DCGが配当の停止
暗号資産(仮想通貨)コングロマリット企業デジタルカレンシーグループ(DCG)が株主に対して、株式の配当を一時停止する旨を通達したことが17日に明らかになった。
DCG子会社である融資企業ジェネシス・グローバル・キャピタルが3,880億円(30億ドル)超の債務を抱える中、DCGは投資ポートフォリオの一部売却を検討していると報じられたばかり。
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DCG子会社である米仮想通貨メディアCoinDeskによると、配当金の支払い停止は流動性確保に向けた手段として決定された。株主宛てレターでDCGは以下のように述べている。
現在の市場環境に対応するため、DCGは営業費用の削減と流動性の確保によりバランスシートの強化に注力してきた。そのため、DCGの四半期配当の分配を追って通知があるまで停止することを決定した。
DCGとは
DCGは6つの子会社を持ち、200以上のブロックチェーン関連スタートアップと50以上の仮想通貨ファンド、トークン、プロジェクトに投資している。主な子会社には、投資会社Grayscale Investments、米最大手ビットコインマイニング企業Foundry、破綻危機にあるジェネシス・グローバル・キャピタル、暗号資産メディアCoinDeskなどがある。
DCGの企業評価額は22年初頭に完了した資金調達で約1.3兆円(100億ドル)に達し、当時の年間収益は1,300億円(10億ドル)に上った。特にGrayscale Investmentの投資信託「グレースケール・ビットコイン・トラスト(GBTC)」は、2021年の強気相場では通期で800億円(6億1500万ドル)の手数料収益を上げた稼ぎ頭だ。
しかし、ビットコイン(BTC)価格は過去稀に見る弱気相場に突入した過去1年間で前年比63%下落し、GBTCの運用資産(AUM)は2021年の400億ドル超から123億ドルに減少、管理手数料収益(年2%)も約425億円(3億ドル)に減少したと試算される。
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22年に負債が拡大
2022年5月に発生したテラ(LUNA)ショックや11月のFTXショックなど、仮想通貨市場で相次ぐデレバレッジ(過剰債務の削減)イベントにより、DCGも多大な影響を被っている。
例えばテラ(LUNA)への投機で破綻したシンガポールのヘッジファンドThree Arrows Capital(3AC)に対し、ジェネシスは融資を行っていた。DCGはジェネシスの負債を引き受ける形で3ACに対して約1400億円(11億ドル)の債権を有している。
ジェネシス・キャピタルは22年11月にFTX破綻の影響で流動性危機に陥り、顧客資金の出金と新規融資を停止。FTXアカウントに約220億円(1億7,500万ドル)拘束された。
この影響でジェネシスと共同で提供してきた利回りサービス「ジェミナイEarn」も停止。米仮想通貨取引所ジェミナイは、DCGに対してユーザー資金総額1,160億円(9億ドル)の返還を求めている。
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今後の注目点
DCGのシルバートCEOは昨年11月末、「ジェネシスからの融資を含めたDCGの負債総額約2,700億円(20億ドル)のうち11億ドルが3ACの債権であり、差し当たっての負債は約450億円(3億5,000万ドル)の信用枠だけ」と述べていた。
しかし、同年12月以降にDCGの債務としてジェミナイの顧客資産の問題が顕在化。リサーチ企業Arcaneは、ジェネシスの緊急流動性を確保するためにDCGがGBTCを含む保有資産を一部売却すれば、市場に影響を及ぼすことになると警告した。
Financial Timesによると、DCGの投資先ポートフォリオの価値は約640億円(5億ドル)とされ、流動性も低い。
Investors should pay attention to the ongoing financial distress related to Digital Currency Group (DCG) as the outcome could severely impact crypto markets.
— Arcane Research (@ArcaneResearch) January 4, 2023
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SEC(米証券取引委員会)提出文書によると、DCGはGBTCの最大保有者である。DCGのバリー・シルバートCEOは1月10日、22年中にビットコインを担保にジェネシスとのグループ内融資を使って自社株買いと仮想通貨投資や公開市場でのGBTC購入を行ったこと、融資の満期が23年5月であると公表した。
GBTCは証券口座から投資できる利点から全体として63万BTCもの準備金に基づいて発行されている。強気相場でGBTCは原資産(BTC)より高い価格帯(プレミアム)で取引されたが、執筆時点でGBTCは原資産価値を36%下回る価格で取引されている。
なお、米大手仮想通貨投資企業Galaxy Digitalを率いるマイク・ノボグラッツ氏は1月10日、「23年第1四半期にはジェミナイとジェネシスの問題がまだ残されているが、市場はクリーンな状態に浄化されたため、これ以上連鎖的な資産売却は起こりにくい」という旨のコメントを寄せている。
"The outlook for #crypto is not horrible but it's not great. We've got regulatory headwinds we didn't have before. People are going to cut costs and survive this transition period," says @novogratz. "Crypto is not going away. It's a pretty clean market right now." pic.twitter.com/k57ITlRFOV
— Squawk Box (@SquawkCNBC) January 10, 2023
仮想通貨取引所BitMEXの創設者アーサー・ヘイズ氏は、過去数ヶ月に仮想通貨市場でデレバレッジが進行したことで、債務の強制清算は大方完了したとの見方を示していた。
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