ビットコイン現物ETFの基本概要
ビットコインETFは、ビットコインに投資する新しい手段として注目されています。これは、証券取引所で取引されるETF(上場投資信託)の一種で、ビットコインの価格動向に投資することができます。直接ビットコインを購入・保管する代わりに、証券口座を通じて投資することができるため、多くの投資家にとって便利です。
しかし、ビットコインETFには管理費用もかかり、ビットコインを直接所有することの利点、例えば中央管理者が不要なP2P取引やプライバシー(匿名性)の特性などは享受できません。
本記事では、投資初心者向けにETFの基本を紹介し、ビットコインETFについての包括的な情報を提供します。基本的な知識を抑え、適切な投資計画を立てましょう。
注記:23年11月現在、米国証券取引委員会(SEC)は、規制上の理由からいくつかのビットコインETFの提案を拒否しており、現物ビットコインETFの上場はまだ承認されていません。
目次
- ETFの基本知識
- ビットコイン現物ETFの特徴
- ビットコイン現物ETFのメリット
- ビットコイン現物ETFのデメリット
- ETF上場承認が資産クラスに及ぼす影響
- 現物ETFと既存のビットコイン投資商品の違い
ETFの基本知識
ETFは、株式のように証券取引所で取引できる投資信託です。特定の指数に連動する運用成果を目指し、株式、債券、不動産投資信託(REIT)、商品、インデックスなどの様々な対象資産に投資します。ここでは、ビットコインETFの仕組みを理解するために、金現物ETFと株式や債券のETFを例にして説明します。
金現物ETFの仕組み
投資家は証券口座を介して、ニューヨーク証券取引所で取引される金現物ETF、例えば「iシェアーズ・ゴールド・トラスト (IAU)」の株式を購入できます。このETFは、金相場の動きに連動して価格が変動する仕組みです。1株のIAUは一定量の金を表しており、金価格の変動に応じてETFの価格も変わります。
IAUのカストディアン(保管者)はブラウニー・ブラザーズ・ハリマン(Brown Brothers Harriman & Co.、BBH)です。BBHは市場から金を購入し、専門の取引担当者や金融機関を介して取引します。この金は一定の基準で品質を確保し、IAUの資産として保有されます。
金現物ETFは金価格の変動に焦点を当てていますが、金は利息や配当を生み出す資産ではないため、ETFには利息や配当がつきません。
株式・債券ETFとの違い
株式ETFは、特定の株式市場指数に連動するように設計された投資信託です。これにより、個別の株式を直接購入することなく、幅広い市場への露出が可能になります。例えば、「iシェアーズ S&P 500 米国株 ETF」は、S&P 500という大手株式市場指数に連動するように構成されています。投資家はこのETFを購入することで、S&P 500指数に含まれる企業の株式に間接的に投資できます。
株式ETFは、保有する株式から得られる配当を反映します。投資家は株式市場の成長に加え、配当収入も得ることができるため、総合的なリターンを追求することが可能です。
債券ETFは、政府や企業が発行する債券に投資します。これらのETFは、特定の債券指数に連動するように構成されており、投資家は一つのETFを通じて様々な債券に分散投資できます。たとえば、「iシェアーズ iBoxx」や「iシェアーズ 米国国債 7-10年 ETF」は、特定の債券市場指数に連動するよう設計されています。
債券ETFは、保有する債券が生み出す利息を反映します。投資家は債券の利息収入を得ることができ、市場の価格変動リスクを分散することができます。
ビットコイン現物ETFの特徴
2023年6月15日、世界最大の資産運用会社ブラックロックが、ビットコインETFの申請を米国証券取引委員会(SEC)に提出しました。このETFは「iシェアーズ・ビットコイントラスト(IBTC)」と命名され、ビットコイン市場に新たな動きをもたらす可能性があります。
ブラックロックの提案は、実際のビットコインを裏付けとする「現物ビットコインETF」であり、これが承認されれば、米国株式市場で直接ビットコインに投資することが可能になります。これまでSECは「ビットコイン先物」に基づくETFの承認は行っていましたが、「現物ビットコイン」に基づくETFは未だ承認されていません。
「iシェアーズ・ビットコイントラスト(IBTC)」の運用資産の管理・保管を担当するカストディアン(信託財産管理者)はコインベース・カストディ・トラスト、そして、顧客のビットコイン売買注文を執行するプライムブローカーはカストディアンの関連会社が務める予定です。取引所としては第三者市場とプライムブローカー自身の執行場が使用されます。
