
暗号資産(仮想通貨)スイ(SUI)には、価格上昇を狙うだけでなく、保有しながら収益を得られる投資機会があります。その代表例が「ステーキング」と呼ばれる仕組みで、保有資産をネットワークに預けることで継続的な収益を受け取ることができます。
さらに近年注目を集めているのが「リキッドステーキング」です。これは代替資産を発行し、それをDeFi運用に回すことで、追加の利回りを狙える点が特徴で、TVL(預かり総資産)も急速に拡大しています。
本記事では、スイにおける代表的なリキッドステーキングである「Haedal」を取り上げます。さらに、受け取ったリキッド資産をNavi Protocolに貸し出して「レンディング収益」を得る方法についても解説していきます。
※2024年1月〜2025年4月のJVCEA統計情報自社調べSUIのリキッドステーキングとは
SUI(スイ)は、Meta(旧Facebook)のDiemプロジェクト出身者が設立した開発会社「Mysten Labs」によって設計された、高速処理を特徴とするL1ブロックチェーンです。時価総額は約115億ドルで、25年9月時点の市場において14位に位置しています。
ステーキングとは
スイはネットワークの合意形成にPoS(プルーフ・オブ・ステーク)を採用しており、バリデーター(取引の検証者)はステークされたトークンをもとに選出されます。バリデーターは報酬を得られ、一般投資家もステーキングを通じて間接的にリターンを受け取ることが可能です。
ただし、通常のステーキングでは資金が一定期間ロックされるため、資金効率が低下するという課題があります。そこで、この問題を解決する仕組みとして登場したのが「リキッドステーキング」です。
リキッドステーキングで、SUIを預け入れると「LST(リキッド・ステーキング・トークン)」を発行でき、このLSTをDeFi(分散型金融)のさまざまなサービスで活用できます。代表例は以下の通りです:
SUIにおけるリキッドステーキングの市場規模はTVL(預かり資産総額)約6億ドルに達しており、SUI全体のTVLの約4分の1を占めています。

出典:DefiLlama(Sui Liquid Staking)
SUIのリキッドステーキング市場の代表例が、SpringSUI(約2億7,000万ドル)とHaedal(約1億9,000万ドル)です。
本記事では、2025年に頭角を現したHaedalプロトコルを取り上げます。HaedalのLST「haSUI」を、大手レンディングプロトコル「Navi」で運用する具体的な手順については、こちらからご覧いただけます。
Haedalとは
Haedal Protocolは、バンコク銀行でアナリストを務めたCedrick Vajarachitkul氏などを中心としたチームが、2023年のスイ財団主催のハッカソンを通じて立ち上げられた。2025年1月には、OKX Ventureなどから資金調達し、同年4月29日には独自トークン「HAEDAL」を発行。BinanceやBybitなど主要取引所に上場を果たしました。
Haedalは、独自の仕組みである HMM(Haedal Market Maker) を備えており、市場の値動きを利用して「安く買い、高く売る」自動取引により得られた収益の一部が haSUIのAPRに還元される。この仕組みにより、ユーザーは通常のステーキング報酬に加えて、より高い利回りを得られる設計です。

出典:Haedal
2025年9月時点では、Slush Walletのステーキングページにおいて年率2.2%超の利回りが提示されており、SUIのステーキング手段の中で最も高い水準を誇ります。(Slush Walletステーキングページ参照)
担保資産に利回りが上乗せされる性質から、haSUIは常にSUIより高い価値(プレミアム)を持つよう設計されていますが、実際の市場価格は需給によって変動します。
そんな時、HMMが価格の安定化の役割を果たし、さらに大きな乖離が生じた場合には「安く買って高く売る」アービトラージ(裁定取引)も働くため、価格は自然に調整されやすくなっています。
HAEDAL/haSUIの基本データ
項目 | 内容 |
---|---|
サービス開始 | 2023年 |
haSUI TVL | TVL:約1億7000万ドル |
haSUI 年率 | 約2.2% |
独自トークン(ティッカー) | HAEDAL |
取引市場 | Binance、Bybitなど |
価格 | 約0.13ドル(約19円) |
時価総額 | 3000万ドル(737位) |

