- STとステーブルコインを別チェーンで発行、DvPで接続
- 次段階はST担保の借入、商用化判断は2026年内
証券会社を介さない不動産STの決済
Progmatは31日、ケネディクス、KDX STパートナーズ、Datachainの3社と共同で、パブリックブロックチェーンとステーブルコインを使った不動産デジタル証券(セキュリティトークン、ST)の新しい取引スキームに取り組むと発表した。
商用化に向けた段階的な実証の第一段階として、STとステーブルコインをオンチェーンで同時に受け渡すDvP決済の検証を完了している。
不動産セキュリティトークン(ST)とは
不動産から生じる収益を受け取る権利を、ブロックチェーン上で発行・管理するデジタル証券。
- 小口化
大型の不動産でも権利を細かく分割して販売でき、投資家は少額から投資できる - 事務の効率化
権利の移転や分配金の支払いをブロックチェーン上で処理できる - 税制上の扱い
受益証券発行信託を用いる場合、個人投資家は分離課税や特定口座を利用できる
これまでの不動産STは、証券会社に口座を持つ個人投資家が売買する形が中心だった。今回検証したのは、発行体と投資家がそれぞれウォレットを持ち、STの受け渡しと代金の支払いを直接、同時に済ませる形だ。
DvP(Delivery versus Payment)と呼ばれる方式で、どちらか片方だけが実行され、もう一方が履行されない事故を防ぐ。仲介する証券会社を挟まないぶん、取引の手順も短くなる。

出典:公式発表
図の左側が今回完了した第一段階にあたる。発行体が原資産を裏付けにSTを発行し、投資家はステーブルコインで払込を行う。分配金や償還金もステーブルコインで戻る。なお今回の検証では、KDX STパートナーズがアセットマネージャーを務める検証用の仮想ファンドを発行体とし、ウォレットアプリの動作確認には検証用トークンを用いた。
右側は次の段階を検討しているもので、投資家が保有するSTを担保に、資金供給者からステーブルコインを借り入れる取引を想定する。
4社の役割と企業概要
- ケネディクス
1995年設立の不動産アセットマネジメント会社。同社によるとグループの受託資産残高(AUM)は2025年12月末時点で5兆4,043億円。今回の実証ではST投資家、すなわちステーブルコインの利用者側の役割を担った。 - KDX STパートナーズ
ケネディクスグループ。旧社名はビットリアルティで、不動産アセットマネジメント事業とオンライン不動産投資プラットフォーム「bitREALTY」を手掛ける。発行体となるファンドのアセットマネージャーを務め、商用化後は投資家向けウォレットアプリの提供を担う想定。 - Progmat
デジタルアセットの発行・管理基盤「Progmat」を提供。今回はパブリックブロックチェーン向けの標準スマートコントラクトを用意したほか、Datachainと共同で、チェーンをまたぐ決済の仕組みとウォレット機能を供給する。 - Datachain
2018年創業。ブロックチェーン間の相互運用性(インターオペラビリティ)技術を手掛け、Progmatの共同設立にも参画した。Progmatと共同で、チェーンをまたぐ決済の仕組みとウォレット機能を供給する。
アバランチ上で発行、チェーンをまたぐ決済
検証は事業法人など特定投資家向けの私募を想定して実施した。STはProgmatのデジタルアセット発行・管理基盤を介してアバランチのC-Chain(誰でも利用できる共用チェーン)上に発行し、金商法上の電子記録移転権利のうち開示規制などの扱いが異なる「適用除外電子記録移転権利」に該当する設計としている。
決済に使うステーブルコインは、三井住友フィナンシャルグループ(SMFG)が想定する信託型の規格を用い、アバランチL1上に発行した。円建てなど法定通貨の価値に連動し、額面同額での償還が約束されるものは、資金決済法上の電子決済手段にあたる。
関連記事: 3メガ銀、2026年度中に共同でステーブルコイン発行の方針 金融機関の連携拡大も視野=報道
国内の信託型ステーブルコインを巡っては、三菱UFJ・三井住友・みずほの3行が2026年度中の共同発行を目指す方針も伝えられている。信託銀行が発行受託者となる仕組みを想定する。
STとステーブルコインが別々のチェーン上にあるため、両者はクロスチェーンの同時決済ソリューションで接続する。投資家が両方を扱うウォレットアプリはプロトタイプを用意し、想定した一連のプロセスがすべて問題なく実行できたという。
アバランチ系のチェーンが使われる背景には、Progmatの基盤刷新があるとみられる。同社は7月13日、既存の全ST案件をアバランチL1へ移行し終えたと発表していた。対象は総額4,520億円超で、分散型台帳「Corda 5」からEVM互換環境へ切り替えたことにより、権利移転の処理速度は移行前比約3〜5倍になったとしている。
関連記事: プログマ、4520億円超のデジタル証券をアバランチL1に移行完了
Progmatが管理する全ST案件のアバランチL1への移行完了と、EVM互換環境での稼働開始を伝えている。基盤刷新の内容と処理速度の変化も扱う。
ST担保の借入を次段階で検証
次の段階では、投資家が保有する不動産STを担保に資金を借り入れるユースケースを検証する方向で検討している。海外では仮想通貨の分野で、スマートコントラクトを使った24時間365日の担保借入が先行してきた。その仕組みを国債や投資信託を含むRWA(実物資産)へ広げる動きも進む。
借入をファンド段階ではなく投資家段階で行えるようになれば、発行体側はフルエクイティ型(ファンドが借入を使わず、出資だけで資産を保有する形)や無期運用型(償還期限を設けずに運用を続ける形)など、裏付け資産の現物に近いSTを組成しやすくなる可能性がある。
対象資産も不動産に限らず、航空機や船舶といった動産への広がりを視野に入れる。4社は次段階を実施した場合、その結果も踏まえて商用化に向けた判断を2026年内に行う予定だ。



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