Secured Finance(セキュアード・ファイナンス)は、暗号資産をあらかじめ決まった金利と期間で貸し借りできる固定金利モデルのプロジェクトです。
11月10日から日本円建ての新しい市場「JPYCマーケット」が稼働し、JPYCを利用した運用が可能になりました。金利と満期が事前に決まっているため、リターンを予測しやすく、資金計画が立てやすい点が魅力です。
本記事では、Secured Financeの仕組みから、JPYCを貸す・借りる方法、そして利用時のリスクまでわかりやすく解説します。
Secured Financeとは?
Secured Financeは、ブロックチェーン上で暗号資産を固定金利・満期付きで取引できる分散型金融(DeFi)プロジェクトです。
外資系大手金融機関で金利デリバティブ・ストラクチャリング業務に従事していた菊池マサカズ氏によって創業されました。
従来のDeFiレンディングは、利用状況に応じて金利が上下する「変動金利(APR)」が一般的で、将来の利回りが読みづらいという課題がありました。
これに対し、Secured Financeはゼロクーポン債の仕組みを応用した固定金利モデルを採用し、「満期にいくら戻るか」を最初に把握できる運用を可能にしています。
※ゼロクーポン債とは、割引価格で購入し、満期に額面100を受け取ることで利回りが確定する債券です。
関連:Secured Finance CEOが語るJPYC固定金利レンディングの挑戦|独占インタビュー
JPYCマーケット
2025年11月、日本円ステーブルコインJPYC(1 JPYC=1円)と連携した固定金利市場がスタート。これにより、これまで海外ステーブルコイン中心だったDeFiに「日本円で参加する」選択肢が生まれました。
Secured FinanceのJPYCマーケットでは、主に2つの使い方ができます。
① JPYCを貸して利回りを得る(固定金利運用)
JPYCを貸し出すと、最初に決まった金利(固定金利)が適用されます。たとえば「3か月満期・年利3%」のように条件が明示されるため、満期時点でいくら増えるかを最初から把握できます。価格変動が苦手な人や、為替リスクなしで運用したい人に向いています。
② 暗号資産を担保にJPYCを借りる
ETHやWBTCを担保にJPYCを借りることも可能です。借入金利も固定のため、借入額と返済額が最初から明確。資産を売らずに円建ての流動性を確保できます。
JPYCの運用方法
ここから先は、Secured FinanceでJPYCを「貸す」「借りる」方法を、画面に沿って詳しく説明します。まずは、利用前に必要な事前準備から確認していきましょう。
事前に準備すること
Secured FinanceでJPYCを運用するには、以下の準備が必要です。
1. メタマスクウォレットと対応ネットワークを確認する
Secured Financeを利用するには、Web3ウォレットが必要です。まだメタマスク(MetaMask)を持っていない方は、「メタマスクの使い方」を参考に用意してください。
Secured Financeはイーサリアム( ETH)をメインに動作するため、メタマスクの画面上部のネットワークを「Ethereum Mainnet」に設定します。

出典:メタマスク
また、資金の預け入れや取引の際にはイーサリアムの ガス代が必要になります。事前にETHをウォレットに用意しておきましょう。
イーサリアムを取得したい方に
+解説記事
2. ウォレットを接続する

出典:Secured Finance
1. Secured Financeのアプリ(https://app.secured.finance/)を開き、右上の「Connect Wallet」をクリック
2. 「メタマスク」を選択し、メタマスク側で接続を承認してください。接続が完了すると、画面右上に自身のアドレスが表示されます。
3. JPYCの入手方法
ウォレットにJPYCを用意します。主な入手方法は以下の通りです。
- JPYC EXで発行
- Uniswapなどで他の資産とスワップ
JPYCの具体的な購入手順については JPYCの買い方・使い方まとめ を参考にしてください。
4. 担保資産の準備(借りる場合)
JPYCを借りる場合は、担保としてETHまたはWBTCをウォレットに用意しておきます。貸し出しのみの場合は不要です。
ここまで準備ができれば、実際の貸し出し・借り入れの操作に進むことができます。
Lend
JPYCを貸す(固定金利レンディング)
Secured FinanceのJPYCマーケットでは、JPYCを一定期間預けることで、あらかじめ決まった金利(固定金利)で運用できます。
一般的なDeFiのように金利が変動し続ける仕組みではなく、伝統的な債券に近い「ゼロクーポン債方式」が採用されているため、将来いくら戻ってくるかを最初に把握できる点が特徴です。
1.満期(Maturity)を選ぶ
JPYCを貸し出すときは、まず どの満期の商品を使うか を選びます。

