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仮想通貨の税務調査で追徴課税?確定申告のミスが引き起こす具体的リスクと対策|Gtax寄稿

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

*本レポートは、暗号資産税金計算ツール「Gtax」を提供するAerial Partnersが、CoinPostに寄稿した記事です。

仮想通貨の税務調査で追徴課税?確定申告のミスが引き起こす具体的リスクと対策

暗号資産(以下、仮想通貨)で利益を得ると、確定申告が必要となる場合があります。仮想通貨は価格が大きく変動しやすく、取引所によって取引履歴の管理方法が異なるため、損益計算や確定申告に苦手意識を持っている方もいるのではないでしょうか。

実際に誤った確定申告をしてしまうと、税務調査の対象になるリスクが高まります。そこで今回は、確定申告のミスによって起こるペナルティの具体的な内容や対策について解説します。申告前にしっかりポイントをおさえておきましょう。

仮想通貨の税務調査で何がチェックされる?

仮想通貨における税務調査では、まず申告額と実態との間に大きなズレがないかを中心に確認します。主にチェックされるのは、次の3つです。

・損益計算が正確かどうか
・取引内容をすべて網羅できているか
・特殊な取引を妥当に処理できているか

それでは、ひとつずつ詳しく解説しましょう。

損益計算が正確かどうか

仮想通貨取引で得た所得は、個人の場合は原則として「雑所得」に区分されます。損益計算を正しく行うために、以下のポイントを確認しておくとよいでしょう。

課税タイミングが正しくまとめられているか

税務調査時には、「どのタイミングで、どれだけのコインを、いくらで取得または売却したのか」といった履歴を示す必要があります。

仮想通貨は取引量が多いほど計算が複雑になります。また、仮想通貨同士を交換する取引では、両者の時価情報を調べた上で損益を計算しなくてはいけません。Excelや手作業で計算している場合はミスも起こりやすくなるため、正しくまとめられているか確認してみましょう。

計算方法が統一され、申請した方法で計算されているか

仮想通貨の取得原価を計算する方法として、「移動平均法」と「総平均法」のどちらかを選びます。どちらを選んでもよいですが、選んだ方法を途中で変更したり、取引ごとに使い分けたりすることはできません。決めた方法で正しく計算しているかを確認しましょう。

取引内容をすべて網羅できているか

仮想通貨の税務調査では、計算の正確さ以外に、取引内容をすべて申告しているかどうかもチェックされます。投資家の中には国内外にまたがり複数の取引所を使い分けている人も少なくなく、申告漏れが起こりやすいからです。

もし国内外の複数取引所で取引している場合、すべての取引所の損益を合計する必要があります。たとえば、一部の取引所の分だけを申告し、その他の取引所分を申告し忘れていると、申告漏れとみなされる可能性が大きいでしょう。

また売買取引以外に、マイニングやステーキングなどで得た報酬なども、適切なタイミングで計上が必要な点に注意が必要です。

取引の申告漏れは、税金を低くするための悪質な行為とみなされる可能性があります。脱税と判断されれば大きなペナルティが生じる恐れがあるため、しっかりと事前に確認しましょう。

特殊な取引を妥当に処理できているか

仮想通貨で利益を得る方法には、DeFiやエアドロップのようにまだ法整備が十分に整っているとは言えないものも多く存在します。

DeFi:ブロックチェーン上でスマートコントラクトを活用し、金融機関を介さずに取引や資産運用ができる分散型金融の仕組みのこと。中央管理者が不要で、プログラムが自動で取引を処理するため、透明性が高い。利用者は仮想通貨を貸し出して利回りを得たり、取引を行ったりできるが、手数料や市場の変動リスクも伴う。

・エアドロップ:仮想通貨の発行元の企業やプロジェクトによって、仮想通貨やトークンが無料でもらえるイベントのこと。

これらは税制上の取り扱いが定義されていないケースもあり、専門家でも意見が分かれやすいポイントです。税務調査では現行の法律を照らし合わせることによって、正しく申告されているかを判断します。

