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AdvasaとINTMAX、量子耐性技術で拓く給与前払いEWAの未来|WebX2026

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

WebX2026 | セッションレポート

AdvasaとINTMAX、量子耐性技術で拓く給与前払いEWAの未来

Grady Ryther × 藤本真衣 × 日置玲於奈 × Shin Dongmin

WebX2026では、給与前払い(Earned Wage Access、EWA)事業を展開するAdvasa Holdingsと、次世代ブロックチェーンインフラを手がけるINTMAXによるコラボレーショントークが行われた。両社が共有する課題意識と、低コスト・高速・プライバシー保護を同時に満たすブロックチェーン基盤、そしてINTMAXが取り組む量子耐性技術について語られた。

Grady Ryther

Grady Ryther

Advasa Holdings, Inc.
CEO

2025年8月よりAdvasa Holdings, Inc.のCEO兼取締役を務める。事業開発・顧客対応・業務運営全般を統括し、ブロックチェーンを活用した決済連携などデジタル領域の取り組みも指揮する。2010年、ハーバード大学を物理学専攻(経済学副専攻)でcum laude卒業。

藤本真衣

藤本真衣

イントマックス
共同創業者

2011年のブロックチェーン黎明期から業界に参入。日本初のBitcoin寄付プラットフォーム「KIZUNA」を機にBinance Charity Foundationと連携し、国内外アーティストとのNFTチャリティーで累計5000万円超の寄付を支援。2018年にJapan Blockchain Week Summitを創設し、現在はスイス拠点でzERC20とINTMAXの創業者を務める。

日置玲於奈

日置玲於奈

イントマックス
共同創業者

INTMAX共同創業者・開発者。複素ニューラルネットワークの研究者でもあり、暗号学を中心とした情報理論に基づく新しいアルゴリズム・アーキテクチャの考案をライフワークとしている。

Shin Dongmin

Shin Dongmin

Advasa Holdings, Inc.
Managing Director

Advasa HoldingsのManaging Directorとして、グローバル事業展開・戦略的パートナーシップ・投資家対応を統括する。モルガン・スタンレーでIPOや転換社債、ブロックトレードのシンジケート業務に携わった後、LINE Payでデジタル資産決済・オンライン決済連携に従事した経歴を持つ。

給与前払いEWAが解く社会課題

セッションはAdvasa Holdings CEOのGrady Ryther氏の発言から始まった。
Grady Ryther
世界の多くの人にとって、給与は単なる収入ではなく、家賃や食費、交通費、教育費、家族の急な出費など、日常生活を支える基盤そのものだ。しかし多くの国では、すでに働いて稼いだ賃金であっても、決められた給料日まで受け取れない。ここに、労働した日と給与が支払われる日との間にキャッシュフローのギャップが生まれる。人によってはただの不便で済むが、別の人にとっては深刻な経済的負担となり、高金利のローンやクレジットカードなど高コストな金融サービスへの依存を強いられかねない。自分の労働の対価に、必要なときにアクセスできるべきだというのが私たちの信念であり、これがEarned Wage Access(EWA、給与前払い)の核心にある考え方だ。

Fukupeが実現する即時アクセスとグローバル展開の壁

Grady Ryther
当社のサービス「Fukupe」を通じて、Advasa Holdingsは従業員がすでに稼いだ賃金に給料日を待たずに即時アクセスできるインフラを構築してきた。既存の人事・給与システムとシームレスに連携し、銀行振込やデジタルウォレット、プリペイドカードでの受け取りを可能にしている。これは単なる決済サービスではなく、金融面の豊かさを高める手段だ。適切なタイミングで賃金を受け取れれば不要な借り入れを避けられ、金融的なストレスの軽減にもつながる。企業側にとっても、資金負担や業務への支障なく従業員を支援でき、特に離職率の高い業界では従業員の定着につながるメリットがある。
ただし、日本を超えてこうしたサービスを世界に届けようとすると、課題は一気に大きくなる。東南アジアや中東など金融包摂がなお発展途上にある市場で数百万人の労働者を支えるには、インフラが低コストで高速、かつスケーラブルであることが同時に求められる。給与データは個人の金融情報の中でも特に機微なため、プライバシーの保護も欠かせない。既存の決済・送金インフラでは将来にわたってこうした要件を満たし続けるのが難しく、設計が将来を見据えていなければ、企業は数年後にシステムを作り直さなければならなくなる。金融インフラは機関投資家のためだけでなく、公正かつ迅速で安全な方法で資金へのアクセスを必要とする一人ひとりのためにもあるべきだ、という問題意識をINTMAXと共有できたことが、両社が対話を始めるきっかけになった。

