ステーブルコインでの返済を牽制
米証券取引委員会(SEC)は8月30日、破綻した暗号資産(仮想通貨)取引所FTXのユーザー資産返還について、破産裁判所に申立書を提出した。この内容については、業界から批判的な見方も上がっている。
SECの書面は、FTXがステーブルコインやその他の仮想通貨で元ユーザーなど債権者に返済しないよう牽制する内容である。SECが仮想通貨での返済に「異議を唱える権利を有している」と述べる格好だ。
一部の債権者は仮想通貨現物による資産分配を求めていたが、FTXは現在、債権者に現金、または米ドルにペッグされたステーブルコインで返済することを計画している。今回SECは、次のように指摘した。
債務者(FTX)のポートフォリオには、債務者が計画に従って収益化および分配する可能性がある仮想通貨証券が含まれている。
また、債務者は、特定の債権者にステーブルコインを分配することなど、さまざまな分配オプションを検討している。
SECは、返済計画で説明されている取引が証券法で合法かについては意見しないと続けた。その上で、仮想通貨の取引に異議を申し立てる権利を留保していると述べている。
FTXが、債権者にステーブルコインを分配する際のエージェントを特定していないことにも言及した。
FTXは総額で約140~160億ドル(2~2.4兆円)を顧客に返還する。時期は今年10月以降になる見込みだ。一部のアナリストは、この分配金で仮想通貨が買われることで市場を押し上げる可能性もあると意見している。
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ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、アルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
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曖昧な文言に批判も
SECの申立書について、米大手仮想通貨取引所コインベースのポール・グレワル最高財務責任者は、Xへの投稿で文言の曖昧さを批判した。SECが、ステーブルコインなどでの返済計画が違法であるとは明確に示していないことを指摘する形だ。
SECが市場に透明性を提供することなく、脅迫のような手段を使っていると非難。投資家、消費者、市場はより良い扱いを受けるべきだとも述べた。
SECは、仮想通貨だけでなくNFT(非代替性トークン)にも取締りを広げている。先月末、大手NFTマーケット「OpenSea」に対して、NFTを有価証券とみなし訴訟を起こすと伝えたところだ。
識者からは、NFT市場はアートの市場と同じであり、SECはアート市場をこれまで規制したことはないとの意見が上がった。もしSECがアート市場を証券市場と考えるならば、それを明言すべきとの見解だ。
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