業に適用されるが、中間及び年次決算報告書が未発表である企業の場合、自主的に新基準の早期適用を行うことも可能となっている。
ビットコインへの多額の投資を行っているマイクロストラテジーをはじめ、テスラやBlockなどの企業は、この新基準適用から恩恵を受けることになると予想されている。
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機関投資家への影響
世界4大会計事務所の一つであるデロイトは、FASBの会計基準改訂が、企業の仮想通貨に対する投資意欲を促進する可能性があると見ているようだ。
デロイトによると、ビットコインを保有している上場企業はわずか39社(米国では19社)で、その保有量はビットコイン供給量の1%に過ぎないという。
しかし、FASBの基準改訂により、財務報告の透明性が高まり、投資家は企業の財務の健全性をより正確に把握できるようになると指摘。また、利害関係者に仮想通貨の保有額やパフォーマンスをより適切に伝えることが可能になるため、コミュニケーションの改善が見込まれることから「機関投資家にとって、仮想通貨の魅力を高める可能性がある」と主張している。
同社の監査・保険パートナーのPJ タイセン氏は、以下のように述べている。
この新基準により、仮想通貨投資の基礎となる経済性が会計によりよく反映されるため、米国会計基準の財務諸表を作成する企業にとって、特定の仮想通貨への投資がより魅力的なものになると期待している。
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