金融デジタル化と規制のあり方を討論
開催中のダボス会議で、「デジタル通貨のリセット」と題されたパネルディスカッションが開催された。イギリス中央銀行のイングランド銀行のAndrew Bailey総裁らが参加し、金融のデジタル化とそれに対する規制のあり方を議論した。
Bailey総裁は、決済インフラのイノベーションは今後も続き、デジタル通貨は速度やコストなど、金融システムにおける長年の課題を解決する役割を担っていると認める。しかし一方で、既存の仮想通貨は、通貨として使用するためには必要なガバナンスの問題を解決していないとして、次のように述べた。
私たちは「定着する」デジタル通貨の設計、ガバナンス、取り決めに到達しているだろうか? 正直、まだその地点に達していないだろう。
総裁は「既存の仮想通貨は、安定した価値により決済が適切に実行されるという保証を人々に十分に提供していない」と指摘。安定した価値により支払いを実行するためには、決済システムのイノベーションは法定通貨をベースとしたソリューションに向かっていくだろうと話した。
また、Bailey総裁は国際送金や決済コストなどの点でデジタル通貨が助けとなる可能性を指摘。世界のリーダー達が、決済に関する継続可能なソリューションとして、ステーブルコインや中央銀行デジタル通貨(CBDC)のメリットについて引き続き議論することは正しいと、続けている。
以前から総裁はCBDCを推進する姿勢を見せる一方で、ビットコインなど民間の仮想通貨については懐疑的な立場を取ってきた。
革新的技術をどのように規制するべきか
パネルで司会を務めたBTC Africa SAのElizabeth Rossiello CEOから、「仮想通貨のように革新的なものを、どのように規制するのか」と聞かれ、Bailey総裁は「規制は公共の利益がどこにあるのか定義することから始める必要がある」と回答。
さらにデジタル通貨における「公共の利益」とは「トークン価値の安定性」「金融犯罪対策」「ユーザーのプライバシーを確保することと、取引コストの削減というメリットのバランス」だという。
Rossiello氏は、現在のような技術革新の時代に「何が公共の利益かについては、人々の間で意見が分かれているのではないか」と疑問を提示したが、総裁は「何が公共の利益かについての意見は分裂していない可能性が高い」と主張した。
規制について、ニューヨーク連邦準備銀行の理事会メンバーであるGlenn H. Hutchins氏は「当局はこの新しい業界に合った一連の規制を作る必要がある」と発言。従来の規制モデルをそのまま、この新しい分野に当てはめることは適当ではないと指摘。
また犯罪との関連性についても、法定通貨は匿名で取引可能なため犯罪に使用されても追跡することは難しいが、ビットコインなどの仮想通貨は取引が記録され追跡可能であり、犯罪抑止に役立つ側面があることにも言及した。
また、大手送金事業ウエスタンユニオンのHikmet Ersek CEOは、デジタル通貨にはアフリカやヨーロッパなど地域や国ごとにユースケースが異なっていると話す。その上で、規制は様々な人々や国際決済を扱うウエスタンユニオンのような企業にとって好ましいものである必要があると意見している。
「デジタル通貨のリセット」と題するセッションは28日にも開催される予定だ。シンガポール政府のTharman Shanmugaratnam上級大臣、中国清華大学に設置されている国立金融研究所長の朱民氏、仮想通貨メディアCoinDeskのコンテンツ責任者Michael Casey氏などが登壇する。
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