ビットコインと金に追い風となるか
金融大手JPモルガンが10月2日付のレポートで、投資家の「通貨価値の切り下げ取引(debasement trade)」が継続する可能性があり、ビットコイン(BTC)や金(ゴールド)に資金が集まり、資産価値に上昇圧力がかかる可能性があると報告した。
地政学的緊張の高まりと来たる米国選挙は、一部の投資家が『通貨価値下落取引』と呼ぶものを強化する可能性が高く、それによってゴールドとビットコインの両方が好まれるだろう。
「通貨価値の切り下げ取引」は、政府の高い債務や金融政策による通貨価値の低下(インフレーション)を見込んで、投資家が通貨以外の資産に投資する戦略のこと。JPモルガンは、この傾向が強まる背景として、以下の要因を挙げている。
ゴールドとビットコインは、『主要経済国における持続的に高い政府の赤字、一部の新興市場における法定通貨への信頼低下、そしてドルからのより広範な分散化』によって後押しされる可能性がある。
「ゴールドはドルや実質債券利回りの変動にも左右されるが、こうした通貨価値下落の可能性を背景とした取引の影響の方が大きい」というのが、JPモルガンの見方だ。ゴールド価格はここ数週間で急騰しており、9月26日には1オンスあたり2,700ドル(約40万円)に迫った。
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米国の大統領選挙「通貨価値の切り下げ取引」への影響
根底にあるのは、米国の債務問題だ。米国の国債は2024年初めに34兆ドルを突破し、その増加ペースが懸念されている。さらに「債務による通貨価値下落」も問題を複雑化させている。
債務による通貨価値下落は、政府の過度な債務や拡張的な金融政策によってインフレが引き起こされ、結果として法定通貨の価値が下落し、債務の実質的な負担が軽減される現象のこと。
このような財政状況を背景に、11月の米大統領選の結果が「通貨価値の切り下げ取引」に大きな影響を与える可能性がある。
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減税と支出拡大を同時に行う計画を掲げるトランプ前大統領が再選した場合、連邦債務を約7.5兆ドル増加させ、民主党候補のハリス副大統領の計画の2倍以上になると見積もられている(超党派シンクタンクの「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」調べ)。
これを踏まえ、JPモルガンは以下のように分析している。
特にトランプ氏の勝利は、規制の観点からビットコインにとって好ましいだけでなく、関税(地政学的緊張)や拡張的な財政政策(『債務による通貨価値下落』)を通じて『通貨価値下落取引』を強化する可能性が高い。
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地政学リスクに対する反応にビットコインとゴールドに違いも
しかしながら、JPモルガンの分析とは異なり、地政学的リスクに対してビットコインとゴールドが必ずしも同じ反応を示すわけではない。両者の動きに明確な違いが見られる場面もある。
例として、10月1日、イランのミサイル攻撃時の市場反応が挙げられる。中東で戦争の脅威が迫る中、ビットコインの価格は24時間で3%以上下落。一方、ゴールドの価格は1.4%上昇した。この対照的な動きは、多くの投資家がビットコインをまだリスク資産と捉えている可能性を示唆している。
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