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GateとBackpackが語る、日本市場に賭ける理由とは|WebX2026

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

WebX2026 セッションレポート

世界が賭ける日本の「信頼」 Gate×Backpack登壇レポート

Nicolas Jin × Can Sun

Gate JapanとBackpackという2つのグローバル取引所は、なぜあえて規制が厳しい日本に本社機能ごと移したのか。WebX2026で行われたセッション「グローバル取引所と地域の信頼:なぜ世界のリーダーたちは日本に賭けるのか」では、両社のトップが金商法への移行、機関投資家需要、そして”信頼”という言葉を軸に本音を語った。

Nicolas Jin

Nicolas Jin

Gate Japan
CEO

Web3・IT・金融サービス業界で10年以上の経験を持つ。大手暗号資産取引所でマーケティング・事業開発・コンプライアンス連携を担当し、SBIグループなど伝統的金融業界での経験も持つ。一橋大学でMBAを取得し、現在はGate JapanのCEOを務める。

Can Sun

Can Sun

Backpack
Co-Founder

Backpack Exchangeの共同創業者。FTXインターナショナルのゼネラルカウンセルとして非米国管轄の法務・規制戦略を統括した経験を持つ。以前はFenwick & West法律事務所でブロックチェーン実務グループの共同代表を務めた。イェール大学ロースクールでJuris Doctor、プリンストン大学で電気工学のPh.D.を取得。

島津そら

島津 そら

モデレーター
CoinPost株式会社 国際BD・マーケティング

CoinPost株式会社で国際BD・マーケティングを担当。WebX2026本セッションのモデレーターを務めた。

日本移転という逆張りの決断

モデレーターを務めたCoinPostの島津そら氏は、まず両登壇者に「どのようにして日本に来たのか、日本にはどれくらいいるのか」と背景を尋ねた。
Nicolas Jin
私はもともと中国生まれだが、日本に来て15年になる。長く伝統的金融の世界で働き、グローバルな取引所、規制された取引所にも身を置いてきた。現在はGate Japanの代表取締役社長を務めている。
Can Sun
Backpackを立ち上げたのは2023年の春、アメリカでのことだ。その後、日本に拠点を移すことを決め、会社全体を丸ごと移転した。共同創業者も全員、日本に移り住んでいる。もう3年ほどになるが、正直まだ日本語はほとんど話せない。それでも、この国が本当に気に入っている。
島津氏は続けて、セッションのテーマ「グローバル取引所と地域の信頼:なぜ世界のリーダーたちは日本に賭けるのか」を紹介。世界で最も厳格に規制された市場の一つとされる日本において、多くの取引所がむしろ距離を置くのではなく専用ライセンスの取得に動いている点を指摘し、「日本に専用ライセンスを取得して拠点を構える価値があるのはなぜか」と最初の質問を投げかけた。
Can Sun
3年前、私たちは事業拠点と本社をまるごと日本に移した。FTXが崩壊した直後というタイミングで、KrakenやCoinbaseなど多くのプレイヤーが日本から撤退していく中での、いわば逆張りの動きだった。しかし私たちは、日本に大きなチャンスがあると確信していた。振り返れば、私が初めて日本に来た2017年12月、日本は暗号資産(仮想通貨)の世界の中心地だった。世界の仮想通貨取引量の半分以上が日本で行われ、流動性の多くはJPYペアに集まっていた。デジタルネイティブで仮想通貨に精通したユーザー層も厚い。その後の10年で市場シェアが下がった理由は一つではないが、それでも日本の機会は非常に大きいと考えている。世界有数のGDPを持つ先進経済であり、より安全で規制された形でアクセスしたいと望むユーザーが数多く存在する。だからこそ、事業全体をここに移す確信が持てた。
島津氏は、Gate Japanが東京で新オフィスを改装・開設したことに触れ、詳細を尋ねた。
Nicolas Jin
東京駅の近くに新しいオフィスを構えた。改装が完了したのは2ヶ月前で、先月そこで最初のイベントを開催したところだ。「なぜ日本か」と聞かれることが多いが、本当に問うべきなのは「10年後、最も優れた市場はどこか」という問いだと思う。次の四半期や半年の話ではなく、5年、8年、10年先を見据えた話だ。日本のユーザーは新興市場のそれよりも洗練され、成熟している。実際、日本は世界で4番目に富裕層が多い国でもある。機関投資家についても、非常に深い資本市場と成熟した金融システムがこの国にはある。企業は長期的な所有権を重視しており、市場同士が協力し合っている感覚にも安心感がある。私たちは日本を10年単位の戦略地域と位置づけており、この国で信頼される企業の一つになることを目指している。