ブラックロックの動きは、過去の申請の承認確率からも注目を集めています。23年6月時点で同社は575件のETF申請中、わずか1件の非承認を除き、SECからの承認を得てきました。この驚異的な承認率は、ブラックロックの徹底した準備とSECとの綿密な事前交渉の結果と言えるでしょう。
ビットコイン現物ETFのメリット
ビットコイン現物ETFは、機関投資家と個人投資家双方にとって顕著なメリットをもたらします。共通のメリットとしては、ビットコインを保管するウォレットの秘密鍵の管理やシードフレーズの保護に関わる手間やコストが大幅に削減されます。これは、ビットコイン投資をより広範な投資家にとってアクセスしやすくする重要な変化です。
まず、機関投資家にとって、ETFを通じてビットコインを証券口座を介して購入・保有することが可能になります。取引手続きが大幅に簡素化され、資産のポジション管理やリスク評価が容易になるという大きな利点があります。
さらに、先物ETFと比較して、現物ETFでは期日持ち越しのためのロールオーバーコストや契約満期に関する心配がなく、長期保有に適している点も重要です。また、ビットコインETFの導入により、401(k)退職プランや企業向け年金基金などのポートフォリオにビットコインを組み込むことがより容易になります。
以下に、文書をアップデートした内容を示します。このアップデートでは、暗号資産ETFに関連する税制上の利点や複雑性を考慮して、専門家のアドバイスを求める必要性を強調しています。
税制上の利点が生じる可能性も – ただし専門家のアドバイスが重要
ビットコイン現物ETFは、特に長期投資目的でビットコイン(BTC)を保有したい日本の個人投資家にとって、税制上の重要なメリットが生じる場合があります。しかし、暗号資産ETFに関する税制は複雑であり、さまざまな見解が存在するため、具体的な税理士のアドバイスが必須となります。
証券口座を通じてETFを購入することで、ビットコインへの投資が手軽になるだけでなく、税制の解釈によっては現物への投資に比べて税率が軽減される場合もあります。しかし、暗号資産ETFが総合課税の対象となるか、または分離課税の対象となるかは、その種類や構成によって異なる可能性があります。
日本では、現物ビットコインの利益は一般に「総合課税」として扱われます。これは、ビットコインからの収益を給与やその他の所得と合算し、累進課税方式に基づいて税額を求める方法です。この方式では、所得が大きいほど税率が15~55%の範囲で上がります。
一方で、ETFなどの株式投資による譲渡益は、「申告分離課税」の対象となることが多いです。これは、株を購入した価格より高く売れた場合の差額、つまり譲渡益に対して税率20.315%(所得税15.315%、住民税5%)が適用され、給与など他の所得とは区分して税金の計算を行う方法です。
この申告分離課税の適用は、個人投資家にとって税負担をより明確にし、管理しやすくなる可能性がありますが、暗号資産ETFに関しては種類や構成により異なるため、専門家による具体的なアドバイスを得ることが重要です。
ビットコイン現物ETFのデメリット
しかし、ビットコイン現物ETFにはコストや仮想通貨の性質に関連するいくつかの不利な点も存在します。
まず、ビットコインはP2P(ピアツーピア)取引の特性を持っており、中央管理者が不要ですが、ビットコイン現物ETFではこの特性を享受できません。ETFは従来の金融市場の枠組み内で運用されるため、ビットコインの分散型の特徴が活かされにくいのです。
ビットコインのもう一つの特徴であるプライバシー(匿名性)もETFでは限定されます。ETFは証券取引所を通じて売買され、投資家の身元情報が必要となるため、ビットコイン取引の匿名性は薄れる傾向にあります。
また、ETFの運用にはコストがかかります。例えば、iシェアーズ・ゴールド・トラスト(IAU)のような金の現物ETFの経費率は年率0.25%です。この手数料は投資家の収益率に影響を及ぼす可能性があり、投資決定において重要な要素です。
そして、ETFの運用残高が増加すると、市場に流通するビットコインの量が減少する可能性があります。ETFの発行会社は、運用残高に応じてビットコインを購入し保有する必要があるため、市場の流動性に影響を与えることが考えられます。
さらに、24時間365日値動きのあるビットコイン(BTC)に対して、ビットコインETF(上場投資信託)は証券市場での売買しかできず、取引時間が限られているのは短期トレーダーにとっては大きなデメリットになり得ます。一方、長期保有したい投資家にとっては税制面のメリットの方が上回ることが考えられます。
