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量子コンピュータはビットコインの脅威か?リスクと対策をわかりやすく解説

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

近年、量子コンピューターがビットコイン(BTC)の安全性を脅かすのではないかという議論が活発になっています。2026年1月には米大手取引所コインベースが量子リスクに関する独立諮問委員会を立ち上げるなど、対策に向けた動きも本格化しつつあります。

こうしたニュースを目にして、「ビットコインは大丈夫なのか」「そもそも何が脅威なのか」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

この記事では、量子コンピューターの仕組みとビットコインとの関係、どこにリスクがあるのかなどをわかりやすく解説します。

この記事でわかること

量子コンピューターとは何か

ニュースでは「ビットコインの脅威」として取り上げられることもありますが、仕組みを知らないまま情報に振り回されるのは避けたいところです。従来のコンピューターとの違いと、現時点での限界を押さえておきましょう。

従来計算との違い

量子コンピューターは、従来のコンピューターでは膨大な時間がかかる計算を高速で処理できる技術です。特に「暗号を解く計算」が得意で、ビットコインのセキュリティに影響を与える可能性があるため、「暗号資産(仮想通貨)の脅威になるのでは」と注目されています。

ただし「何でも速い万能マシン」ではなく、従来のコンピューターとは得意分野が異なります。

量子コンピューターと従来型の得意分野

項目 従来型 量子型
日常作業(メール・動画・表計算) ×
最適ルート探索・組み合わせ問題 ×
暗号解読(鍵を導き出す計算) ×

2019年、Googleは「従来のスーパーコンピューターで1万年かかる計算を、量子コンピューターで約3分で解いた」と発表し、話題になりました。

なぜビットコインと関係するのか

  • 現在の暗号技術は「解読に膨大な時間がかかる」ことが安全性の前提である
  • 量子コンピューターはその前提を崩す可能性がある
  • そのため「ビットコインの暗号は大丈夫か?」と議論されている

ビットコインに何が起きるのか

量子コンピューターが実用化された場合でも、ビットコインのすべてが直ちに危険になると決まったわけではなく、影響範囲は論点ごとに整理して見る必要があります。
ここでは、ビットコインに関してどこがリスクの対象になるのかについて紹介します。

論点は「鍵(署名)」にある

量子コンピューターが実用化された場合、ビットコインの仕組みのすべてが危険になるわけではありません。影響を受ける部分は限定的で、核心は「署名」にあります。

ビットコインを送金する際には、秘密鍵で署名を行い、公開鍵で本人確認をする仕組みになっています。強力な量子コンピューターが登場すると、この公開鍵から秘密鍵を逆算できる可能性があります。

秘密鍵が第三者に知られるということは、そのウォレットから勝手にビットコインを送金できてしまうことを意味します。つまり、資産が盗まれるリスクです。

量子リスクの影響範囲

領域 量子コンピューターの影響
署名(ECDSA) 受けやすい
マイニング(SHA-256) 受けにくい

上の表の通り、影響を受けやすいのは署名(ECDSA)の部分です。秘密鍵を逆算する計算は量子コンピューターが得意とする領域にあたります。

一方、マイニングで使われるSHA-256はハッシュ値を探す計算であり、仕組みが根本的に異なります。量子コンピューターでも劇的な高速化は難しいとされており、「量子コンピューターでマイニングが乗っ取られる」「ブロックチェーンが崩壊する」といった不安は、この2つの混同から生まれがちです。

つまり、量子リスクはブロックチェーン全体の崩壊ではなく、個人のウォレットの鍵が破られて資産が盗まれるリスクということになります。

どんなときに量子リスクが上がる可能性があるか

では、すべてのビットコイン保有者が同じように危険かというと、そうではありません。リスクの大きさは「公開鍵が、どれだけ長い間ブロックチェーン上で見える状態にあるか」で変わります。