資金決済法から金商法への移行

島津氏は、日本が暗号資産の規制枠組みを資金決済法から金融商品取引法へ移行させている過程にあることを取り上げ、この変化を各社がどう見ているかを尋ねた。
Nicolas Jin
私たちはこの変化に強い注意を払っている。日本のすべての取引所が同じように注目しているはずだ。金融庁もこの点に取り組んでいる。新しい枠組みへの対応を進める取引所にとって、これは業界全体を健全にする歓迎すべき変化だと考えている。より良い枠組みがあれば利用者はより安心できる。私たち自身も、法務・コンプライアンス体制の強化に取り組んでおり、AMLコンプライアンス、リスク管理、サイバーセキュリティといった役割の人材採用にも力を入れている。もう一つ重視しているのは、規制の方向性が安定し、予測可能であるかどうかだ。方向性が安定していれば、グローバル企業にとって市場参入がしやすくなる。そして特に税制改革以降、法的枠組みの変化とともに、機関投資家も個人投資家も市場への投資をより容易に感じられるようになっている。
Can Sun
ニコラスの話に強く同意したい。ここにいる暗号資産業界の人間は皆、長期的な視点で取り組んでいると思う。10年後、この業界の成功とは何かと問われれば、それは単なる決済手段ではなく、投資の手段になっていることだと思う。法律もその方向に進んでいる。ビットコインが最初にリリースされたのは17、18年前のことだ。当初、人々はそれを主に決済手段として見ており、日本を含む多くの国の初期の法律もその考え方を反映していた。しかし今、多くの政府が暗号資産を投資商品・金融商品として認識し始めている。米国のCLARITY法案は、州ごとに異なる規制を連邦レベルでより包括的な金融規制体制に統合しようとしている。欧州のMiCAも、数年前に法典化されたMiFIDの要素を取り入れ、仮想通貨製品を規制された金融商品として扱っている。日本もこれと同じ方向に進んでいると思う。私たちもGateと同様、世界の多くの地域でライセンスを取得できている。この変化は、決済面でのAML重視に加え、市場の健全性や市場操作、インサイダー取引の有無といった、より深い保護をユーザーにもたらす。金融商品に適用される法律や規制が仮想通貨にも及ぶことは、最終的に業界全体、そして利用者にとってもより良いことだと考えている。

