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EigenやAltlayer、仮想通貨領域で注目度高まる「リステーキング」とは|特徴や将来性を解説

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リステーキングとは

暗号資産(仮想通貨)の中には合意形成の仕組みに「プルーフ・オブ・ステーク(PoS)」を採用している銘柄が多くあります。例えば、イーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)などがPoSを採用する代表的な銘柄です。

PoSのブロックチェーンでは、対象の仮想通貨をステーキングしたバリデータがネットワークを運用してセキュリティを担保しており、その見返りとして報酬を得ています。ステーキングとは仮想通貨を所定の期間、預け入れることで報酬が得られる仕組みやサービスで、日本の仮想通貨取引所もステーキングサービスを提供しています。

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最近、仮想通貨領域では、このステーキングを発展させた「リステーキング(再ステーキング)」と呼ばれる仕組みが注目を集めるようになってきました。今年1月にはデータプロバイダー「CoinGecko」も、プラットフォームにリステーキングのカテゴリーを追加しています。

CoinGeckoのデータによると、リステーキング銘柄の時価総額は本記事執筆時点で7億ドル(約1,040億円)超。例えば「AltLayer(ALT)」「Picasso(PICA)」「Restake Finance(RSTK)」といった銘柄がこのカテゴリに含まれます。

リステーキング(Re-Staking)とは文字通り、一度ステーキングされたPoSブロックチェーンのデリバティブ(派生的な金融商品)を再度ステーキングする仕組みです。この機能の実現によって、ステーキングを行うステーカーは資金効率を高めることができ、単純にステーキングだけするよりも報酬を増やすことが可能です。

また、プロトコルを開発するプロジェクト側にもリステーキング資産でセキュリティを強化し、ユーザーへのマーケティングや開発に専念できるというメリットがあります。結果としてプロジェクトの拡大を促進し、全体としてエコシステムの発展につながると期待されています。

このように投資家・ステーカーとプロジェクト側の両方にメリットがあるため、リステーキングは2024年に急成長する領域であるとの見方が多く上がっています。本記事ではリステーキングの概要、代表的なプロジェクト、リスクなどを解説していきます。

目次
  1. EigenLayerについて
  2. 次世代プロジェクト
  3. リステーキングの今後
  4. まとめ

EigenLayerについて

1-1.概要

リステーキングについて理解していただくために、まずは代表的なプロジェクト「EigenLayer」を紹介します。

EigenLayerは、イーサリアムのブロックチェーン上に構築されたリステーキングのためのプロトコルです。Blockchain CapitalやPolychain Capital、Coinbase Venturesらの著名なベンチャーキャピタルから出資を受けており、非常に注目度の高いプロジェクトです。

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ユーザーはEigenLayerのプラットフォームを利用し、イーサリアムのビーコインチェーンでステーキングしたイーサリアム(Beacon Chain Ether)を再利用することができます。Beacon Chain Etherはステーキングした際の「Withdrawal Credentials」というデータをEigenLayerに伝えることでリステーキングできます。

再利用されたイーサリアムは、EigenLayerを利用する様々なプロトコルで使用されます。EigenLayer上に構築されたプロジェクトのことは「AVS(Actively Validated Services)」と呼ばれています。

また、EigenLayerではBeacon Chain Etherに加え、イーサリアムをサードパーティプロジェクトでステーキングすることで受け取ることができる各種のLSD(リキッドステーキングデリバティブ)にも対応します。LSDにはstETH(Lido Staked Ether)や、rETH(Rocket Pool Ether)などがあります。

このように、EigenLayerでリステーキングすることによって、イーサリアムやLSTはプールされます。プールされたトークンは、リステーキングした人が選択したプロトコルのセキュリティに利用されます。

1-2.開発の背景

EigenLayerが考案された背景の1つにプロトコル開発の課題があります。新しい分散型のプロトコルをイーサリアム上に構築する場合、開発チームはサービスのセキュリティを担保するために、信頼のネットワークを構築する必要があります。その際、独自トークンを発行してPoSの仕組みを導入することも可能です。

しかし、トークンの価値が低いと、簡単にトークンを買い占められてしまい、プロトコルガバナンスを制御される恐れがあります。

新しいプロジェクトはEigenLayerを介すことで、イーサリアムやLSTを信頼のネットワークの構築に活用することができます。これは、時価総額が300億ドルを超える、イーサリアム・ブロックチェーンの巨大なセキュリティの一部を拡張し、活用できることを意味します。