HAEDALのユースケース
Haedalのユースケース(トークンの使い道)には、主に以下の2つの特徴があります。
- リキッドステーキング利用者向け報酬:SUIのDEXであるCetusにおいて、haSUIとHAEDALのペアを提供することで、1日あたり約5,000枚のHAEDALトークンが報酬として配布。(2025年9月時点)
- ガバナンス参加:HAEDALをステーキングしてveHAEDALに変換することで、ガバナンスに参加でき、さらに年利約34%を獲得可能。(2025年9月現在)
HaedalトークンはスイのDEXを通じて獲得可能です。スイのDEX「Cetus」の使い方はこちらで解説しています。
haSUIを発行してNaviで運用する手順
ここからは、HaedalとNavi Protocolを組み合わせて、ステーキング報酬とレンディング収益を同時に獲得する具体的な手順を解説します。
目次
1.国内取引所でのSUIの購入手順
2.ウォレットの作成手順
3.ステーキングのやり方
4.レンディングの運用方法
SUIの準備
まず国内取引所でSUIを購入します。その後、スイ対応ウォレットを作成し、購入したSUIをウォレットに送金します。
1.国内取引所でSUIを購入
ここでは、国内取引所OKJでSUIを購入する具体的な手順を解説します。

出典:OKJ
①トップページの「取引所」をタップ
②左上の暗号資産の銘柄からSUIを選択
③注文タイプを選択(画像はOKBですが、SUIも同様の操作)

出典:OKJ
④注文内容を入力し「購入」をタップ
⑤取引パスワードを入力し「確認」をタップ
これでSUIを購入できました。
Slush(旧Sui Wallet)を作成
Slushには、初心者でも簡単に始められる「zkLoginでの作成」と、よりセキュアな「シードフレーズでの作成」の2つの方法があります。
【初心者向け:zkLoginで簡単に作成】
この方法は、GoogleやAppleアカウントを使って3分ほどでウォレットを作成できるため、初めてスイに触れる方におすすめです。ただし、他のウォレットへインポートできない点がデメリットとなります。
zkLoginとは?
GoogleやApple IDなどの既存アカウントを使って、暗号資産ウォレットを簡単に作成・ログインできる仕組みです。ゼロ知識証明(Zero-Knowledge Proof, ZKP)を用いており、プライバシーを保ちながら本人確認が可能になります。

1.Slushをインストール:Chrome拡張機能を追加するか、アプリをダウンロードします。
2.ログイン方法を選択:GoogleやAppleなど、自分のアカウントを選んで紐づけます。
3.ログインして完了:即座にウォレットが自動生成され、すぐに利用できるようになります。
【中級者向け:Passphraseアカウントで作成】
この方法は、後からシードフレーズを確認・保管できるため、他のウォレットへのインポートが可能で、セキュリティ面を重視するユーザーに向いています。仮想通貨に慣れてきたらこちらを選ぶのもおすすめです。
手順

出典:Slush
①Slushをインストール:Chrome拡張またはアプリをダウンロードして起動。
②新規アカウントを作成、「More options」から Create a Passphrase Account を選び、そのままログイン完了。

出典:Slush
③シードフレーズ(パスフレーズ)を確認・保管
ログイン後にアカウント情報から確認できるパスフレーズを紙に書くなどオフラインで安全に保管する。以下の画像のように個人アカウント情報から確認できます。
※フレーズを失うと復元不可。他人に知られると資産流出の恐れがあるため、厳重に管理してください。
3.OKJからSui WalletへSUIを出庫

出典:OKJ
①トップページの「資産」をタップ
②資産管理画面の「暗号資産出庫」をタップ

出典:Slush
③SUIを選択したら、「送信先アドレス」にSlush Walletのアドレスを指定(コピペ)し、必要事項を入力して「実行」→「確認」をタップ
Slush Walletを開くと「Receive」画面よりSUIのアドレスが確認、コピーできます。
これでSUIをウォレットに送金完了できました。次はSUIをHaedalにステーキングします。
Haedalでステーキング
Haedalを利用すると、SUIをステーキングして流動性トークンhaSUIを受け取ることができます。
利用方法はシンプルで、公式サイト(haedal.xyz)にアクセスし、対応するウォレットを接続すれば開始できます。
①ウォレットを接続
公式サイトの「Connect Wallet」から、SlushやSuietなどのウォレットを接続します。