機関投資家需要とRWAトークン化への期待

島津氏は、日本市場のユーザー・機関投資家からの需要が他のアジア市場と比べてどう異なるか、その需要にどう向き合っているかを尋ねた。
Can Sun
念のため申し添えると、私たちはまだ日本でのライセンスを取得していないので、話す内容の多くは国際的な経験に基づくものだ。この1年ほどで感じている大きな変化は、機関投資家の関心が著しく高まっていることだ。個人投資家の関心は、昨年10月の大きな下落以降、やや落ち着いている。しかし法律の明確化が進むにつれて状況は変わってきている。欧州でMiCAが施行され、米国でもCLARITY法案の行方が注目されている。台湾も先日、法律を正式に制定した。仮想通貨やステーブルコインで取引したいという需要が非常に大きいからだ。個人投資家によるミームコインやアルトコインの取引はやや減っているが、規制の明確化とともに機関投資家の参入が増えている。日本でも同様の動きが少しずつ見られていると感じる。資金決済法から金商法への移行に伴い、機関投資家の関心は仮想通貨そのものだけでなく、実物資産のトークン化にも向いている。株式や債券、証券、ETFのトークン化に対する機関投資家の関心は著しく高まっている。ドルとステーブルコインに起きた進化が、実世界資産にも起こると多くの人が考えているようだ。基本原理から言えば、株式を週30数時間しか取引できず、24時間365日取引できない理由はない。私たちBackpackもこの点に多く取り組んでいる。
Nicolas Jin
他の市場では、競合がRWAやTradFiの新サービスを出せば2週間で追随しなければ一流でいられない、というスピード競争を求められることが多い。しかし日本はそうではない。ルールが違う。日本で問われるのは、どれだけ信頼できるかということだ。日本のユーザーは短期的な話題性だけを追いかけるのではなく、セキュリティと安定性を重視する。カスタマーサポートが日本語に対応しているか、連絡が取りやすいかといった点も大切にされている。すべてが安全で規制されていることも重要で、たとえ小さな翻訳ミスであっても、日本では大きな問題になり、ユーザーの信頼を失うことにつながる。細かいことのように見えても、日本ではそれが非常に重要だ。だからこそ、他の市場とは違う慎重さで運営する必要がある。

信頼を土台にした3〜5年後の成功像

島津氏は、自身もアジア各地のカンファレンスに足を運ぶ中で日本が長期的な視点を好む傾向を感じているとしたうえで、「3〜5年先を見据えたとき、日本市場での成功とはどのようなものか」と両者に尋ねた。
Nicolas Jin
難しい問いだが、答えるなら、市場シェアの大きさだけで成功を定義したくないということだ。私たちは10年という期間で、日本で信頼される取引所の一つになることを目指している。それは、機関投資家、個人投資家、そしてインフラへのアクセスを得て、ここでどのようにビジネスを広げられるかということでもある。そして、簡単には代替できないような強固な関係を築くこと。そこに私たちは特に力を注いでいく。
Can Sun
ニコラスの言葉に強く共感する。金融機関として私たちが提供している最も重要なものは、実は「信頼」そのものだと思う。ライセンスの取得であれ、ユーザーが資金を預ける相手として選ぶことであれ、最も大事なのは信頼だ。Backpackが強く信じているのは、暗号資産の革新的な約束の一つが、信頼を必要としない取引を可能にすることだという点だ。今の金融機関は、T+1やT+2の決済など、前世紀に作られた仕組みを今も抱えている。取引時間の制限や24時間取引ができないことも課題だ。私たちにとって重要なイノベーションの一つは、仮想通貨とブロックチェーンを使ってこうした問題を実際に解決できることだ。ステーブルコインの世界ではすでにそれが実現しており、今では24時間365日、即時決済で送金・取引ができる。同じ革新が金融・市場インフラそのものにも当てはまると考えている。実物資産についても、トークン化された株式を24時間365日、世界中で取引できない理由は特にない。決済層やクリアリング層にも同じことが言える。3〜5年後の成功を考えるなら、まず、誰かに「どこで株を保有しているか」と聞かれたときに、その答えがすぐに返ってくる世界を見たい。それがBackpackであれば嬉しいが、それ以上に、金融インフラが根本から刷新され、ブロックチェーンが信頼を前提としないインフラ層として使われるようになること自体が成功だと思う。それは仲介者にまつわる多くの摩擦を解消することにもつながる。

なぜ日本に賭けるのか、業界へのメッセージ

島津氏は、業界全体、そして「なぜ日本に投資することを選んだのか」を一言でまとめるならどうなるかと尋ねた。
Nicolas Jin
私たちがこの市場を選んだのは、簡単だからではない。信頼できる市場だからだ。日本とともに成長していきたいと考えている。10年後、私たちは選ばれた企業の一つになっているはずだ。
Can Sun
理由は一つに絞るのが難しいほど多いが、イノベーションの普及理論で考えるとわかりやすいかもしれない。新しい技術には常に、初期採用者、ミッドカーブ層、そして遅滞者が存在する。日本の人々は多くの新技術において早い採用者であることが多い。しかし仮想通貨に関しては、その初期採用者と遅滞者の間に大きな隔たりがあると感じている。GDPや経済規模、市場の大きさとは別に、日本がWeb3において中長期的にもっと大きな役割を果たせる機会は大きいと思う。新しい技術の初期採用者として非常に強い層がこの国にはいるからだ。ここで何か面白いことを起こせるか、楽しみにしている。

