スイス規制当局が声明
スイス国立銀行(SNB=中央銀行)とスイス金融市場監督機構(FINMA)は15日、共同声明を発表し、経営不安が懸念される同国の金融大手クレディ・スイスへの支援を表明した。
SNBとFINMAは声明で、「現在の米国銀行市場における混乱による直接的なリスクが、スイスの金融機関に波及している兆候はない」と指摘。クレディ・スイスの株価は「ここ数日の市場の反応に影響を受けている」が、同行は「システム上重要とされる銀行に課される厳格な資本及び流動性要件を満たしている」と強調し、市場心理の沈静化を図った。
さらに、「必要であればSNBはクレディ・スイスへ流動性を提供する」として、支援の用意があることを明らかにし、異例の対応をとった。
英ファイナンシャル・タイムズ紙によると、米シリコンバレー銀行など3行の相次ぐ破綻を受け、クレディ・スイスの株価と債券価格が急落した後、同行の幹部がSNBとFINMAの関係者らと会談。クレディ・スイスへの支援表明を要請したという。
「クレディ・スイスの破綻、あるいは預金者の損失でさえも、金融センターとしてのスイスの評判を落とすことになることを、スイス政府は十分承知している」と、Opimas社のOctavio Marenzi 最高経営責任者は指摘している。
また、関係筋によると、主要国などからスイスへ対応を要請する圧力がかかっていたという。
株価下落の発端と欧州銀行への影響
クレディ・スイスは14日に発表した年次報告書で、2021年及び2022年の財務報告の内部管理に「重大な弱点があった」と明らかにした。情報筋によると監査法人PwCが、同行の内部管理の欠陥について指摘していた。
さらに15日には、筆頭株主でサウジアラビア最大のサウジ・ナショナル銀行(SNB)が、クレディ・スイスへの追加投資を見送ると報じられ、クレディ・スイスの株価は一時、前日比30%超下落し、過去最安値を更新した。
また、デフォルトリスクを織り込むクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)市場では、保証料率が急上昇し、同行の5年物プレミアムは過去最高を更新した。
クレディ・スイスの株価下落は、シリコンバレー銀行の破綻ですでに動揺していた欧州の銀行株にも大きな影響を与えた。BNPパリバ、ソシエテ・ジェネラル、ドイツ銀行、オランダING、英バークレイズは9~12%の下落を記録。
米国の市場でも、JPモルガン・チェース、シティグループ、バンク・オブ・アメリカなど米銀大手が軒並み下落。中堅銀行でも投機的等級に格下げされた。ファースト・リパブリック・バンクは一時前日比26%安となった。
クレディ・スイスの苦境
クレディ・スイスは近年、一連のスキャンダルに見舞われている。倒産した英グリーンシル・キャピタルとの取引では、ファンドの閉鎖に追い込まれ、米アルケゴス・キャピタル・マネジメントの取引で巨額の関連損失を計上した。
クレディ・スイスは独立した調査で、同行のリスク管理とリスク認識が欠如していたこと、監督責任の遂行とリスク軽減及び強化策などが不十分であったと結論づけ、組織改革を含む戦略計画の作成に取り組むと発表。昨年10月に、事業再建プランを発表したが、市場からは失望の声が上がり、すでに株価は低迷していた。
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最新の動向
クレディ・スイスは16日、スイス当局の流動性支援を受け入れ、スイス国立銀行から最大7兆1000億円相当(500億スイスフラン)を借り入れる意向であると発表した。
また、クレディ・スイス・インターナショナルが、一部のシニア債券を最大30億スイスフラン(4,288億円)で買い戻すと声明で明らかにした。
クレディ・スイスは世界有数の大型ユニバーサルバンクであり、世界各国で事業を展開しているため、財政破綻に陥った場合には、2008年のリーマンショック以上の金融危機を引き起こす可能性が危惧されている。
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