出典:Haedal
②ステーキング数量を入力
ステーキングしたいSUIの数量を入力し、「Stake SUI」をクリック。

出典:Haedal
トランザクションを承認します。

出典:Haedal
③ haSUIを受け取る
承認後、対応するhaSUIがウォレットに反映されます。

出典:Slush
NaviでhaSUIを運用
Navi Protocolは2025年時点でTVL(預かり資産総額)が約6.3億ドルに達し、Sui経済圏でトップシェアを誇ります。主な機能は、資産を預け入れて利息収入を得る仕組みと、担保を活用した借り入れサービスです。Haedalで発行されるhaSUIも担保資産として利用できます。
Navi Protocolの公式サイト(app.naviprotocol.io)にアクセスし、ウォレットを接続すると利用可能です。
また、Haedalの「Defi」ページからもアクセス可能です。
ここではHaedalからNavi Protocolへ直接アクセスする方法をご案内します。
①Haedalの「Defi」ページを開き、haSUIのNavi protocolを選択

出典:Haedal
②ウォレットを接続
トップ画面の「Connect Wallet」から利用中のウォレットを接続します。

出典:Navi Protocol
③haSUIの預け入れ
「貸出」画面のダッシュボードからhaSUIを選択し、「供給」を選択。

出典:Navi Protocol
④数量を入力し実行
貸し出す数量を入れ「haSUIを供給」をクリック→ウォレットで承認します。

出典:Navi Protocol, Slush
⑤残高と報酬を確認
トランザクションを承認すると、預け入れが完了し、ダッシュボードに残高と利息が反映されます。

出典:Navi Protocol
補足
HaedalやNaviには、Slushアプリからも直接アクセス可能です。
・Haedalは「Liquid staking」
・Naviは「Start lending」
といったメニューから利用できます。アプリ経由の場合も、接続後のステーキングやレンディングの操作フローは基本的に同じです。

出典:Slush
リキッドステーキングに伴うリスク・注意点
リキッドステーキングやDeFiレンディングは利回りの魅力がある一方で、特有のリスクが伴います。ここでは主な注意点を整理します。
リキッドステーキングに伴うリスク
リキッドステーキングは利便性が高い一方で、以下のようなリスクを伴います。
リスクの種類 | 内容 |
---|---|
スマートコントラクトリスク(☆特に注意) | プロトコルに脆弱性がある場合、資産流出につながる可能性があります。 |
流動性リスク | 需要と供給のバランスが崩れ、大量の償還要求が発生すると換金が難しくなる場合があります。 |
規制リスク | 将来的な規制変更により、サービスの利用制限や停止の可能性があります。 |
価格変動リスク | 基礎となるSUIの価格変動により、haSUIの価値が大きく変動する可能性があります。 |
デペグリスク | 市場変動や外部要因によって、haSUIの価値がSUIから乖離するリスク(haSUIとSUIの価値が1:1で連動しなくなる可能性)があります。 |
スラッシングリスク | バリデーターの不正や運用ミスが発生した場合、ステーキング報酬の一部が失われる可能性があります。 |
DeFiレンディングに伴うリスク
Navi Protocolのようなレンディングサービスを利用する場合は、さらに以下の点にも注意が必要です。
リスクの種類 | 内容 |
---|---|
コントラクトリスク | コードのバグやセキュリティ上の欠陥が悪用されると、預けた資産が失われるリスクがあります。 |
清算リスク(☆特に注意) | 担保として預けたhaSUIの価値が下落した場合、ポジションが自動清算され損失につながる可能性があります。 |
オラクルリスク |
DeFiプロトコルが外部から取得する価格情報(オラクル)が誤ったり、改ざんされたりすることで、誤った清算や資産価値の計算が発生するリスク。 例:価格データが不正に改ざんされ、担保が意図せず清算される場合。 |
リキッドステーキングとDeFiレンディングは、利回りを最大化できる一方で、価格乖離・清算・スマートコントラクト脆弱性といったリスクが存在します。投資を行う際は、必ずこれらを理解した上で、自己責任での判断が求められます。
税金について
仮想通貨取引で生じた利益は原則「雑所得」として取り扱われます。日本円との売買で得た利益だけではなく、仮想通貨同士を交換したときに生じた利益やステーキングなどで得た報酬も課税対象となります。
雑所得に分類される仮想通貨取引での所得は、給与所得などの他の所得と合算した金額に対して税率がかけられます。税率は、所得が多いほど高くなる「累進課税」が適用され、下表の通り5%~45%の7段階に分かれています。住民税も合わせると最大で約55%の税率が課されます。

出典:国税庁
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