出典:Secured Finance
画面左上のプルダウン(例:JPYC-DEC2025)をクリックすると、満期ごとの商品が表示されます。各商品には価格(Mark Price)、年利(APR)、満期までの日数が表示されます。
たとえば、
- JPYC-DEC2025:年利 約2.7%(満期38日)
- JPYC-MAR2026:年利 約3.4%(満期129日)

出典:Secured Finance
自分がどれくらいの期間運用したいかに合わせて、希望の満期を選びます(ここでは「JPYC-DEC2025」を選択)。
2.画面の見方(Yield CurveとOrder Book)

出典:Secured Finance
左側の①「Yield Curve(利回りカーブ)」では、現在の利回りが示されています。この例では、現在のAPR(年利)は約2.71%になっています。
中央の②「Order Book(注文板)」には、レンディング注文(貸したい人)の価格とAPRが並んでいます。
価格(Price)が低いほど実質の利回りが高くなり、価格が高いほど利回りは低くなります。これは満期時に100で償還されるゼロクーポン債の仕組みで、より安く買えるほど利回りが大きくなるためです。たとえば、
- Price 99.72 → APR 2.71%
- Price 99.40 → APR 5.83%
といった形で、Priceによって利回りが変わります。
3.実際にJPYCを貸す手順

出典:Secured Finance
右側の③「Lend/Buy」タブから、貸し出し条件を指定します。
1. 注文タイプを選択します。
貸し出す価格(年利)を自分で指定する場合は「Limit」、現在の市場で取引されている価格で貸し出したい場合は「Market」を選びます。Limitの場合は、Order Bookで現在取引されている価格を参考に入力しましょう。
2.「Size」で貸したいJPYC数量を入力します。
3. 入力すると、下部に以下の情報が自動で表示されます。
- Est. Price(推定価格):取引される価格
- Est. APR(推定年利):年利換算の利回り
- Future Value(満期時の受取額):取引が成立した場合、満期時にいくら受け取れるか
4. 条件に問題がなければ「Deposit」を押し、JPYCをデポジットしてください。デポジット後「Place Order」をタップし、注文を完了させてください。

出典:Secured Finance
注文が約定すると、貸出ポジションが成立し、満期時に元本と利回りが一括返還されます(途中でポジションを売却することも可能。詳しくはこちら)。約定済みは「Active Positions」、約定待ちは「Open Orders」に表示されます。
イーサリアムを取得したい方に
Borrow
JPYCを借りる(担保を入れてボロー)
Secured Financeでは、WBTCやETHなどの暗号資産を担保として預けることで、JPYCを固定金利で借りることができます。借入金利と満期が最初から確定しているため、「いつ・いくら返すのか」が明確で、資金管理がしやすい点が特徴です。

出典:Secured Finance
借入の手順
1. Borrow/Sell タブを開く
画面右側のタブを「Borrow/Sell」に切り替えます。ここでJPYCを借りるための条件を入力します。
・Price(借入価格)
・Size(借りたいJPYC量)
を設定すると、返済金額の目安(Est. APR / Future Value)が自動計算されます。
2. 下部に表示される推定金利などを確認し、問題なければ「Deposit」をクリックします。
3.「Deposit(借入実行)」をクリックすると、担保にする通貨を選択するポップアップが表示されます。

