
フランスのカンヌで開催されたEthereum Community Conference(EthCC)は、現在の仮想通貨業界の中心に位置するイーサリアムの成長を象徴するイベントとなった。
今回の会議には開発者、起業家、研究者、投資家など世界中から6400人以上が集まり、イーサリアムに関する最新の研究や技術、金融応用について活発な議論が交わされた。会場は華やかなリビエラの雰囲気とともに、プロトコルやブロックチェーンを語る真剣な空気に包まれていた。
この場において話題となったのはイーサリアムそのものだけではなく、次世代のプロジェクトや新興チェーン、ゼロ知識証明などの革新技術に注目が集まっていた点だ。これらは技術革新の波に乗りつつもまだ広く認知されていない将来性のある仮想通貨プロジェクトである。
参加者の間では仮想通貨の次のバブルおすすめ銘柄としてどのプロジェクトに注目すべきかという話題も飛び交い、イーサリアムのエコシステム外にある新しい挑戦者たちへの関心も高まりを見せていた。
金融機関による採用が現実に
カンヌでのEthCCは単なる開発者会議ではなく、イーサリアムが本格的に金融機関や既存インフラの中に組み込まれ始めているという事実を浮き彫りにした。
S&Pグローバル・レーティングスやアーンスト・アンド・ヤング(Ernst & Young)の代表者らが登壇し、ウォール街がイーサリアムのブロックチェーン技術を決済基盤として取り込む動きを紹介。特にコンプライアンスやプライバシー面の整備が進んでおり、伝統的金融と暗号資産の融合が具体的な段階へと入ってきたことが確認された。
Flashbotsの開発チームによるMEV(最大抽出価値)に関する講演も注目を集めた。これは取引順序によって利益を得るメカニズムであり、DeFiにおける構造的課題と可能性を同時に浮かび上がらせるものだった。
レイヤー2とZK技術の実用化へ前進
イーサリアムのスケーラビリティ問題に対応する手段として注目されているのがレイヤー2(Layer 2)技術である。EthCCではSagaのCEO、Rebecca LiaoがボトルネックとなっているL2間の流動性について語り、解決策の必要性を指摘。DuneのFredrik Hagaはオンチェーンデータに基づいたL2の成長動向を分析し、その利用が拡大している事実を裏付けた。
一方、Matter Labsはゼロ知識証明を活用した「Elastic Chain」という新たなネットワークアーキテクチャを発表。セキュリティとスケーラビリティの両立を目指すアプローチとして、参加者の関心を大きく集めていた。
暗号資産企業のブースと資金調達の最前線
会場にはRobinhood、Ledger、Lido、Polygon、Base、OKX、Aaveなど多数の暗号資産関連企業が出展。企業ごとのブースではプロダクト紹介やウォレット体験、パートナー募集などが行われ、現場ではスタートアップと投資家のネットワーク形成も盛んに行われた。
EthVCと呼ばれるセクションではベンチャーキャピタルと暗号プロジェクトのピッチセッションが実施され、新興プロジェクトが直接資金調達の機会を得るかたちとなった。こうした場で注目される技術やサービスは、今後数年で主流になる可能性もある。
技術と規制のはざまで
今回のカンファレンスで印象的だったのは、単に技術の進歩だけでなく、それを取り巻く規制や倫理的な問題への関心も高まっていたことだ。EUのMiCA規制の進展や、米国における証券・商品区分の混乱など、世界各国でWeb3に対する法整備の重要性が強調されていた。
一方で、匿名性や自由なネットワークという暗号資産の原点をどう保つかという問題も持ち上がっている。開発と規制が交差するその最前線で、イーサリアムを基盤とするプロジェクトたちは新たなバランスを模索し始めている。
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