もし追徴課税になったら?仮想通貨の税金にまつわるペナルティ

税務調査により確定申告の間違いや申告漏れが見つかれば、追徴課税を課される場合があります。追徴課税とは、本来支払うべき税金に加えて延滞税や加算税などのペナルティを追加で納めるということです。

代表的な追徴課税の種類は、以下の5つです。

延滞税

延滞税は、納付期限までに税金を納めなかった場合に、その遅れた期間に応じて課される利息のような税金です。申告期間内に確定申告をしていても、納税額が不足しているとその不足分に対して延滞税が発生します。

延滞税の利率は滞納期間が長いほど負担が大きくなり、以下のように定められています。

参考:国税庁「延滞税の割合

期間 延滞税率 令和7年度適用率
納付期限から2ヶ月以内 7.3%もしくは(延滞税特例基準割合 + 1%)のいずれか低い方 2.4%
納付期限から3ヶ月以降 14.6%もしくは(延滞税特例基準割合 + 7.3%)のいずれか低い方 8.7%

過少申告加算税

過少申告加算税は、確定申告での申告額が本来よりも少なかった場合に課せられるペナルティです。課税される利率は修正申告の提出タイミングによって、以下に定められています。

参考:国税庁:No.2026 確定申告を間違えたとき

ケース 加算税率
期限内に申告書を提出し、税務調査の通知前に自ら申告・修正を行った場合 追徴課税なし
税務調査の通知後に修正申告を行った場合(令和5年分以降) ・50万円まで:10%
・50万円超の部分:15%
※追加納税額が「当初の申告納税額」または「50万円」のいずれかを上回る場合
税務調査で帳簿などの提示をしなかった場合や、帳簿の記載が本来の売上より少なかった場合 基本の加算税率 + 10%
売上金額の記載が本来の2分の1未満の場合 基本の加算税率 + 10%
売上金額の記載が本来の3分の2未満の場合 基本の加算税率 + 5%

無申告加算税(加算税)

無申告加算税(加算税)は、期限までに申告をせず、税務調査からの指摘後に申告した場合に課されるペナルティです。故意に申告せずに悪質とみなされた場合は、より高い税率が適用される恐れがあります。

ただし、税務署から指摘を受ける前に申し出たり、一定の条件を満たしていたりする場合は、加算税が軽減もしくは免除されます。無申告加算税の利率は次のとおりです。

参考:国税庁「No.2024 確定申告を忘れたとき」

ケース 加算税率
税務調査の通知前に自ら申告・修正を行った場合 基本税率 + 5%
税務調査の通知後に申告・修正を行った場合
(令和5年度分以降)
・50万円まで:10%
・50万円~300万円:15%
・300万円以上:20%
前年や前々年の所得税で、無申告課税や重加算額を課されている場合
(令和5年度分以降)
基本の加算税率 + 10%
税務調査で帳簿などの提示をしなかった場合や、帳簿の記載が本来の売上より少なかった場合 基本の加算税率 + 10%
売上金額の記載が本来の2分の1未満の場合 基本の加算税率 + 10%
売上金額の記載が本来の3分の2未満の場合 基本の加算税率 + 5%

不納付加算税

不納付加算額は、期限までに源泉徴収税が支払われなかった場合に課せられるペナルティです。支払い義務があるのは、従業員を雇う「源泉徴収義務者」であるため、会社員の場合は関係ありません。ただし、個人であっても従業員を雇い、毎月の給与を払っている場合は源泉徴収義務者として納付する必要があります。

重加算税

追徴課税のなかで、もっとも重いペナルティが重加算税です。偽装や隠蔽を意図的に行ったり、虚偽の書類を作成して大きな申告漏れを起こしたりした場合などに課されます。税率は以下のとおりです。