出典:Secured Finance
ここで、担保として預けたい通貨(例:ETH、WBTC)を選びます。
- 担保にしたい通貨をクリック
- 必要量を確認(LTVに基づき自動計算)
- 承認(Approve)→ Confirm(確定)
という流れで担保がロックされ、その後 JPYC がウォレットに入ります。
借りた後どうなる?
- JPYCはそのまますぐに利用可能
- 担保は満期までロック
- 満期日に「元本 + 金利」を返済すると、担保が返却
金利は固定なので、途中で大きく変動して返済額が増える心配はありません。
具体例:
たとえば、Price 99.75(APR 3.28%)で 10,000 JPYC を借りるとします。
- 借入金利:3.28%(固定)
- 満期:2025年12月26日
この場合、満期時の返済額は 10,025 JPYC となります。
⚠️ 清算リスクに注意
Secured Financeは過剰担保の仕組みを採用しています。担保として預けた通貨(ETH、WBTCなど)の価値が下落し、借入額に対して設定された閾値(LTV:Loan-to-Value比率)を超えると、担保が自動的に清算されてしまいます。
特にボラティリティの高い暗号資産を担保にする場合は、価格変動により清算されるリスクがあるため、以下の点に注意が必要です:
- 借入額を担保価値に対して余裕を持った水準に抑える
- 担保比率(LTV)を定期的に確認する
- 市場の急変時には追加担保の入金も検討する
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Portfolioの管理(資産管理・ポジションの閉じ方)
Secured Finance で貸し出しや借り入れを行うと、すべてのポジションは「Portfolio」タブにまとめて表示されます。
ここでは、以下の情報を確認できます:
- 自分の保有資産状況
- 担保の利用率(どれくらい借入に使っているか)
- 清算(Liquidation)のリスク
- 進行中の契約(貸出・借入)の残り期間
Portfolioタブの見方
Portfolio画面には次の情報が表示されます。

出典:Secured Finance
①Net Asset Value(純資産)
ユーザーの全ポジションの合計価値が表示されます。
- 貸している場合 → 貸出ポジションの現在価値
- 借りている場合 → 担保・負債を差し引いた純資産
ウォレットを接続すると数値が反映されます。
②Collateral Utilization(担保利用率)
借入時のみ表示されます。現在預けている担保が、どれくらい借入に使われているかを示します。
- 低い → 安全
- 高い → 清算の可能性が高まる
LTV(Loan to Value)に近い概念で、リスク管理の中心となる項目です。
③Liquidation Risk(清算リスク)
担保が大きく値下がりした場合、どれくらい清算が近いかが示されます。
- Low(低い):安全ライン
- Medium〜High:追加担保の検討が必要
担保をETH/WBTCで持っている場合、市場価格の急変動に注意が必要です。
④Active Contracts(進行中の契約)
現在貸している・借りているポジションが一覧で表示されます。
- 満期日(Maturity)
- 利回り(APR)
- 現在価値(Present Value)
- 満期に受け取る額(Future Value)
などがここで確認できます。
ポジションのクローズ方法(期日前に閉じる)
Secured Finance では、満期まで待つだけでなく、途中でポジションをクローズ(売却・買戻し)することも可能です。

出典:Secured Finance
貸出ポジションを途中でクローズする場合
1. Portfolio → Active Positionsを開く
2. 閉じたいポジションを選ぶ
3.「Close」ボタンを押す
市場の注文板(Order Book)に対して売却され、現在の価格でポジション解消されます。
※ 満期まで待つ場合より受け取り額が減ることがあります。
借入ポジションを途中で返済する場合
1. Portfolio → Active Positionを開く
2. 借入ポジションを選ぶ
3. 「Close」をクリック
4. 必要なJPYCを返済すると、担保が自動的に返却
こちらも途中返済できるため、市場環境の変化に応じて柔軟に管理できます。
ポイントプログラムについて
Secured Finance には、取引やデポジットに応じてポイントが貯まる「Points Program」が用意されています。
ポイントは、将来の報酬プログラム(例:エコシステム内での特典、ガバナンスや優先権、インセンティブ配布など)に利用される可能性があります。
ポイントの詳細はこちらをご確認ください。
ポイント画面の見方
画面右上の「Points」をクリックすると、ポイント専用ページに移動します。

