暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン技術の誕生から時が経ち、各国の規制も徐々に整備が進んで、現在では従来の金融企業の参入が増えてきました。取り扱う資産も仮想通貨だけでなく、株や債券といった伝統的金融資産をトークン化して取引できるようにするまでに発展しています。
一方、従来の金融企業や機関投資家の参入が増えれば業界や市場が発展するのですが、まだブロックチェーン技術には課題があります。処理速度や信頼性、スケーラビリティ、プライバシー機能などが、技術の本格的な発展や普及を妨げているとの声は多いです。
このような状況の中、2026年2月に発表された「ゼロ(Zero)」というブロックチェーンが注目を集めています。ゼロはローンチ前から従来の大手金融企業と協業していること、処理能力の課題に取り組んでいることなどを理由に関心が高まっています。
そこで本記事では、ゼロの特徴や注目の機能、パートナー企業との取り組みなどについて解説していきます。
- 目次
1. ゼロの概要
1-1. 特徴
ゼロは、異なるブロックチェーン同士の相互運用プロトコル「レイヤーゼロ(LayerZero)」の運営元であるレイヤーゼロラボ(LayerZero Labs)が2026年2月に発表したブロックチェーンです。メインネットのローンチは2026年内を予定しており、それまではテストネットで稼働します。

出典:レイヤーゼロ
ゼロは、特定の用途に特化していない汎用的なブロックチェーンです。処理能力の高い「ワールドコンピューター」になること目指しています。
また、仮想通貨領域でワールドコンピューターを目指すブロックチェーンとして最も著名なイーサリアム(ETH)と互換性があることも特徴です。
Layerzeroに関する詳しい情報は、「Layerzeroとは?」をご覧ください。
1-2. 解決課題
スケーラビリティ問題
ゼロが解決しようとしている課題の1つは、分散型ネットワークが長期にわたって抱えてきたスケーラビリティの問題です。ブロックチェーン分野におけるスケーラビリティとは、「ネットワークの規模が拡大しても機能する能力」を指します。
一般的には、トランザクションの処理能力や処理速度、処理にかかるコストなどの概念を含蓄していて、ネットワークが拡大し参加者やトランザクションが増加しても適切に機能できるブロックチェーンは、「スケーラビリティが高い」と形容されます。
2月の発表では、処理の速さや量において、ゼロはイーサリアムの最大10万倍、高速処理で知られるソラナ(SOL)の最大500倍の性能があると主張しました。
また、レイヤーゼロラボのブライアン・ペレグリノCEOは発表で「ゼロの構造は業界の開発計画を最低でも10年前進させます。我々は、ゼロの技術で世界経済全体をオンチェーン化できると考えています」と述べました。
世界規模のインフラを構築
ゼロは、世界規模の金融市場インフラを構築することも目指しています。これは、ペレグリノ氏の「世界経済全体をオンチェーン化する」というコメントからもわかります。
この取り組みにおいて注目すべき点は、ゼロを発表した際に明らかになったパートナー企業です。ゼロの開発には以下の企業が参画しています。
- インターコンチネンタル取引所(ニューヨーク証券取引所の親会社、ICE)
- グーグルクラウド(グーグルのクラウド部門)
- デポジタリー・トラスト・クリアリング・コーポレーション(金融インフラ企業、DTCC)
- シタデル・セキュリティーズ(資本市場企業)
また、上述したパートナー企業との協業以外にも、諮問委員会を立ち上げたことも同時に発表し、以下の3名が参加すると説明しました。
- キャシー・ウッド氏(アークインベストのCEO)
- マイケル・ブローグランド氏(ICEの戦略的イニシアチブ担当バイスプレジデント)
- キャロライン・バトラー氏(BNYメロンの元デジタル資産責任者)
ウッド氏はこの時の発表で「世界の最大規模の市場や最大手企業によるゼロの採用を加速させることを支援する」とコメントしました。
他にも、レイヤーゼロラボは、最初にローンチするプロダクトの1つに「全市場と全資産クラスの取引のためのプラットフォーム」を挙げています。
当時の発表からは、スケーラビリティが高いゼロを基盤にして、取引や資本の効率化、処理速度の向上、24時間取引の実現といった課題を解決し、機関投資家などに金融サービスを広く提供していくことを計画していることがわかります。