ケース 重加算税率
申告書を提出している場合 重加算税(過少申告):35%
申告書を提出していない場合 重加算税(無申告):40%

重加算税は、追加で納める税額に対し課される利率が35〜40%と非常に重い負担となるのが特徴です。重加算税の場合は、さらに延滞税も上乗せされる点にも注意しましょう。

実際に追徴課税されたこともある?国税庁はどこまでチェックしているのか

ここまで税務調査や追徴課税について解説しましたが、ピンと来ていない方もいるのではないでしょうか。しかし実際の税務調査では、想像以上に細かい部分までチェックされますし、個人の投資家にとっても無関係ではありません。

たとえば、国税庁が2023年11月29日に公表した「令和5事務年度 所得税及び消費税等調査等の状況」によると、仮想通貨等取引を行っている個人に対する調査の1件あたりの追徴税額は662万円で、所得税の実地調査全体と比較すると2.4倍もの高額になっているそうです。

さらに、調査対象となったケースのうち、約92%で何らかの申告漏れが発覚し、申告漏れ所得金額は1件あたり2,356万円と報告されています。

もちろん、すべての方が多額の取引をしているわけではありません。ですが、実際の事例をみると「仮想通貨での所得を申告しなくても大丈夫」「自分は調査対象にならないだろう」と軽く考えることがいかに危険なのか分かります。少しの計算ミスや申告忘れで思いもよらないペナルティを課されないために、普段から正確な損益計算を意識しリスクを避けることが必要です。

まとめ:ペナルティを受けないためにできる対策は?

仮想通貨の税務調査は年々厳しくなっているため、損益計算のミスをなくし、正しく納税する必要性がますます高まっていると言えます。追徴課税のペナルティを受けないために、投資家個人ができる対策を以下にまとめました。

Gtaxのような仮想通貨の損益計算ツールを使って正確に計算する

仮想通貨の取引履歴をExcelなどで手計算、手入力をしていると、どうしてもヒューマンエラーが発生しがちです。そのため、Gtaxのような専用の計算ツールを利用し、自動で取得原価や利益額を算出することをおすすめします。計算ツールに慣れてしまえば手間が大幅に減り、正確性も高まります。

②余裕を持って確定申告を行う

仮想通貨取引を一年間通して行っているとデータ量が膨大になるため、データの整理や計算があまりに直前になると、ミスを見落とすリスクが高まります。日頃から取引が終わったタイミングで履歴を記録するようにしましょう。これを習慣として身に付けておくと、申告時期の負担を大幅に減らせます。

③所得をきちんと把握し、納税分のお金を残しておく

仮想通貨は値動きが大きいため、利益が出たときに全額再投資してしまうと、納税する現金が手元に残らなくなる恐れがあります。税金が支払えず延滞税が発生する事態は避けなくてはなりません。利益が出たら、ある程度は納税用に現金を残しておくようにしてください。

④納税するお金が無いときでも先に申請手続きを行う

どうしても納税額が用意できない場合、先に税務署に相談すれば「換価の猶予」や「納税の猶予」といった制度が利用できることもあります。何もせず滞納してしまうとペナルティが重くなる一方ですが、きちんと手続きを踏めば支払いを分割したり、売却せずに資金を工面できたりする可能性があるため、ひとりで抱えずに早めに相談することが大切です。

また、税務調査で申告漏れや計算ミスが見つかれば、延滞税や加算税といったペナルティが課され、多くの追徴課税を支払う恐れがあります。納税額が上乗せされるよりも、早めに正しい申告・納税を行うほうがはるかにリスクは低く、精神的にも楽です。

「自分は大丈夫!」と油断せず、計算ツールの活用や専門家への相談などを行い、準備万端で確定申告に臨みましょう。

寄稿者:藤村 大生

公認会計士・税理士

株式会社Aerial partners ビジネス開発部長

監査法人でデューデリジェンス、原価計算導入コンサルなどの業務を中心に従事。 また、証券会社の監査チームの主査として、分別管理に関する検証業務も行う。暗号資産事業者に対する経理支援を行っており、暗号資産会計・税務の知見に明るい。

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