その仕組みを表すのが、EigenLayerのホワイトペーパーにある、以下の比較図です。「DApps」が分散型アプリで、「AVS」は左の場合、オラクルなどのモジュール・インフラを指します。既存の仕組み(左側)では、各AVSのうち一つを攻撃する、つまり、ミニマム1億ドルで間接的にDAppsを攻撃することが可能です。例えば、オラクルへの攻撃で、参照価格データを操作するなど。

一方、右側がEigenLayerを導入した場合のイメージ。この場合、EigenLayerプロトコル上で動作するアプリケーション(Actively Validated Services)はEthereumのセキュリティを担保しており、攻撃者がDAppsを攻撃するためには、Eigenlayer への攻撃=13億ドルが必要になります。

オラクルやブリッジなどの既存プロジェクトは通常、イーサリアムブロックチェーン上にプロダクトを構築しつつも、自社発行トークンでセキュリティを維持しています。EigenLayerが考案された背景には、こういったセキュリティ上の課題を解決する狙いもあります。

1-3.懸念事項

「DefiLlama」のデータによると、2月17日時点でEigenLayerには70億ドル相当の資産がロックされています。この金額の大きさは、ネットワークを攻撃する場合に必要なコストの目安であり、セキュリティの高さとなります。

EigenLayerの創設者のSreeram Kannan氏は以前、EigenLayer上の1つのプロトコルを攻撃するためには10億ドルの資金が必要になると安全性の高さをアピールしていたことがありますが、現在もロックされている資金が増え続けているため、EigenLayer上のプロトコルの安全性は一段と高まっています。

一方で、中央集権化やスマートコントラクトの不具合、イーサリアム自体の価値低下などのリスクはEigenLayerにもあります。

また、EigenLayerでは、AVSごとにスラッシングのルールが設定できるようになっていることにステーカーは注意が必要です。スラッシングとは、バリデーターがダウンタイムや不正行為など、その責務を適切に果たさなかった場合、ステークした資産が没収される罰則のことです。

なお、再担保化に関するリスクを懸念する声もありますが、EigenLayerは公式ドキュメントでEigenLayerは再担保とは異なると述べています。

従来の金融システムにおける再担保は入金者が自身の資産を直接コントロールできませんが、EigenLayerのステーカーは自身のトークンを直接管理できると違いを説明。

他にもEigenLayerでは認証したいサービスを自身で選べたり、カウンターパーティリスクや流動性リスクがなかったりすることが、従来の再担保化とは明確に違うと述べています。

EigenLayerはまだ新しいプロトコルであるため、ガバナンスについてもまだ発展途上です。公式ドキュメントではプロトコルが発展していくにつれて、将来的にガバナンスの仕組みを検討していくと説明しています。

現時点ではEigenLayerは、独自トークンを発行する計画に言及していません。

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次世代プロジェクト

本節では、EigenLayer以外のリステーキング、プロジェクトを紹介します。

2-1.Picasso

Picassoはソラナ(SOL)のリステーキングプロトコルです。「Inter-Blockchain Communication Protocol(IBC)」という通信プロトコルを介して、様々なL1ブロックチェーンの相互運用を目指すプロジェクトです。

ソラナのリステーキングの提供を開始したのは2024年1月28日で比較的最近です。「SOL」に加え、「jitoSOL」「mSOL」「bSOL」といったソラナのLSDに対応しました。リステーキングできる上限は合計で5万SOL、その後に15万SOL、50万SOLに段階的に上げていく計画です。

この上限に達した時点でリステーキングは締め切られます。最初の5万SOLは開始から24時間以内に上限に達しました。

なお、現在Picassoでリステーキングを行う場合は、IBC接続がローンチされるまでは資産がロックされることに注意が必要です。

Picassoではエコシステム全体で利用される独自トークン「PICA」が発行されています。ガス代の支払いやステーキング報酬などに利用され、将来的にはリキッドステーキングに対応するとも説明しています。

最大供給量は100億PICA。公式サイトでは2023年10月11日時点で約49億PICAが流通しているとされ、バリデータ報酬の年利は推定8%から15%とされています。

2-2.KelpDAO

Eigen Layer、及びリキッドステーキングデリバティブ(LSD)のマーケットが巨大なため、その上で「LSDfi」と呼ばれる新たな市場が形成されています。分散型スワップ、イールドファーミング、リベーストークン、アルゴリズミックトークン、レンディング、イールドアグリゲーターなど、DeFi(分散型金融)の構成要素が、LSD市場に流れ込んでいます。

KelpDAOは、LSDfiの一つです。EigenLayerでのリステーキングを享受しつつ、報酬ポイントを稼ぎながら、新たなLSDを受け取り、運用できるサービスです。言わば「リキッド・リステーキング」となっています。