INTMAXが目指す「手数料ほぼゼロ」のプライバシー保護基盤

続いて、INTMAXの技術がコスト・速度・スケーラビリティ・プライバシー・セキュリティといった課題にどう対応しているか、共同創業者の藤本真衣氏が説明した。
藤本真衣
プライバシーの真の価値は、誰もがそれを利用できることにあると信じている。しかし今日のパブリックブロックチェーンには、利用者が増えるほど手数料が高騰してしまうという問題があり、誰もが使えるわけではない。だからこそ私はINTMAXを立ち上げた。INTMAXでは、世界中の人々が利用しても手数料はほぼゼロのままであり、数十億人の人々だけでなく、AIがあらゆる場所で使われる世界も見据えている。この技術には、イーサリアムの創設者であるヴィタリック・ブテリン氏をはじめ、多くのイーサリアム研究者・開発者から支援を受けている。
給与は、お金の中でも最も私的で、かつ最も重要な部類に入るものだ。それが遅延したり止まったりすることは決してあってはならない。EWAに必要なのは、低コスト、即時決済、そしてプライバシーの3つだ。これまでブロックチェーンではこの3つを同時に実現できなかったが、私たちはその問題を解決した。だからこそAdvasaとの連携は、金融インフラの未来にとって非常に重要だと考えている。

量子コンピュータの脅威「Qデイ」とBursar計画

最後に、INTMAXが取り組む量子耐性技術について、共同創業者の日置玲於奈氏がバトンを受け、詳しく説明した。
日置玲於奈
今日は、BursarとINTMAXが進める計画についてお話ししたい。目的はただ一つ、量子の脅威からアジアの資産とシステムを守ることだ。Qデイという言葉を聞いたことがあるだろうか。まだそれほど多くの人が知っているわけではないと思う。量子コンピューティングが既存の暗号を破ることに成功すれば、インターネットもブロックチェーンも、私たちの日常生活や資産も深刻な影響を受ける。それが5年後だという人もいれば、15年後だという人もいる。正確なところは分からないが、一つ確実に言えるのは、できるだけ早くシステムをアップグレードする必要があるということだ。理由は二つある。一つは、攻撃者が今日の時点ですでにメッセージを解読できる可能性があるということ。5年後や15年後に量子コンピューティングが実用化されれば、今やり取りしているメッセージはすでに攻撃を受けていると言えるかもしれない。もう一つは、AIやロボティクス、特にアジアのサプライチェーンを支えるプロトコルなど、社会全体のITシステムを大幅にアップグレードする必要が迫っているということだ。5年後、10年後に同じ問題で苦しむより、今のうちに量子耐性のあるシステムを導入すべきだと考えている。
これは単なる計画ではない。実際に動いているものをお見せしたい。私たちの現在のシステムは、すでにポスト量子対応でガス代を最小化しており、ほぼ無制限のスケーラビリティを備えている。同時にプライバシーと即時ファイナリティも実現する、高速なプロトコルだ。ポスト量子には非常に多くの要件が求められるが、暗号技術の部分を高度に最適化することでこの速度を実現している。私たちの連携は、技術の分野だけでなく社会に対しても大きな違いを生み出すはずだ。この協業は、社会にインパクトを与える取り組みの始まりだと考えている。モックアップやペーパーを作ることが目的ではない。

関連記事:量子は脅威か、誇大広告か — 暗号資産業界の本音|WebX2026

量子コンピュータはビットコインやイーサリアムにとって本当に脅威なのか。WebX 2026で量子研究とブロックチェーンの専門家3人が、リスクの実態・最悪シナリオ・各チェーンの対応策を徹底議論した。

セッション総括

セッションの終わりには、登壇した両社への謝辞が述べられた。

給与前払いという足元の課題と、量子コンピュータという先の脅威への備えを同時に見据えるAdvasaとINTMAXの協業が、今後どのような形で実装されていくのか注目される。

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