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イーサリアムのステーブルコイン供給量が1800億ドルで過去最高  3年で150%増、市場シェア60%の意味を読む

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

HashHub Research ETH記事プレビュー
※本レポートは、HashHub Researchの許諾を得てCoinPostに転載しています。 執筆者:でりおてんちょー 執筆日:2026/04/

前提

「Ethereumのステーブルコイン供給量が1,800億ドルに達した」という話を聞くと、多くの人はまず強気相場の再来を連想するでしょう。ですが、この数字の本当の意味は、ETH価格の短期材料よりも、Ethereumが「暗号資産のためのチェーン」から「デジタルドルの基幹インフラ」へ変わってきた点にあると考えられます。150%増というのは、ざっくり言えば3年前の約720億ドル規模が約2.5倍になった計算です。さらに、2025年10月にThe Blockが報じた世界全体のステーブルコイン市場3,010億ドルという水準と重ねると、1,800億ドルは単純計算で約6割に当たります。見出しの「市場シェア60%」は、少なくとも当時の市場感覚から大きく外れた表現ではないと考えられます。

こうしたことを踏まえて本レポートでは、Ethereumにステーブルコインが集まり続けている背景をピックアップしながら、その優位性がどのような構造の上に成り立っているのか、また足元の供給拡大を市場全体の変化の中でどう位置づけるべきかについて整理していきます。

Ethereumの優位はどこから生まれるのか

Ethereumの強さは、単に昔から有名だからではないと考えられます。その最大の理由は、流動性とアプリがすでに厚く積み上がっていることです。2025年9月にThe Blockが報じた時点でも、Ethereum上のステーブルコイン供給量は1,660億ドルの過去最高を記録し、その内訳はUSDTが878億ドル、USDCが480億ドルでした。

つまり、最大級の発行体であるTetherとCircleが、いまもEthereumを中核の発行・流通基盤として使っているわけです。DeFiで貸し借りをするにも、DEXで売買するにも、担保として使うにも、最初に厚い流動性がある場所へ資金は集まりやすい。Ethereumの優位は、技術だけでなく「人と資金が先に集まっている」ことから生まれていると言えます。

しかも、これは眠っている資金の山ではないのです。The Blockは、2025年のEthereum上の週間ユニーク・ステーブルコイン送信者数が平均72万人に達し、直近2週間では100万人を超えたと報じましたが、その後も増加傾向にあります。

ここから見えるのは、Ethereumが「保管庫」であるだけでなく、「通り道」でもあるという事実です。要するに、ただ単に大金が置かれているというだけではなく、実際に毎日動いているからこそ、次の発行体や次のアプリもまたEthereum圏を選びやすくなるのです。

さらに見落とせないのが、いまのEthereum優位はメインネット単体ではなく、レイヤー2を含む「Ethereum経済圏」で成立している点です。EthereumとそのL2エコシステムが、より広い意味でのステーブルコイン取引量の58%を占める主要ハブとされており、JPMorganも同様に、EthereumがステーブルコインをL1として直接、あるいは一部L2を通じて間接的に抱えていると整理しています。

CoinDeskも、2025年のEthereum再評価の背景に、機関投資家によるステーブルコインとトークン化への賭け、企業財務、L2の拡大があると報じました。要するに、勝っているのは狭い意味のメインネットではなく、Ethereumを中心に広がる決済・担保・取引の圏そのものなのです。

もっとも、ここでいう「Ethereum経済圏」の広がりは、単純にL2の拡大をそのままEthereumの強さとして積み上げればよい、という話ではないのです。最近の議論では、L2はもはや一様に「Ethereumをスケールする存在」とは言い切れず、どの程度Ethereum本体の保証を引き継ぐのか、あるいは独自の運営や規制対応を優先するのかによって性格が分かれ始めています。実際、一部のL2は完全なトラストレス化を急がず、顧客要件や事業判断を重視した設計を選ぶ可能性も示唆されています。

その一方で、L1自体もガスリミットの拡大やZK関連技術の進展によって底上げが進んでおり、L2の役割は「単なるスケーリング手段」から「保証や独立性の度合いを選ぶレイヤー」へと再定義されつつあります。したがって、Ethereum優位を評価する際には、L2の数や取引量だけでなく、それぞれがどのような保証モデルの上に成り立っているのかまで見ておく必要があります。