ETF上場承認が資産クラスに及ぼす影響
ビットコインを伝統的な金融商品であるETFに組み込むことは、その法的位置づけや信頼性を高める上で大きな一歩となります。これまで暗号資産に懐疑的だった投資家や、規制やリスク管理の面で懸念を持っていた機関投資家も、ビットコイン投資を検討するきっかけを得るでしょう。
長期にわたって米国証券取引委員会(SEC)は現物型ビットコインETFの認可を出していなかったため、このタイプの商品への投資が抑制されていました。7.5兆ドル超(2023年7月時点)という巨大な市場を形成している米国ETF市場と暗号資産の間のギャップを埋めるため、ビットコインETFが重要な役割を果たすことが期待されています。
仮想通貨専門企業NYDIGによると、ビットコインのETF承認により、物理ゴールドとの市場規模やボラティリティの比較に基づき、約4.4兆円以上の資金流入が期待されています。一方、JPモルガンは、このETFが仮想通貨市場における転換点となる可能性は低いとの見解を示しています。
ビットコイン現物ETFの導入によって期待される市場への影響は、過去に金や銀などのコモディティに連動するETFが証券市場に導入された時と類似しています。
特に金のETFが登場した際、その影響は金価格に大きく作用しました。投資家が金ETFに資金を振り向けた結果、金への需要が増加し、金価格が上昇しました。この傾向は、経済の不透明性が高まる時や金融市場が混乱する時に特に顕著で、安全資産への需要が増えると金価格の上昇に貢献しました。
これらのコモディティETFの導入は、市場参加者の拡大や投資の多様化を促し、金融イノベーションの一環として重要な役割を果たしてきました。同様に、ビットコインETFも新たな投資機会を提供し、ビットコイン市場の成熟と多様化を促進する可能性があります。
現物ETFと既存のビットコイン投資商品の違い
ギャラクシー・デジタルの報告によると、2023年9月30日現在、ビットコイン関連の投資商品(ETPやクローズドエンド型ファンドを含む)が保有するビットコイン総量は約84.2万BTC(資産管理規模:217億ドル)で、これは発行済みビットコインの約4.3%に相当します。
現在のビットコイン投資製品は、高額な手数料、流動性の低さ、トラッキングエラーなど、投資家にとっての懸念点が多いと指摘されています。ビットコイン現物ETFは、これらの問題を解消し、特に機関投資家にとって新たな投資オプションを提供する可能性があります。
以下では、現物ETFと既存のビットコイン投資商品との違いについて検証します。
ビットコイン先物ETFと現物ETFの違いは顕著です。先物ETFはビットコインの価格動向を予想する先物契約に投資するもので、直接ビットコインを保有するわけではありません。対照的に、現物ETFはビットコインの現物を直接保有し、投資家はコンタンゴやバックワーデーションのリスクから解放されます。また、カウンターパーティリスクの軽減も一つの利点です。
GBTC(グレースケール・ビットコイン・トラスト)は、グレースケール・インベストメンツという資産管理会社によって運用されるビットコイン専門の投資ファンドです。2013年から市場に存在しており、管理手数料は2%です。2023年9月1日の時点で、このファンドの運用資産残高(AUM)は170億ドルに達しています。
GBTCはクローズドエンド型投資信託であるため、市場の変動に応じてプレミアムやディスカウントの価格で取引されることがあります。グレースケールは現在、GBTCをオープンエンド型ETFに転換するため、SECと交渉中です。
21Shares Bitcoin ETPは、ビットコインの価格に連動するETPで、物理的に保有するビットコインを担保にしたCDOが発行されています。2023年11月時点での運用資産残高(AUM)は約4.34億ドルで、管理手数料は1.49%です。これにはビットコインの価格変動リスクとCDO発行元の信用リスクが伴います。
一方、Bitwise Bitcoin Fundは2018年12月に発売された、適格投資家向けのプライベートファンドです。仮想通貨インデクスファンドを提供する米大手Bitwiseが運用しています。最低投資額は10,000ドルと設定されており、運用資産残高(AUM)は現在5.95億ドルです。運用手数料は0.95%です。
ビットコイン関連の投資商品は多様ですが、それぞれ異なる特徴とリスクを持っています。現物ETFはビットコイン市場の競争環境を刺激し、投資市場を広げ、多様な投資家を惹きつけることが期待されます。
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