マスク氏がOpenAIやアルトマン氏を提訴
イーロン・マスク氏は2月29日、生成AIのChatGPT開発で知られるOpenAIと、サム・アルトマンCEOに対して訴訟を起こした。「人類の利益のためのAI」という当初の契約に反していると主張している。ロイター通信などが報じた。
提訴を受けて、暗号資産(仮想通貨)ワールドコイン(WLD)の価格は一時的に約5%下落した。なお、現在は7.8ドル付近に復帰している。
アルトマン氏はワールドコインの共同創設者でもあるが、ワールドコインの事業自体はOpenAIと無関係だ。
しかし、2月にもOpenAIが動画生成AIを発表したことによりWLDの思惑買いとみられるものが観測されるなど、OpenAI関連の動きがWLDにも影響を与えることがあった。
関連: ワールドコイン(WLD)急騰、OpenAIの動画生成AI「Sora」発表で思惑上げか
「人類の利益」という契約が破られたと主張
マスク氏は、アルトマン氏らと共に2015年にOpenAIを設立したが、その後2018年に取締役を辞任。以降はOpenAIに多額出資するマイクロソフトが同社を支配しているとの立場を示してきた。
マスク氏側は今回、カリフォルニア高等裁判所に提出した訴状で契約違反があったと申し立てている。
訴状によると、OpenAIの創設者3人は当初、「人類に利益をもたらす」ような仕方で、汎用人工知能(AGI)に取り組むことに同意していたという。
しかし現在、OpenAIは人類の利益ではなく、営利目的でAIを開発していると述べる格好だ。特に、2023年の言語モデルGPT-4が、実質的にマイクロソフトの製品としてリリースされたとして問題視している。
マスク氏は、OpenAIが自社の研究と技術を一般公開し、GPT-4などの資産をマイクロソフトやその他個人の金銭的利益のために使用することを禁止する判決を求めている。
ボストン大学法科大学院のブライアン・クイン教授は、マスク氏が契約関連書類の一部として、「一方的な議論」がなされているようにみえる電子メールを挙げていると指摘。もしマスク氏がこの電子メールのみで「契約」だと主張し続けるならば、根拠が薄いと意見した。
関連: マイクロソフト、「ChatGPT」開発のOpenAIに1.3兆円を出資
汎用AIが人類に与えるリスクに警戒
マスク氏は以前より、AIが人類に与えるリスクに注意する姿勢を示してきた。2023年3月には、AI開発者とハイテク業界のリーダーからなるコンソーシアムの一員として、強力なAIモデルの影響が把握されるまで、その訓練を6か月間停止するよう求める書簡に署名している。
今回も訴状で、OpenAIの最新モデル「GPT4」が汎用人工知能(AGI)のレベルに到達していると主張。マスク氏は、AGIが人類にとって重大な脅威となると以前より認識していたとも述べた。
裁判所に対しては、GPT4がすでにAGIとみなされるべきかどうかについても判決を求めている。
マスク氏は昨年7月、新たにAI関連の企業「xAI」を設立している。「宇宙の本質を理解すること」を目指すとしており、OpenAIのChatGPTに対抗する姿勢を示唆していた。
「xAI」は昨年12月にチャットボット「Grok」を発表。現在はアーリーアクセスプログラムを募集している。「宇宙を理解するための会話AI」と銘打たれており、ウィットに富んだ回答やXのプラットフォームから最新情報を取得することも特徴だとされる。
関連: イーロン・マスク氏が新たなAI企業「xAI」発表、テスラやツイッターとの連携も視野