- 財務省に仮想通貨制裁の新権限付与
- 不審取引は最長30日の凍結可能に
財務省に新たな制裁権限を付与
米共和党のシンシア・ルミス上院議員は、仮想通貨市場構造法案「クラリティー法」に盛り込まれた不正資金対策条項が、北朝鮮の国家支援を受けたハッカー集団「ラザルス・グループ」の仮想通貨市場での活動を封じるための直接的な手段になると主張した。
26日のX(旧Twitter)投稿でルミス氏は、ラザルス・グループのような悪質な組織は、金融規制の抜け穴を巧みに利用していると指摘。「クラリティー法は財務省に新たな制裁権限を与えるとともに、資金が動く前に企業が不審な取引を凍結できる『セーフハーバー規定(免責規定)』を提供する」と述べた。
同氏は、法案の以下の三つの条項がこの役割を担うと説明している。
- 第201条:銀行秘密法(BSA)に基づくマネーロンダリング対策(AML)の遵守義務を仮想通貨企業に課す。
- 第303条:財務省に仮想通貨分野の新たな制裁権限を付与する。
- 第305条:仮想通貨企業が不正の疑いがある取引を保留できるようにし、善意で対処した企業には民事責任を免除する免責規定を適用する。
第201条は、AMLの遵守義務を仮想通貨企業、取引所、分散型金融(DeFi)サービス運用者、仮想通貨ATM事業者まで拡大するものだ。
第303条は、仮想通貨関連活動について、海外の法域や金融機関を「マネーロンダリング上の主要な懸念対象」に指定する新たな特別措置の権限を財務省に与える。規制当局が国際送金を行うコルレス銀行に対して行ってきた措置を、仮想通貨分野にも適用する。
第305条は個々の取引を対象としており、取引所やステーブルコイン発行事業者が、違法行為に関与していると判断した取引について、最長30日間保留することができるようになる。(法執行機関からの正式要請があった場合は180日まで延長可能)
ルミス氏は、これらはクラリティー法案に盛り込まれた16項目を超える不正資金対策の一部であり、仮想通貨取引所が破綻した場合、顧客資産の保護にもつながると指摘した。
関連記事:米上院共和党、クラリティー法案の本会議入り急ぐ=報道
米上院共和党は今週、仮想通貨市場構造法案であるクラリティー法案の本会議審議入りに向け動き出す。60票の確保が課題となる中、ニューヨーク州司法長官は議会に規制強化を求める証言を提出した。
北朝鮮ハッカー集団による深刻な被害
ラザルスによる仮想通貨関連のサイバー犯罪は2026年も拡大している。
ブロックチェーンセキュリティ企業のサーティック(CertiK)が2026年5月に公開したレポートによると、2016年から2026年初頭までに、北朝鮮系のハッカー集団は263件の攻撃を通じて推定67億5,000万ドルを窃取した。
2025年に発生した仮想通貨関連のセキュリティ事案656件のうち、北朝鮮関連の79件(全体の12%)にとどまったものの、被害額は20億6,000万ドルに達した。一方、残る577件(88%)の事案の被害総額は約13億4,000万ドルであり、北朝鮮系グループが少数の高価値ターゲットに集中して攻撃を仕掛けている実態が読み取れる。
2026年も同様の傾向が続いており、年初以降の被害総額約11億ドルのうち、約55%にあたる6億2,000万ドル超が北朝鮮関連と分析されている。
さらに今年に入り、同グループは攻撃手法をさらに高度化させている。ブリッジやプロトコルへの攻撃に加え、偽の会議招待やソーシャルエンジニアリングを用いて、仮想通貨企業の幹部や従業員を直接狙う手口へと移行している。
6月にフランスで開催されたG7サミットでは、首脳らが地政学問題に関する共同声明を発表し、北朝鮮による仮想通貨窃取やサイバー犯罪への共同対処の必要性を改めて訴えた。
ルミス議員は、国家ぐるみで仮想通貨を狙い続ける北朝鮮ラザルス・グループの脅威に対し、クラリティー法案が実効的な歯止めとなると強調している。
関連記事:G7首脳声明、北朝鮮の仮想通貨窃取に対する共同対処を呼びかけ
G7首脳が17日に発表した声明で、北朝鮮による仮想通貨窃取とサイバー犯罪への共同対処の必要性を改めて確認した。ブロックチェーンセキュリティ企業の分析では、北朝鮮関連の窃取総額は推定67.5億ドルに上る。
クラリティー法成立の見込みは
ルミス議員は、クラリティー法案が今会期で成立しなかった場合、2030年まで包括的な仮想通貨規制を整備する機会を逃す恐れがあるとの懸念を示している。デジタル資産小委員会の委員長を務める同氏は、そのような事態を避けるため、法案の今会期中の成立に向けて、議会内での働きかけを強めている。
業界団体も8月の休会前の採決を求めて働きかけを続けている。グレースケールをはじめとする仮想通貨業界に加え、銀行業界でも投資銀行ゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモンCEOが、法案への支持を表明している。
米仮想通貨政策専門メディアのクリプト・イン・アメリカは28日、共和党上院議員らが本会議審議入りに向け動き出すと報じた。ジョン・スーン上院院内総務が採決に向けた手続きを開始する計画だが、前進するためには60票の確保が最大の関門になる。
スーン氏は先週、クラリティー法案について夏季休会前の成立は困難との認識を示した上で、審議入りだけは実現させたいとの意向を明らかにしている。
元米国政府関係者のアン・ケリー氏は、上院規則の壁により8月7日の休会前に同法案の審議を終えるのは極めて難しいとの見方を示した。ギャラクシー・リサーチの調査責任者アレックス・ソーン氏は24日、同法案が2026年中に成立する確率を、6月の50%から30%に引き下げた。
予測市場ポリマーケットでは現在、2026年の法案可決確率は約33%〜37%とされており、2月時点の80%超から低下した。
関連記事:米クラリティー法案、上院規則の壁で8月成立は困難か=元米国政府関係者が分析
元米政府関係者は上院規則を踏まえ、仮想通貨市場構造法案クラリティー法の休会前成立が困難な理由と今後の展望を分析した。



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