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イラン紛争でビットコインが中東の「リスク回避手段」に浮上=BPI分析

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

紛争が変えるビットコインの役割

米シンクタンクのビットコイン政策研究所(BPI)は、イランをめぐる紛争を契機に、中東・北アフリカ地域(MENA)でビットコインがリスク回避手段として存在感を高めていると指摘した。4日に公開した「紛争で変わる中東のデジタル資産利用」と題する分析で、BPIはMENAにおける仮想通貨の役割の変化を論じている。

従来、紛争が激化すると資本は地域外へ流出する傾向がある。しかし今回のイラン紛争では異なる動きが見られた。資本が域外に流出するのではなく、一定の割合が仮想通貨へとシフトした。BPIはこの動きについて、経済・地政学リスクが高まる局面で、仮想通貨、とりわけビットコインがヘッジ手段として機能し得ること示すものだと見ている。

2025年6月のイスラエル・イラン紛争の初期段階では、仮想通貨市場は典型的な「リスクオフ」の反応を示し、伝統的資産と同様、売りに見舞われた。

BPIによると、イスラエルによるイランへの攻撃を受け、世界の仮想通貨市場の時価総額は数時間で約3.7%減少し、約3兆2,600億ドル規模に縮小した。ビットコインも約2.3%下落して10万5,200ドル付近まで値を下げ、イーサリアムはより大きく約7.5%の調整となった。

しかし紛争が長期化するにつれ、市場の動きは変化していった。投資家の資金は高リスクのアルトコインからビットコインへと移り、BTCドミナンスは約1カ月ぶりとなる64.8%まで上昇。その後、地政学的緊張が続くなかでもビットコインは10万4,000~10万6,000ドル付近で安定した値動きを見せた。

BPIはこの動きから、仮想通貨市場の2つの側面が浮き彫りになったとみる。一つは、紛争下でも仮想通貨市場が24時間取引を止めなかったことだ。株式市場など伝統的な金融市場が閉じている時間帯でも、投資家は地政学情勢の変化に即座に反応することができた。

もう一つは、ホルムズ海峡周辺の情勢不安による原油高騰やインフレ、金融引き締めの長期化といったリスクを投資家があらためて意識するなかで、ビットコインが「守りの資産」として選好されるようになった点だとBPIは分析している。

湾岸協力理事会(GCC)加盟国はイランに近く、攻撃の影響を受けたにもかかわらず、湾岸地域の仮想通貨エコシステムは大きな混乱もなく稼働を続けた。

アラブ首長国連邦(UAE)では、取引所やブロックチェーン企業などがクラウドベースのインフラを通じて事業を継続した。21sharesのスティーブン・コルトマン氏は、株式市場が閉鎖されるなかでも仮想通貨取引所が通常通り稼働したことを、市場の成熟性を示す事例として評価している。

関連記事:イラン戦争下のUAE、仮想通貨業界は分散型の業務体制で混乱を最小化=報道

米国・イスラエルによるイランへの軍事攻撃が3週間続く中、UAEの仮想通貨業界はクラウドインフラとリモート体制を活用し、おおむね通常通りの業務を継続していることが分かった。

MENA域内で二極化が拡大

一方でこの紛争は、MENA域内における仮想通貨の利用目的の二極化も浮き彫りにした。

エジプトやトルコ、レバノン、イランなど通貨安に直面する国々では、ビットコインや米ドル連動型のステーブルコインが個人の購買力を維持する手段として注目を集めている。BPIによると、エジプトでは通貨切り下げ後、個人間(P2P)のビットコイン取引量が300%超増加した。

これに対し、UAEやバーレーン、サウジアラビアなどの湾岸諸国では、経済多角化戦略の柱として仮想通貨を取り込む動きが進む。

UAEとバーレーンは仮想通貨に関する包括的な規制枠組みを整備しており、ドバイの仮想資産規制機関(VARA)もトークン化や仮想通貨関連活動に関する規則を改定している。バーレーンもステーブルコインの発行・提供を対象とする規制を導入し、仮想通貨市場の基盤を強化した。

MENA域内では、通貨安や金融不安から資産を守る手段として仮想通貨を利用する国々がある一方、湾岸諸国では新たな金融産業を支えるインフラとして位置付けており、その活用目的は対照的だ。

サウジアラビアが成長を牽引

取引額で見るとトルコがMENA最大の市場で、年間約2,000億ドルに達する。一方、成長率や規制整備という面では、湾岸地域が存在感を高めている。UAEは2025年に約1,500億ドルの仮想通貨取引を処理するなど、主要な仮想通貨ハブとしての地位を確立した。

なかでもサウジアラビアは、仮想通貨関連の活動規模が前年比154%拡大するなど、現在最も強い勢いを見せているとBPIは指摘する。人口3,500万人、スマートフォン普及率約97%、35歳未満が60%超という若い人口構成に加え、政府によるブロックチェーンやフィンテックなどへの投資が成長を支えている。

カタールも前年比120%の成長を記録し、MENAで2番目に急速に拡大する仮想通貨市場となった。規制環境の整備とデジタル金融インフラへの投資が、市場拡大の背景にある。

こうした動きを踏まえ、BPIは湾岸地域が単なる仮想通貨の受容地域から、急成長する世界有数の仮想通貨エコシステムへと進化しつつあると分析している。

BPIは、MENAの仮想通貨エコシステムが、イラン情勢をめぐる地政学リスクのなかで高い成熟度と強靭性を示したと評価する。今後新たな地政学的ショックが発生したとしても、同地域の仮想通貨基盤はむしろ強化される可能性が高いとみている。

関連記事:中東・北アフリカの仮想通貨市場が成長 トルコでアルトコイン投機が活発化=チェイナリシス

チェイナリシスが2025年時点での中東・北アフリカ地域の仮想通貨市場を分析した。トルコ、イスラエル、イラン、UAEでの成長をそれぞれ解説している。

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