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仮想通貨×ポイント×エンタメ、日常に溶け込む未来|WebX2026

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

WebX 2026 | セッションレポート

仮想通貨×ポイント×エンタメ、日常に溶け込む未来

井坂 友之 × 鈴木 良平 × 笠井 道彦

「投資するもの」から「日常で使うもの」へ。仮想通貨とブロックチェーンが社会に溶け込むとはどういうことか。WebX 2026のLimitlessステージでは、コインチェック、ソニーグループ、au Coincheck Digital Assetsの3社が登壇し、ポイント経済圏・エンタメ・既存ビジネスとの融合という具体的な切り口から、仮想通貨の日常実装の現在地と5〜10年後の展望を議論した。

井坂 友之

井坂 友之

コインチェック株式会社
代表取締役社長執行役員CEO

GMOアドパートナーズを経てグリー株式会社に入社。ゲームプロデューサーとして複数のヒットタイトルを創出し、株式会社WFS代表取締役社長などを歴任。2022年11月にコインチェック執行役員、2026年6月より代表取締役社長執行役員CEOに就任。親会社Coincheck Group N.V.のChief Platform Officerも兼任。

鈴木 良平

鈴木 良平

ソニーグループ株式会社 事業開発プラットフォーム オンチェーン事業戦略部門 Crypto事業部
統括部長

ソニーグループのオンチェーン事業戦略部門にてCrypto事業部を統括。ブロックチェーン「Soneium」や国内仮想通貨取引所「S.BLOX」の立ち上げ・運営を推進。ソニーグループ内外でのWeb3ユースケース策定を担う。

笠井 道彦

笠井 道彦

au Coincheck Digital Assets株式会社
代表取締役社長

KDDIにて新規事業開発・コーポレートベンチャーキャピタル(KDDI Open Innovation Fund)を経て、2021年から2年間は中国拠点立ち上げ責任者として上海に赴任。帰国後、ウォレット・ブロックチェーン事業を所管し、KDDI・コインチェック・auフィナンシャルホールディングスの合弁会社設立に伴い代表取締役に就任。

古田 鴻之介

古田 鴻之介

モデレーター
CoinPost / Head of Business Development

CoinPostの事業開発部門を統括。WebX 2026ではLimitlessステージのモデレーターを担当。


ポイント経済圏と仮想通貨の融合

モデレーターの古田氏が「仮想通貨口座数は拡大しているが、ブロックチェーン技術が日常に根付いている実感がまだ薄い」という問題意識を提示し、各社の取り組みを問うところからセッションは始まった。まず注目されたのが、ポイントを仮想通貨への入口として活用するau Coincheck Digital Assetsの戦略だ。
笠井 道彦
最初のサービスとして、ポイントを仮想通貨に交換するのではなく、ポイントがビットコインの価格に連動して増減する「ポイント運用」を提供しています。かなり多くの方にご利用いただいています。仮想通貨やビットコインは聞いたことはあるけど難しい、怖いという方がいる中で、ポイントは仮想通貨へのすごく良い入口になると思っています。
事業者の観点では、ポイントはこれまで限られた範囲での流通でしたが、ブロックチェーン上に出ていくことで広く流通し、いろんな経済圏とのコラボレーションが可能になります。お客様の観点では、最初から現金を使うのは怖くても、ポイントからなら始められる。仮想通貨へのエントランスポイントになるという意味があります。
補足:日本のポイント経済圏は国内特有の仕組みで、Pontaポイントや楽天ポイントなど複数の大規模サービスが存在する。au Coincheck Digital Assetsは、KDDI・コインチェック・auフィナンシャルホールディングスの3社合弁会社として設立。現在はサービス開発中で、ウォレットやデジタル資産を身近にするサービスを今後提供する予定。
一方で、ポイント経済圏との融合には課題もある。
笠井 道彦
お客様側のハードルはかなり下げられます。ただ、ポイントという概念自体がやや曖昧で、現金価値があるのかないのか、何と交換していいのかいけないのか、そういったルールメイキングがこれからというところがある。そのあたりが一定のハードルです。
セッション内の相互要望の議論の中で、井坂氏はコインチェックとして特に融合を進めたい領域として次の点を挙げた。
井坂 友之
Pontaのような巨大なサービスは、ある意味でステーブルコイン的な形で機能している、日本独特の文化だと思っています。海外にもたぶんないもので、この中に仮想通貨が組み込まれていくことはすごく重要です。ポイント経済圏と仮想通貨をどう融合させるかは、僕的にはやはりすごく気になるテーマです。