プライバシー問題
他にも、ゼロはプライバシー問題の解決にも取り組みます。特に金融機関や企業にとって、パブリックブロックチェーンにおけるプライバシー確保は重要課題の1つ。最近は仮想通貨やブロックチェーンの領域においてプライバシーはトレンドになっています。
本記事執筆時点でプライバシー機能の詳細が説明されているわけではないですが、ゼロを発表した際、最初にローンチするプロダクトの1つに「プライバシーに特化した決済インフラ」を挙げました。
ゼロ自体はパーミッションレス(自由参加型)なブロックチェーンですが、必要に応じてプライバシーを確保できる仕組みを構築するとみられます。
1-3. 技術
続いて、本節の最後に技術的な特徴を紹介します。
ゾーンによる並列処理
まず、ゼロには「ゾーン(Zone)」と呼ばれる構造があります。説明によっては「アトミック性ゾーン(Atomicity Zone)」と書いてある場合がありますが、同じ意味です。
ゾーンとは、トランザクションの処理などを行う個別の実行環境を指します。例えば、1つのゾーンではプライバシーを確保した決済を処理し、別のゾーンではSNSのプロトコルが稼働するといった構造です。
ゼロの構造を示したのが以下の画像。各ゾーンは並列処理されますが、バリデータを共有します。

出典:レイヤーゼロ
スケーラビリティ対策
次は、ゼロの大きな特徴であるスケーラビリティを実現する技術です。
ゼロのチームの最初の目的は、イーサリアムの分散性、パーミッションレス性、検閲耐性を備えつつ、ソラナのパフォーマンスを実現することだったと説明しています。この目的を実現するために、最初に従来の障害を解決することから始めました。
主にストレージ、計算、ネットワーク、ゼロ知識証明で革新を目指し、スケーラビリティ問題に対応。処理速度については、1つのゾーンにつき1秒間に最大200万トランザクションを処理できるように目指しています。
また、スケーラビリティ問題に取り組むことで、トランザクションコストを0.000001ドルまで下げようとしています。公式サイトでは「ガス代は過去のものとなる」と主張しています。
関連:メタマスクのガス代とは?節約法を仮想通貨初心者にもわかりやすく
バリデータの軽量化
他にも、ゼロ知識証明の技術を活用して、トランザクションの実行と検証を分離させ、従来のブロックチェーンの制約をなくそうとしていることも大きな特徴です。この仕組みによって、バリデータを2種類に分けています。
1つは、トランザクションの検証を行う「ブロック検証者(ブロックバリデータ)」です。ゼロでは、ゼロ知識証明を検証すれば良いため、他のブロックチェーンのようにブロック検証者がトランザクションを再実行する必要がなく、使用するハードウェアの要件を上げていく必要がありません。
また、もう1つのバリデータは「ブロック生成者(ブロックプロデューサー)」です。ブロック生成者はトランザクションを実行してゼロ知識証明を作成する必要があるため、相対的に性能の高いハードウェアが必要になります。
このように、バリデータを2種類に分けることによって、ハードウェアの要件を上げずにスケーラビリティを向上できることがゼロの大きな特徴です。ハードウェア要件が上がらないことはバリデータになってゼロに参加しやすいことを意味し、ネットワークの分散性向上につながります。
2. 仮想通貨ZROとの関係
続いて、本節ではレイヤーゼロのネイティブトークンであるZROとの関係を解説します。
ゼロが発表された後、仮想通貨領域ではよくあることですが、ZROとの関係について多くの憶測が広まりました。これは、ゼロ上で新しい独自トークンが発行されれば、取引などの活動・貢献に応じてユーザーにエアドロップされる可能性があるからです。
しかし、ゼロについては、本記事執筆時点ではレイヤーゼロラボやペレグリノ氏が、新しいトークンは発行しないと明言しています。
ゼロにおけるガス代の支払いやステーキングなどでもZROを使用。他にも、ゼロでZROの残高管理や送金処理などの中心機能を担う「システムゾーン」を作ることを計画しています。
詳しいZROトークンについての詳細は以下の解説記事をご覧ください。
3. 企業との協業
続いて本節では、大手企業との協業を深堀りしていきます。
3-1. ICE