伝統と革新のバランス、仮想通貨普及の現在地

最後に島津氏は、両者が繰り返し語ってきた「信頼」というテーマに触れつつ、日本が革新的で技術志向でありながらコミュニティには今も伝統的な側面が強く残っているとの印象を共有し、「日本の市場やコミュニティは、どうすればそのバランスを取り、さらに信頼を築いていけるか」と尋ねた。
Nicolas Jin
この問いには慎重に答えたい。日本のユーザーは非常に思慮深く、より保守的だと思う。成熟しているとも言え、短期的な話題性だけを追いかけるようなことはあまりない。それは非常に良いことで、私たちも物事を長期的に見ている。だからこそ、短期のビジネスだけを望む企業は、日本に来るべきではない。長期のビジネスを望む企業にとってこそ、ここはチャンスのある場所だ。振り返ると、日本の暗号資産市場は初期にはさらに高いシェアを持っていたが、その後いくつかのハッキング事件が起き、法律がより厳格になった。バランスを見つける必要がある。あまりに厳しくしすぎれば、手に鎖をはめるようなもので、イノベーションは生まれなくなってしまう。だから、新しいものを少しの間試させることも必要だ。一方で、規制の面では利用者保護に注意を払う必要がある。取引所としてAML・KYCを実施し、ユーザーの安全性、アクセスの安全性、情報の安全性を確保する。その土台の上で、どうイノベーションを実現するかを考えるべきだと思う。
Can Sun
ニコラスの意見に強く同意する。短期間で成果を求めるなら、日本は適した場所ではない。私たち自身、2023年の春に日本へ拠点を移して以来、今もライセンス取得の手続きを進めている最中で、すでに3年以上が経過している。心臓の弱い人向けではない、非常に包括的な審査プロセスがあり、事業を始めて最初の収益を得るまでにも時間がかかる。信頼は築くのに多くの時間を要するものだ。スピード優先で物事を壊しながら進めることもできるが、金融の世界には詐欺や不正が数多く存在し、市場の多くが国際的に操作されているのが実情だ。暗号資産市場全体は今、おそらく3兆ドル規模だが、これを数百兆ドル規模の株式市場と比べてみてほしい。そこまで飛躍するためには、ゆっくりとした信頼の構築が必要であり、それは実際に良いことだと思う。年金受給者がこれからの50年分の年金資金を、単なるポンプ・アンド・ダンプのような仕組みに投じてしまうようなことは望ましくない。ゆっくりとした進み方は、オンチェーン金融の性質そのもの、そして築かれている信頼の性質を反映していると思う。ただ、もう一つ信じているのは、物事は静かに背景で育ち、ある時に一気に表面化するということだ。かつて仮想通貨に反対していた人や、業界をよく知らなかった人たちが、今関心を持ち始めている。その転換点に近づいていると感じる。私がよく考えるのは、自分の祖母が仮想通貨を使うようになるかどうかということだ。これまでその地点には一度も近づいたことがなかったが、今は祖母が少しずつ聞いてくるようになった。

セッション総括

Can Sun氏は次の言葉でセッションを締めくくった。

「着実に、ゆっくりと進んでいけば、最終的にはそこに到達できると思う。」

島津氏は両登壇者への謝意を伝え、セッションを終えた。約30分の対談を通じて繰り返し語られたのは「信頼」という一語であり、規制対応も機関投資家開拓も、その一語に収斂していく構図が浮かんだセッションだった。

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