
法定通貨の価値下落と仮想通貨
世界最大級ヘッジファンド「ブリッジウォーター・アソシエイツ」創設者レイ・ダリオ氏は3日、政府債務増大で準備通貨としてのドルなどの魅力が損なわれていることが、暗号資産(仮想通貨)やゴールド(金)の上昇の一因だと述べた。
ダリオ氏は、フィナンシャル・タイムズが自身の見解を不正確に報じたとして、同紙に書面で提出したインタビューの回答原文をX上で公開した形だ。
「仮想通貨はドルを代替できるか」という質問に対して、ダリオ氏は、仮想通貨は供給量が限られていると指摘。このため、他の条件が同じだと仮定して、ドルの供給量が増加したり需要が減少すれば、仮想通貨は魅力的な代替となる可能性が高いと回答している。
供給上限については、特にビットコイン(BTC)に言及したものとみられる。さらに、次のように続けた。
ほとんどの法定通貨、特に多額の負債を抱える法定通貨は、富の有効な貯蔵庫としての機能を果たせなくなり、「ハードカレンシー」に比べて価値が下落するだろうと私は考えている。
これは1930年代から1940年代、そして1970年代から1980年代に実際に起こったことだ。
ダリオ氏は、金や仮想通貨を「ハードカレンシー」として捉えている。過去に米ドルの信用力が低下し、ゴールドの地位が高まった時期に言及した格好だ。
ダリオ氏は7月、主要国の債務問題を背景にしてポートフォリオの15%をビットコインと金に配分するよう推奨している。
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ステーブルコインがもたらすリスクは
「ステーブルコインが米国債に対して持つエクスポージャーは、潜在的なシステミックリスクとなるか」という質問に対しては、ダリオ氏は「そうは思わない」と回答した。
インフレなどによる米国債の実質購買力低下は現実的なリスクだが、ステーブルコインについては適切に規制されていれば、広い金融システムにおよぼすリスクは生じないはずだとの見解を示している。
米ドル建てステーブルコインの多くは、裏付け資産として米国債を大量に保有しているところだ。このため、米国政府もステーブルコイン促進は米ドルの国際的な地位強化につながるとみなしている。
7月にはステーブルコイン規制の「ジーニアス法案」が成立し、ドル建てステーブルコインは米ドルや財務省証券などの流動資産によって完全に裏付けられることが義務付けられた。
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ステーブルコインとは
価格が常に安定している(stable)仮想通貨を指す。ステーブルコインは暗号資産の一種で、BTCやETH、XRPなど変動性のある資産とは異なり、米ドルなどに裏付けられその価値を保つことが目的だ。米ドルの裏付けによるステーブルコイン(USDT・USDC)のほか、アルゴリズムを利用するステーブルコインもある。
その他、ダリオ氏は現在の状況を、各国は金利上昇を容認してデフォルト危機のリスクを負うか、債務返済のために紙幣を増刷して通貨価値をさらに下落させるかの選択を迫られる状況だと指摘。今後数年間で劇的な転換がない限り、どちらの場合でも金融秩序が脅かされると意見した。
また、政府債務、政治、気候変動、AI(人工知能)などの相互作用が今後5年間で巨大な変化をもたらす可能性があると注意を促している。
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