出典:Secured Finance
最初に「Connect Wallet」からウォレットを接続すると、ユーザーの保有ポイントや参加中のクエストが表示されるようになります。
Active Quests(ポイントを獲得する方法)
画面中央のActive Questsに、ポイントを獲得できるアクションが並びます。
例えば:
Just Deposits:
担保ボールトに資産を預けると、預けた1ドルあたり1ポイント/日が自動で付与されます。もっともシンプルで、手間のかからないポイント獲得方法です。

出典:Secured Finance
このように、提供されているクエストに参加することで、ポイントが毎日積み上がっていきます。
Leaderboard(ランキング)
画面右側には、ポイントのランキング(Leaderboard)が表示されます。
上位ユーザーのウォレットアドレス、現在のポイント数、自分がウォレット接続すると自身の順位も表示され、全体の中でどの程度ポイントを獲得できているかを確認できます。
Secured Financeで他にできること
Secured Finance は JPYC 以外にも、さまざまなアセットやネットワークで固定金利の運用ができる総合プラットフォームです。ここでは、主な機能だけをまとめて紹介します。
USDC・ETH・WBTC など、他のアセットでも固定金利運用が可能
JPYCと同じように、USDC / ETH / WBTC など主要アセットでも満期×固定金利マーケットが利用できます。複数の満期がありポートフォリオを組むこともできます。
さまざまなネットワークに対応
イーサリアムだけでなく、ポリゴン・ファイルコイン(FVM)など複数チェーンで利用可能。普段使っているチェーンの資産でそのまま運用できます。
ファイルコインチェーンでは「USDFC」を発行して運用できる
FILを担保にして、USDFC(ファイルコイン担保ステーブルコイン)をミント(発行)可能。発行したUSDFCをそのままSecured Financeの固定金利で運用できるため、FILホルダー向けネイティブDeFiとして注目されています。
JPYCを軸にした今後の開発も進行中
日本円建ての金利市場をさらに拡大するため、今後は次のような機能追加やプロダクト展開が予定されています。円建てでの金利運用が、より便利かつ多様になる見込みです。
- JPYCの満期ラインナップ拡充
- JPYC担保の借入機能
- 日本向けオンチェーン債券マーケットの強化
その他の機能
- Orderbook型の利回り市場の強化
- 満期前の売買の流動性向上(セカンダリー機能)
- 高度なポートフォリオ管理ツールの実装予定
Secured Finance は「債券 × DeFi」を組み合わせた新しい金利マーケットとして、今後も機能が拡大していくプロジェクトです。
関連:DeFi開発企業Secured Finance、ステーブルコイン「JPYC」の新プロダクト群を発表
リスクと注意点
Secured Finance は透明性が高い仕組みですが、DeFiである以上いくつかのリスクがあります。利用前に次の点を押さえておきましょう。
金利・流動性リスク:
固定金利でも、市場価格(=利回り)は需要で変わります。
満期前に売却したい場合、買い手が少なければ希望価格でクローズできない可能性があります。
清算リスク(借入時):
ETH や WBTC を担保に借りる場合、価格が下落すると担保が不足し、強制清算が発生することがあります。余裕を持った担保設定が必要です。
スマートコントラクトリスク:
プロトコルのバグや予期せぬ挙動が起きる可能性はゼロではありません。DeFi に共通する技術リスクとして理解しておきましょう。
ブリッジ・ネットワークリスク:
複数チェーンを使う場合、ネットワークの混雑やブリッジ障害が発生する可能性があります。特にブリッジは攻撃対象になりやすい点に注意が必要です。
ステーブルコインのリスク:
JPYC・USDC などのステーブルコインも、発行体の管理状況によって価格乖離が起きる可能性があります。大きな金額を預ける前に仕組みを理解しておきましょう。
これらのリスクを理解したうえで活用すれば、Secured Finance は、従来は個人がアクセスしづらかった債券型の安定した金利運用を、少額から利用できる新しい選択肢となります。興味がある方は、まずは小さな金額で触れながら仕組みを理解していくことをおすすめします。
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