公開鍵が見えている時間が長いほど、量子コンピューターで秘密鍵を逆算される猶予を攻撃者に与えることになります。

リスクが上がりやすい条件

  • 古いアドレス形式(P2PKなど)を使用している:公開鍵がそのまま記録されており、量子攻撃の対象になりやすい
  • 同じアドレスを繰り返し使っている:一度送金すると公開鍵が見え、そのまま長期間残る
  • 長期間コインを動かしていない:公開鍵が見えたまま放置される

一方、最新のウォレットでは公開鍵は「送金する瞬間」だけ公開され、その後アドレスは使い捨てになります。将来、強力な量子が登場しても、攻撃者が狙える時間は比較的短時間に限られる傾向があります(ただし、ネットワーク混雑などで状況は変動します)

つまり、条件が重ならなければリスクは限定的だといえます。

【補足】知っておきたい「HNDL攻撃」というリスク
今のうちにデータを収集して将来解読を試みる「HNDL攻撃」というリスクも指摘されています。ブロックチェーン上の取引データは公開されているため、こうしたリスクがゼロとは言い切れません。

過去の事例から見る価格への影響

量子コンピューターの話題は、技術的に実害があるかどうかとは別に、報道をきっかけに不安が広がると価格が下がることもあります。

2019年には、Googleの量子計算に関する報道後、ビットコイン価格が下落し影響を与えたと可能性が指摘されました。ただし、同時期にハッシュレートは過去最高を更新しており、ネットワーク自体が揺らいだわけではありません。

ニュースを見るときは「実際に何が起きたか」と「市場の反応」を分けて捉えることが大切です。

量子にも限界がある

量子コンピューターは急速に進化していますが、現時点ではいくつかの壁があります。

量子コンピューターの現状と課題

項目 内容
エラー率 熱や電磁波の影響で計算ミスが頻発
安定運用 絶対零度に近い超低温環境が必要
現在の最先端 量子ビット数はIBM「Condor」で1,121
エラー訂正技術はGoogle「Willow」で105量子ビット
BTC解読に必要な規模 数百万〜数億量子ビット

特にエラー率は深刻な課題です。量子ビットは非常に繊細で、わずかな環境変化でも計算結果が狂ってしまいます。暗号解読のような複雑な計算には、エラーを大幅に抑える技術が不可欠ですが、まだ発展途上の段階のようです。

また、現状と必要スペックには数万倍から数十万倍の開きがあり、多くの専門家の中では「実用的な脅威になるまで10年以上かかる」との意見もあります。

ただし、楽観的な見方もあります。暗号学者アダム・バック氏は「20〜40年は重大な脅威に直面しない」と述べ、a16zのジャスティン・テイラー氏も「2030年までの実現可能性は非常に低い」と指摘しています。

一方で、技術の革新は予想を超えるスピードで進むこともあるため、動向を注視しておく必要はあります。

関連:暗号学者アダム・バック、ビットコインの現実的な量子リスクは最短でも20年後 「備えは十分可能」
関連:a16z専門家、仮想通貨の量子脅威に「誇張の傾向」を指摘

ビットコインの投資に

量子コンピューターに対策できるのか

量子コンピューターの発展に対して、まったく手段がないというわけでもありません。ここでは、対策の方向性と、実現に向けた課題を整理します。

対策の方向性(耐量子署名=PQC)

量子コンピューターへの対策として注目されているのが耐量子暗号(PQC:Post-Quantum Cryptography)への移行です。

PQCとは?

PQCは、量子コンピューターでも解読が難しいとされる新しい暗号方式です。従来の暗号とは異なる仕組みで、量子コンピューターでも解きにくい設計になっています。

公的な標準化の動き

  • NIST(米国立標準技術研究所):2024年8月、最初の3つのPQC標準を正式発表
  • 米国政府:2035年を目標に連邦システムの移行を推進
  • 日本の金融庁:「2030年代半ばを目安に対応が望ましい」との方針を公表

ビットコインへの適用は?