まず、ニューヨーク証券取引所の親会社ICEは、1週間休みなく24時間稼働する取引・清算インフラの提供やトークン化担保の導入に向けて、ゼロの有用性を調査します。
ブローグランド氏は2月の発表で「ICEは国際資本の効率性、広がり、影響力を強化するために新しい技術を模索し続けます」と述べました。
そして、「ゼロの高性能なブロックチェーン構造に関する調査は、オンチェーン技術の進歩が取引・清算・決済・資本形成において、いかにして新たなユースケースや機会を切り拓くことができるのかの理解を深めることを目的としています」と説明しています。
最近は従来の金融市場が、仮想通貨市場と同様に取引時間を延長する動きを見せています。ICEも投資家の利便性や資本効率の向上などに向けて、ゼロの活用を探ります。
3-2. グーグルクラウド

出典:Layerzero
グーグルのクラウド部門であるグーグルクラウドは、AI(人工知能)エージェントに関する取り組みでゼロと協業します。AIエージェントとは、AIの技術を活用して人間や別のシステムに代わって自律的にタスクを実行してくれるシステムやプログラムを指します。
今回の協業でグーグルクラウドは、どのようにすればAIエージェントが銀行口座を持たなくても少額決済を行えたり、即座にリソースを取引したりできるようになるかを探ります。
協業の背景には、ブロックチェーンとクラウドコンピューティングの融合の進展、AIエージェントの活動の増加、普及への課題があります。
グーグルクラウドのWeb3戦略部門のトップであるリチャード・ウィドマン氏は今回の取り組みについて、「AIエージェントが経済活動を行う主体として機能し始めるにつれて、仮想通貨とブロックチェーンのプログラム可能性を実現するためには、クラウドと同水準の信頼性を持ったインフラが必要になるでしょう」とコメントしています。
3-3. DTCC
金融インフラ企業のDTCCは、証券業界におけるデジタル資産市場のためにゼロと協業します。ゼロに組み込まれた技術を、自社やグループ企業のトークン化ソリューションの拡張性向上に活用できないかを模索します。
DTCCのフランク・ラ・サラCEOは2月の発表で、ブロックチェーンのポテンシャルを完全に解放することを、速さと拡張性における制約が妨げていると指摘しました。
そして、業界内で協業していけば、ブロックチェーンの価値を解放したり、転機になるようなメリットを市場参加者に提供したりできるようになると考えていると述べています。
同氏はメリットの事例に、担保の流動性向上、新たな取引形式の提供、資産のプログラム可能性を挙げています。
3-4. シタデル・セキュリティーズ
資本市場企業のシタデル・セキュリティーズは、市場構造に関する専門知識や専門技術を提供するためにゼロと協業します。また、高いパフォーマンスと信頼性を必要とする取引・清算・決済の流れにゼロの技術が適合するのかを調査します。
3-5. 協業の重要性
このような大手企業との連携は、ゼロにとって大きな意味があります。
まずは、容易には得ることが困難な専門性の高い知見がゼロの開発に活かされることです。これにより、ゼロの競争力が高まります。
各社が主に模索するのは、取引時間の延長、トークン化やAIエージェントといった注目度が高い技術であるため、ゼロが仮想通貨やブロックチェーン領域のトレンドにおいて優位性を獲得する可能性があります。
また、大手企業が協業することで、ゼロの認知度や信頼度が高まります。開発が進んで機関投資家が利用できるインフラへと発展することで普及が加速する可能性があります。
他にも、シタデル・セキュリティーズやアークインベストがZROトークンに投資をしており、これは経済的な援助を受けていることを意味します。ZROトークンへの投資は、両社がゼロやレイヤーゼロの価値を信じている証拠です。
4. まとめ
以上が、ゼロの解説です。ゼロは発表時から大手企業の関与が公表されており、最初から注目度が高いブロックチェーンです。
一方で、現在は開発段階である点には注意が必要です。これから本当に採用が進んだり、エコシステムが拡大したりするかは、開発状況、各国・地域の規制内容、他のブロックチェーンとの競争、ユーザー獲得状況、企業による採用の深化と増加の度合い、運用資産の規模などを注視していく必要があります。
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