例えば、KelpDAOにstETHを預け入れると、「rsETH」を受け取ります。rsETHはEigen Pointを蓄積しつつ、様々な市場でレンディングや取引など使用できます。

2月17日時点ではDeFillamaによると4.6億ドルの資産がリステーキングされています。

2-3.AltLayer

「モジュラー(連結式)」アーキテクチャを採用することで、EigenLayer上に構築されるプロトコルは、データの側面からも大きな注目を集めています。中でも、モジュラー・アーキテクチャを活用した『ロールアップ』が特に重要視されています。

CoinGeckoのリスティングカテゴリーでトークンの時価総額が最も高い「Altlayer」は、EigenLayerに委ねられたイーサリアムの再ステーキングを通じて運用されるRaaSフレームワーク「Restaked Rollups」を提供しています。このフレームワークは、ブロックチェーンの主要な構成要素を実行層、決済層、コンセンサス層、データ可用性層等に分割するモジュラー構成において、「データ可用性層」の役割を果たします。

Polygon CDKやArbitrum OrbitなどがAltLayerのRaaSフレームワークをサポートしており、DeFi、SocialFi、ゲーム分野でAltLayerのRaaSの採用が始まっていると報告されています。

AltLayerは、著名な投資家からの資金調達に成功し、グローバル仮想通貨取引所BinanceのLaunchpoolプラットフォームで45番目のプロジェクトとして選出されました。ALTトークンは1月25日にBinanceで上場されました。

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2-3.その他のプロジェクト

また、KelpDAO同様、リキッド・リステーキングのプロトコルを開発する「Restake Finance」というプロジェクトもあります。

Restake Financeは昨年8月にベータ版をローンチした新しいプロジェクトです。DeFiLlamaによると、ロックされた資産総価値「TVL(Total Value Locked)」は1200万ドルと小規模であり、実績や支持者の面で実験段階のプロトコルと言えます。

他にはビットコインをステーキングできる機会を提供する「BabylonChain」というプロジェクトもあります。ビットコイン所有者はBabylonChainを介してステーキングすることで、PoSチェーンの検証に参加できるようになります。

今後はリステーキングの機能も提供する予定で、複数のネットワークで金利を稼げるようにすると公式サイトに記載しています。

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リステーキングの今後

このように、今後もプロジェクトの数が増えたり、対応する銘柄が増えたりしてリステーキングの領域は発展していくことが予想されます。リステーキングのユースケースは多様化や高度化もしていくとみられます。

昨年の8月には、クロスチェーンのインフラを構築する「Lagrange Protocol」のプロジェクトがEigenLayerとパートナーシップを締結したことを発表しました。

Lagrange Protocolはゼロ知識証明の技術を活用し、全ての著名なブロックチェーンで一般化した状態証明を作成できるように取り組んでいます。

ネットワークの運用ではEigenLayerでリステーキングしているバリデータも状態遷移のファイナリティの証明に参加します。

Lagrange Protocolのプロジェクトは公式ドキュメントで、マルチシグウォレットなどに依存する既存のクロスチェーンの状態遷移の仕組みにはそれぞれメリットがある一方で、全てに共通している欠点があると指摘しています。

その欠点とは、認証に必要なバリデータの数に上限を設定していること。例えば、ゲームに特化したブロックチェーンRoninのブリッジから資産が不正流出したことが過去にありましたが、この時は9つのバリデータのうち5つの署名があれば入出金できるようになっていました。

これでは独立している5つのバリデータを攻撃することで、不正流出が起きてしまうと指摘しています。

そのためLagrange Protocolではノードの数を動的に変化させる仕組みを導入します。このノードにEigenLayerでリステーキングしているバリデータらを活用します。

まとめ

以上がリステーキングの解説です。まだ新しい領域で課題やリスクもありますが、出資企業やメリットからわかるように非常に注目を集めている領域です。

昨年の3月には、仮想通貨のベンチャーキャピタル「HashKey Capital」が2023年に注目すべきWeb3業界の技術トレンドの1つにリステーキングをすでに挙げていました。

同社は、イーサリアムが上海アップグレードを完了することで、ステーキング関連の技術が更なる発展を遂げると予測。様々なステーキングソリューションが登場するが、流動性を提供するソリューションが成功の鍵を握ると述べていました。

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これからプロジェクトが増えたり、独自トークンが発行されたり、技術が発展したりすることで、リステーキングの領域は一段と盛り上がっていくとみられています。

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