ビットコインでも、開発者がBIP-360(耐量子署名の導入提案)などを検討しています。ただし、まだドラフトの段階であり、ネットワーク全体の合意形成には時間がかかるでしょう。

課題も多い

専門家の間でも見解は分かれています。「方向性は見えている」という声がある一方で、次のような指摘もあります。

  • 大規模ブロックチェーンの移行には5〜10年かかる可能性がある
  • ビットコインのガバナンスの遅さ

移行が難しい理由(データサイズ・休眠アドレス・合意形成)

PQCへの移行は、「新しい技術に切り替えれば解決」というわけではなく、主に以下の3つのハードルがあります。

1. データサイズが大きくなる

現在の署名データは約64バイトですが、PQCでは数千バイトに膨らむ可能性があります。ネットワークの処理が遅くなったり、手数料が上がる恐れがあります。

2. すべての保有者が対応できるとは限らない

ここで問題になるのが、長期間動いていない「休眠アドレス」の存在です。仮想通貨データ分析企業CryptoQuantのCEOキ・ヨンジュ氏は、量子攻撃の理論上のリスクにさらされるビットコインは約689万BTCにのぼると分析しており、そのうち約340万BTCは10年以上動きのない休眠アドレスで、サトシ・ナカモトに関連するとされる約100万BTCも含まれます。

これらのアドレスの対策として「旧式アドレスの使用禁止」や「休眠コインの凍結」が議論されていますが、いずれもビットコインの「個人の財産権を侵さない」という設計思想と矛盾する面があります。

また、仮に自分自身のビットコインを安全なアドレスに移行できたとしても、リスクにさらされたアドレスが攻撃を受けた場合、市場全体への影響は避けられません。

量子リスクの課題は技術面だけでなく、コミュニティの合意形成にもあるといえます。

関連:サトシの100万BTCも対象に、量子コンピュータが脅かすビットコインをクリプトクアントが分析

3. 合意形成と移行の現実

技術的に対策が可能でも、ビットコインには中央の管理者がいません。ルールを変えるには、世界中のマイナーや開発者、ノード運営者など、ネットワーク参加者の合意が必要です。過去のアップグレード(SegWit)でも、広く普及するまで数年かかりました。

現在議論されている提案:BIP-360(P2QRH)

  • 耐量子署名を導入するためのソフトフォーク提案
  • 強制ではなく、段階的に新しいアドレス形式へ移行する設計

「対策がまったくない」わけではありません。すでに具体的な提案が出ており、開発者の間で議論も進んでいます。ただし、ビットコインの仕組み上、変更には時間がかかります。焦らず、動向を見守ることが大切です。

量子コンピューターのニュースの見分け方と、今日からできる備え

量子コンピューターの話題で「ビットコインが危ない」という見出しを見かけることがあります。現時点では差し迫った脅威とは言いにくい一方で、長期的な論点として動向を把握しておくと安心です。

ここでは、ニュースを読むときのポイントと、個人でもできる備えを整理します。

量子コンピューター関連ニュースを整理するコツ

量子コンピュータがビットコインの脅威になるには、「大量の論理量子ビットを安定稼働させる」という技術的ハードルを越える必要があります。量子ビットは熱や振動などの外部ノイズで簡単にエラーを起こすため、長い計算ではエラーが積み重なり正しい答えが得られません。これを自動で検出・修正する技術が「誤り訂正」で、実用的な量子コンピュータの最大の前提条件です。このハードルに直接関わる進展かどうかが、ニュースの重要度を左右します。

注目度の高いニュースの例

  • 「誤り訂正」や「論理量子ビット」の実用化の進捗
  • 実際に暗号が解読に関連する内容
  • 大手取引所やウォレットの耐量子暗号(PQC)対応の発表 など

注目度が低めなニュースの例

  • 「〇〇量子ビット達成」などスペックだけの発表(誤り訂正がなければ実用は難しいとされています)
  • 時間軸が曖昧な「将来危険になる」という一般的な警告 など

具体的な事例をチェック

量子コンピューターのニュースを見て、「自分も何かすべき?」と思ったことはないでしょうか。最近話題になった2つの事例をもとに考えてみます。

事例①:Jefferiesのポートフォリオ変更(2026年1月)