強さと弱さが同時に広がっている

では、ここまでの内容を踏まえた上で、Ethereumステーブルコインの急拡大をどう読むべきでしょうか。結論から申し上げると、これは単なる「ETHに追い風」という話ではなく、ステーブルコインが暗号資産市場の周辺機能ではなく中心機能になったことの証明の一つだと考えられます。2025年の市場規模が49%伸びて3,060億ドルに達した背景に規制の明確化と機関投資家の参入があるとすれば、土台となる市場そのものがこれほど大きくなるのであれば、仮にEthereumはシェアが少し下がったとしても、絶対額では伸び続ける可能性が高いでしょう。また、Citiの見通しレポートでも、2030年のステーブルコイン市場はベースケースで1.9兆ドル、強気では4兆ドルに達する可能性が示されています。

ただし、供給量の増加をそのまま「リスク資産に資金が戻った」と読むのは早計です。2026年1月にステーブルコイン市場が3,110億ドル超の高値を付けた局面が、ビットコイン下落や大規模ロスカットを伴う不安定な相場の最中だったとする報道もありました。要するに、ステーブルコイン残高の増加は、強気の前進基地であると同時に、ボラティリティから避難する待機資金の膨張でもありえます。Ethereum上の月間ステーブルコイン出来高が過去最高を更新した局面についても、投資家が市場停滞期に利回り機会を探していたという説明があります。ステーブルコイン残高が増えているのは確かでも、その中身が常に「新しい強気資金」とは限らない。この読み違いは、かなり大きな誤解を生みます。

もう一つ、Ethereumの支配を永遠のものと見るのも危ういでしょう。非米ドル建てステーブルコイン供給におけるEthereumの比率は、2023年初の90%から2026年2月には65%へ低下したとする観測もあります。それでも発行の中心であることに変わりはありませんが、他チェーンが市場を削っているのも事実です。特に、送信者数や小口決済のような領域では、手数料の安いチェーンが存在感を高めやすいので、Ethereumは王者という見方もできますが、もはや独走状態ではないのです。市場が大きくなるほど、覇権は「総取り」ではなく「分け合い」に近づいていくはずです。

そして、より本質的な論点があります。いまEthereumを支えるステーブルコインの多くは、USDTやUSDCのような中央集権型で、しかも米ドル建てです。Vitalik Buterin氏は2026年1月、現在のステーブルコインが米ドルへの依存、資本の大きな主体に左右されうるオラクル、制度側への取り込まれやすさといった問題を抱えていると警告しました。Ethereumの成功は確かに巨大ですが、その成功のかなりの部分は「国家通貨としてのドル」と「企業が管理するトークン」に乗っています。言い換えれば、EthereumはDeFiの中心であると同時に、既存金融の延長線にもなりつつあるのです。この二面性をどう評価するかで、同じ1,800億ドルでも見え方は大きく変わります。

加えて、今後さらにEthereum経済圏が強くなれば、そのままETHという資産に価値が返ってくるのかという問題も残ります。レイヤー2の拡大はユーザーには恩恵を与える一方、Ethereum本体のバーン率を複数年ぶりの低水準まで押し下げた局面もありました。発行や取引が増えても、その果実がどこまでEthereum本体に帰属するかは別問題です。ここを混同すると、「Ethereumエコシステムは強い」と「ETH価格に直結する」を同じ話として扱ってしまいます。だからこそ、足元の拡大をそのままETHの強さと結びつけるのではなく、両者の距離を丁寧に測る姿勢が求められます。

総括

結論として、Ethereum上のステーブルコイン供給量が1,800億ドルに達したという話は、単なる大きな数字の自慢とは言えません。Ethereumが依然としてデジタルドルの最大の受け皿であり、DeFi、取引、担保、そして機関投資家のトークン化実験が交わる中心地であることを示す出来事です。Ethereum上に米ドル連動ステーブルコイン供給の過半が載っていると言われ、規制整備と機関投資家の参入がこの流れを後押ししているというのが現状です。だからこそ、このニュースはETHの短期価格よりも、Ethereumが「金融の土台」に近づいていることの方を強く示していると考えられます。

ただし、ここで浮かれて終わるのは早いでしょう。数字は集計方法で揺れ、シェアはじわじわ薄まり、利用の拡大は中央集権型ドル資産への依存も強めています。つまり、Ethereumは勝っているが、勝ち方は複雑なのです。いま起きているのは「完全勝利」ではなく、「最も現実に適応したチェーンが、ステーブルコイン時代の先頭を走っている」という状況であり、筆者はこの点こそが、今回の1,800億ドルという数字の本質だと思います。Ethereumは確かに覇権を握っていますが、本当の勝負は、その覇権をどれだけ長く、どれだけ健全に、そしてどれだけ自分の価値に変えられるかに移っているのではないでしょうか。

HASHHUB RESEARCH

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