ウォーレン議員らが当局に書簡を提出
米国の上院議員2人は7日、連邦準備制度理事会(FRB)議長らに書簡を提出。暗号資産(仮想通貨)業界と銀行セクターのつながりを懸念し、関連する質問項目への回答を求める内容だ。破産申請したFTXが地方銀行に投資を行っていたことも問題視している。
エリザベス・ウォーレン議員(民主党)とティナ・スミス議員(民主党)が、FRBのジェローム・パウエル議長、連邦預金保険公社のマーティン・グルーエンバーグ委員長代理、通貨監督庁のマイケル・シュー長官代理を宛先として書簡を発行した。
ウォーレン議員らは、FTXとアラメダリサーチの破綻、それに続くBlockFiの破綻など、大手仮想通貨企業が次々と破産申請を行った状況に触れた。その上で、現在、仮想通貨企業は銀行システムとそれほど結びついていないものの、「これまで理解されていたよりも、仮想通貨業界は銀行と密接な関係にある可能性がある」と指摘している。
銀行システムと仮想通貨セクターがまだそれほど結びついていないことは、仮想通貨のリスクが議論される際に、よく説明されるポイントだ。
例えば今年に仮想通貨市場で起きた債務不履行の連鎖は、より広い金融システムにはほとんど影響を与えなかったが、それは従来型の銀行などと仮想通貨業界がまだ結びついていないためだと論じられる。つまり、仮想通貨業界と銀行の関わりが密接になるほど、リスクの波及に注意する必要があるとされている。
FTXによる銀行への投資
ウォーレン議員らは、FTXグループが姉妹会社のアラメダリサーチを通じて、3月にワシントン州のMoonstone Bankに約16億円(1,150万ドル)の投資を行っていたことを挙げた。 アラメダがMoonstoneの約10%の株式を取得した時点では、この銀行の価値は約8億円(570万ドル)だった。アラメダは、銀行価値の倍以上の投資を行ったことになる。
ウォーレン議員らは、報道を参照しながら、FTXがこの小さな地方銀行へ出資したのは「米国で銀行免許を所有するための要件を回避するための動き」だったのではないかとの疑いを投げかけている。
Moonstoneの親会社であるFBH Corpは、バハマに拠点を置くDeltec Bankの会長が率いている。アラメダは、Deltecの顧客企業の1つだった。FBHは、2020年にMoonstoneを買収、2021年6月にMoonstoneは連邦政府の承認を得ており、その9カ月後にFTXは、Moonstoneに投資していた。
また、FTXがアラメダの銀行口座を通じて、顧客の預金を受け取ることで、仮想通貨取引所にはアクセスが難しい、規制対象の銀行を利用していたことにも触れた。
ウォーレン議員らは、その他にも、Silvergate Capital Corp、Provident Bancorp Inc、 Metropolitan Commercial Bank、 Signature Bank、 Customers Bancorp Incなどが、仮想通貨関連の顧客に大きく依存しており、ボラティリティ(価格変動)が大きくなっているとも指摘している。
質問項目
こうした状況を挙げて、ウォーレン議員らは、「銀行システムの仮想通貨セクターへのエクスポージャー(資産が価格変動にさらされること)の程度」や「銀行を規制する当局が、現在どのように仮想通貨セクターと銀行システムの関係を評価しているか」を理解するために、質問に答えるよう求めた。
回答期限は、2022年12月21日としている。主な質問項目としては、以下のものが挙げられる。
- 最近の出来事を踏まえて、仮想通貨企業と銀行の関係を調査する予定の有無。
- 銀行の仮想通貨企業との関連や、仮想通貨関連活動を評価する方法。
- 仮想通貨カストディや、ステーブルコイン取引の仲介、仮想通貨企業のためのドル預金保有などを行っている銀行の数と名称。
ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値($1)を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、DAIやUSTといったアルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
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