米証券大手Jefferiesのストラテジスト、クリストファー・ウッド氏がビットコインをポートフォリオから外し、金と金鉱株に切り替えました。理由は「量子コンピューターによる将来のリスク」です。

ポイント:実際に暗号が破られたわけではなく、将来への懸念からの判断。投資家の動きを知る材料にはなりますが、同じ行動を取るべきかは別の話です。

関連:量子脅威を理由に投資推奨からビットコイン除外、投資銀行ジェフリーズ

事例②:BlackRock IBITの目論見書(2025年5月〜)

BlackRockのビットコインETF「IBIT」の目論見書に、量子コンピューターがリスク要因として追加されました。

ポイント:目論見書には想定されるリスクが幅広く記載されるため、「書いてある=すぐ危ない」ではありません。ただ、世界最大級の運用会社が公式に触れている点は、業界の温度感を測る目安だといえます。

事例③:業界全体で量子対応が本格化

ビットコインだけでなく、主要ブロックチェーンでも量子対策が進み始めています。イーサリアム財団は2026年の優先事項としてポスト量子対応を正式に明記し、専任チームの設立や計200万ドルの研究賞金を設置。ソラナもテストネット上で量子耐性デジタル署名の検証を開始しています。

また、2026年1月に米大手取引所コインベースも量子リスクに関する独立諮問委員会を立ち上げました。

ポイント:脅威の時期については見解が分かれるものの、業界全体として備えが進んでいると言えます。

関連:ソラナ、テストネットで耐量子署名を導入 量子コンピュータ対策で業界をリードか
関連:イーサリアム財団、量子コンピュータ対策チームを新結成

どこに預けていても使える|確認フローと備えの基本

量子コンピューターのニュースを見て、「自分の資産は大丈夫?」と不安になった方もいるかもしれません。取引所でも、ハードウェアウォレットでも、押さえておきたいポイントは同じです。

今日からできる確認習慣

  • 公式の告知をチェックする
    利用中のサービスの公式ページで、「入出金制限」「対応方針」「今後の予定」などが出ていないか確認。
  • 慌てて動かず、SNSより公式を優先する
    量子コンピューターの話題はSNSで広がりやすいですが、公式発表を先に確認する習慣があると判断に迷いにくくなります。

よくある質問

Q1:量子コンピューターのリスクは、自己保管と取引所保管でどちらが大きい?

A:どこに保管しているかより、「公開鍵が露出しているかどうか」がポイントです。

同じアドレスを使い回していたり、古いアドレス形式を使っていると、リスクは高くなるでしょう。なお、保管場所に関係なく、アドレスの使い方次第でリスクは変わります。

Q2:P2PKとP2PKHの違いは何ですか?

A:リスクの条件として挙げた「古いアドレス形式」に関係する用語です。公開鍵がブロックチェーン上で見えるかどうかが違います。

P2PKは初期のビットコインで使われた形式で、公開鍵がそのまま記録されています。P2PKHは公開鍵をハッシュ化するため、送金するまで公開鍵が見えません。

量子リスクの面では、P2PKは公開鍵が常に見えているため狙われやすいとされています。P2PKHはアドレスを使い回さなければ安全性が高いとされています。

まとめ

量子コンピューターがビットコインの署名を破る可能性はゼロではありませんが、現時点では技術的な課題が多く、実用的な脅威になるまでには時間がかかるとされています。ただし、過去には量子コンピューター関連の報道に市場が反応することもあるため、技術の進展とニュースの動向は切り分けて把握しておくのがおすすめです。
業界でも耐量子暗号(PQC)への移行が検討されており、対策の議論は進んでいます。

ただし、古いアドレス形式を使っていたり、同じアドレスを使い回している場合はリスクが高まります。ニュースを見るときは「誤り訂正」「論理量子ビット」といった言葉があるかをチェックし、公式情報を確認する習慣をつけておくと安心です。また、信頼できる取引所で資産を管理することも、備えの一つです。

なお、こうしたリスクを踏まえた上で、資産の分散という考え方もあります。株式やETFなど異なる資産を組み合わせることで、特定のリスクへの集中を避けるアプローチも一つの手です。

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