エンタメ・IP × ブロックチェーンの可能性と課題

ソニーグループがWeb3を推進する背景には、エンターテイメントビジネスの将来を見据えた戦略がある。鈴木氏は「ブロックチェーンやAIがエンタメビジネスに何らかの影響を与える」と想定し、必要なインフラとナレッジを今から蓄積する方針を説明した。
鈴木 良平
IPとブロックチェーンは非常に親和性が高い領域です。Soneium上で展開するプロジェクトとして、JASRACさんと進めている「KENDRIX(ケンドリクス)」というサービスがあります。クリエイターがどのタイミングで作品の権利を持っていたかをオンチェーン上で記録し、第三者ではなくブロックチェーンが透明性高く証明できるサービスです。
さらにスマートコントラクト上に利用条件を書き込むことで、利用を促進し、利用状況に応じた収益分配も実現できます。最近は生成AIツールで作られた二次創作・三次創作の履歴もトラッキングでき、AIエージェントがステーブルコインで支払いを行うといった、AIとブロックチェーンのクロスセクションの可能性が非常に高い領域だと考えています。
補足:SoneiumはソニーグループとStartale Groupのジョイントベンチャーが運営するイーサリアム互換のブロックチェーン。S.BLOXはSoneiumと連携した国内仮想通貨取引所として運営されている。「KENDRIX(ケンドリクス)」はJASRACと連携した楽曲権利管理サービス。
ただし、グローバル展開を見据えると技術・法律の両面で大きな壁が存在する。
鈴木 良平
権利管理団体との関係が必要だったり、スマートコントラクトに書いたプログラム言語が著作権法上どういった法的拘束力を持つのかといった関係各社との調整が必要だったりします。グローバル展開しようとすると各国の権利団体・著作権との整合性が必要で、1企業だけでは到底実現できない。加えて、グローバルで共通のデータフォーマット、標準化をどうリードするかもかなり大きな課題です。
エンタメ業界からコインチェックへの具体的な要望も示された。ファンからの資金調達手段としてセキュリティトークンへの関心が高まっているという声だ。
鈴木 良平
アニメやゲームの開発費が高騰する中で、セキュリティトークンなどを使ってファンから資金調達したいというニーズをよくお聞きします。一方で国内ではセキュリティトークンの活用がなかなか進んでいない。その辺りの率直な意見を聞きたい。
井坂 友之
エンタメ業界の資金ニーズはよく理解できます。お金を払うこと自体がファンにとって「推し活」になるので、プロジェクトを後押しする推進力にもなる。金融の力をエンタメに綺麗に入れると強い推進力が出ると思います。最近はオンチェーン金融というワードの中で、仮想通貨単品の扱いだけでなく、STやいろんなものが混じった議論や規制・テクノロジーの話がどんどん出てきているので、自ずと近づいてはくると感じています。

既存ビジネスへの組み込みと「CaaS」戦略

コインチェックが近年力を入れるのが、取引所運営で培ったテクノロジーやセキュリティを外部パートナーにAPIで開放する「Crypto as a Service(CaaS)」だ。メルカリへの機能提供などがすでに実績としてある。
井坂 友之
デジタル資産を取り扱うインフラを全部自社でやるのは本当に大変で、正直お勧めできません。裏側を我々が全部担い、パートナーの皆様はコアとなる事業にフォーカスしていただく。そういう環境を整備しようとしているのが今のコインチェックの状態です。最近の事例だとメルカリさんで複数の通貨が追加されましたが、その裏側を全部担当しています。
既存ビジネスへの組み込みで最も重要な要素として、井坂氏は「既存プロセスを深く知ること」を挙げた。
井坂 友之
規制面はだんだん綺麗に整ってきて、きちんとしたプロセスを通れば問題になることは少なくなってきています。すごく重要なのは、パートナーの既存プロセスに対してどう書き込んでいくか。これまでやってきたものの延長線上にブロックチェーンをこっそり伸ばして、みんなにとってメリットができる形で使われるか、というところが非常に重要です。APIを開放しながら、パートナーのビジネスと既存プロセスに1歩踏み込んで関わる「フォワード・デプロイド・エンジニアリング」的な対応が必要だと思っています。
パートナー企業からの要望として一番嬉しいのは、どういうビジネスをしているかの背景から教えていただくこと。既存プロセスを知らないと、我々のソリューションの精度も上がりません。
補足:金融商品取引法の改正など法整備の進展により、デジタル資産を事業に組み込む際の規制ハードルは以前より明確化されてきた。一方で、既存システムとの統合設計や社内プロセスの見直しは各社の個別事情に依存するため、技術提供側とのすり合わせが実装の鍵となっている。

5年後・10年後の展望

セッション後半、3人はそれぞれ5年後・10年後の世界を語った。共通していたのは「ブロックチェーン・Web3というワードが消える社会」への期待だ。
WebX 2026 セッション写真
笠井 道彦
新入社員に聞くと、証券口座は持っていないけど仮想通貨口座は持っているという人がいて、普及は進んできていると感じます。ステーブルコインが出てきたことによって、日常の決済や送金に活用できる可能性がすごく広がっています。5年後は、全く見たことがない新しいサービスが生まれるというより、金融取引や送金が数日かかっていたものが一瞬でできるようになるなど、見た目はそんなに変わらないけど使い勝手がものすごく便利になっているというイメージを持っています。
鈴木 良平
今はステーブルコインや支払いのインフラでマスアドプションが進んでいますが、これは確実にアプリケーションレイヤーまで広がっていくと考えています。エンタメも同じで、アプリケーションとしてはWeb2のような体験をしながら、バックエンドの仕組みとしてWeb3が動いていく。そういう形でマスアドプションが広がるんじゃないかと思っています。1社ではできないので、同じ志を持った方と一緒に進めていきたいです。
井坂 友之
あらゆるアセットがオンチェーン上に上がってくると、コンピューターが読みやすくなるので、AIエージェントが取引を始める世界が想像以上に早く来るんじゃないかと思っています。取引所では今、個人を本人確認しているわけですが、エージェントが本当にお客様のエージェントなのかを審査する時代も来るでしょう。マシン対マシンのマーケットが出来上がっていく。そうなると、ブロックチェーンやWeb3というワードが消えることが近々起きてくるんじゃないかと思います。それが社会に溶け込んだ証拠になるんじゃないかと。

セッション総括

モデレーターの古田氏は、3者の議論を次の言葉で締めくくった。
「日常生活にブロックチェーンをどう溶け込ませるか、3名の皆様が一生懸命取り組まれているというところで、お話にもあったように、どこかかけるどこかという融合が非常に大事になってくると感じました」
ポイントから仮想通貨へ、エンタメのIP管理からAIエージェントの決済まで。業種をまたいだ融合が、ブロックチェーンを「インフラ」から「日常」へと押し上げる鍵だと3社は口をそろえた。

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