CoinPostで今最も読まれています

開発者が語る「ライトニングネットワークの現在と未来」=ビットコイナー反省会レポート

画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

開発者が語るライトニングネットワーク

ビットコイン、仮想通貨(暗号資産)、ブロックチェーンに関する情報を配信する総合動画チャンネル「ビットコイナー反省会」は22日、「ビットコインとか勉強会」と共に、ライトニングネットワークの勉強会「LN開発3倍祭り」を開催。本イベントにパネリストとして招かれた3名のライトニングネットワークの開発者が、開発の現状や技術動向について語った。

モデレーターは、本イベントをメインで担当するビットコイナー反省会の東晃慈氏。以下が開発者のメンバーだ。

  • 宮本丈氏(ビットバンク株式会社ソフトウェアエンジニア)
  • 加藤規新氏(トラストレスサービス株式会社代表)
  • 小川裕也氏(Spotlightチーフエンジニア)

配信では、小川氏が「ブロックチェーン解析からみるライトニングネットワーク統計」、加藤氏が「実はお手軽すぎるLN導入」というスライドを用いて解説も行ったが、本記事では議題となったテーマごとに、出演者の見解を紹介する。

DeFiのロック額について

DeFi Pulse」というウェブサイトでは、DeFi(分散型金融)でロックされている仮想通貨の量やプラットフォームごとのロック額が確認できる。

執筆時点で、ライトニングネットワーク上のBTCのロック額は11位で820万ドル(約8億8300万円)。本サイトにおけるシェアで52.87%の誇る1位のMakerは4億5740万ドル(約493億円)がロックされている。

出典:DeFi Pulse

ライトニングネットワークにロックされている額が多くないと指摘されることについて、出演者共通で「ロックしておく経済的インセンティブがないから」という見解だった。

小川氏は、ライトニングネットワークのトップノードですら「約10円/日」しか得られないと説明。東氏は、利用が増えないとロック額も増加しないと述べ、これがライトニングネットワークの課題であり、批判されているポイントであると語った。

一方、宮本氏と加藤氏は、ライトニングネットワークの開発自体は盛り上がっていると説明する。宮本氏は、ユースケースは必ずあり、いつかは多くの人が利用するメリットに気付く時が来るため悲観はしていないと述べている。加藤氏は、Lapps(ライトニングネットワークを活用したアプリ)のプロダクトを開発しているという企業は多いと語った。

お金を稼げないことが大きいと語る小川氏は、それでもユースケースができれば注目される技術だと期待を示し、そのために「Spotlight」を始めたと説明。小川氏がチーフエンジニアを務めるSpotlightは、デジタルコンテンツを配信できるプラットフォームで、BTCを活用している。各コンテンツをライトニング決済で購入でき、クリエーターが1円単位で収益化できるサービスだ。

DeFiのロック額が過去最高額に達した際は、「DeFi Pulse」の数字を元にニュースでも報じられた。

しかし東氏は、目安としては参考になるが、ライトニングネットワークは他のプラットフォームとは性質が違うので、このデータだけに左右されてはいけないと指摘。DeFiにロックされている量が多いとリスクも大きくなるので、単純にロック額が大きければ良いというものではないと語った。

関連「MakerDAO」で損失を被った投資家、財団ら相手に集団訴訟

仮想通貨取引所への導入について

ライトニングネットワークのユースケースの1つとして、仮想通貨取引所への導入が挙げられるが、未だ進んでいないのが現状だ。

宮本氏は、仮想通貨取引所間がライトニングネットワークでつながれば、高速送金が可能になり、アービトラージを利用する投資家にとって大きなメリットになると指摘した。

これについてビットバンクの宮本氏は、取引所としては「導入を先駆けるインセンティブはない」という。今後については、統一化されたAPIがあれば、導入が進む可能性があるとの見解を示した。

東氏は、他の取引所とつながるライトニングネットワークの導入は、手間がかかると指摘。インセンティブや需要がないことが、取引所への導入が進まない理由だとの見解を示した。取引所に限らず、ライトニングネットワークの開発・導入に関しては、他者が先に動くのを待つ傾向が強いと説明。今後もずっと同じプロトコルが使われ続けるかも分からないといった懸念もあると語り、開発・運営の難しさを指摘している。

ペイメント以外の可能性について

本イベントでは、単純なペイメント以外のユースケースはないのか、ライトニングネットワークの未来についても語られた。

小川氏は今後のユースケースとして、BTCを担保にしたステーブルコインの発行を挙げた。ライトニングネットワークを活用すれば、BTCだけでDeFiのようなユースケースを作ることができる可能性があると語っている。

東氏は、ライトニングネットワークを使って、検閲できないチャットアプリを開発する動きがあると説明。マイクロペイメントだけでなく、すでにあるサービスをユーザーがデータを保管したままで提供できるような応用がされてきていると現状を語った。

宮本氏が挙げたのは、予測市場だ。「Discreet Log Contract(DLC)」を利用すれば予測市場での応用が可能で、それがライトニングネットワークのキラーアプリになると述べている。DLCとは、スケーラビリティやプライバシーを向上させる機能を備えたコントラクトのプロトコル。外部情報を提供するオラクルへのトラストを最小限にするという特長を持つ。

また宮本氏がもう1つ挙げたプロトコルが「Lightning Service Authentication Token(LSAT:ライトニングサービス認証トークン)である。ペイメント領域ではあるが、LSATについてはHTTPのステータスコード402(Payment Required)での活用や、月額課金をストリーミング課金にするなど決済の細分化が可能だと語った。

関連BTC少額決済の起爆剤となるか、Lightning Labsが新プロトコル案を発表

加藤氏は「LSATは拡張性があることが特長で、他のサービスに情報の確認を委託できる機能(権限移譲)が備わっている」と説明。その機能を利用して本人確認を外部に依頼すれば、マネーロンダリング対策が可能だと語った。一方で、現状ではそういったサービスを提供している公的機関・企業などがないため、実用化は進んでいないと述べている。

まとめ

上記以外には「なぜライトニングネットワークの開発者が増えないのか」や「これから開発者を目指す人へ」などの内容が語られた。

ユースケースが少ないことやインセンティブ設計ができないことなどデメリットも聞かれたが、今回のイベントで東氏が伝えたかったのは、「ペイメントにおける活用だけでは価値がないのか」ということだという。

「マイクロペイメントをデジタル上で実現できるだけでも可能性が大きく広がるし、そもそもインセンティブはペイメントと重なる領域だ。広告収入の新しいモデルの考案など、ペイメント領域だけでも利用価値が充分ある」と語った。

小川氏は、ライトニングネットワークのゴールは、「クレジットカードをインターネット上で使う必要のない世界」だと述べている。今回の配信では、現状ではまだユースケースは少ないが、決済だけでも利用価値が高い上に、他の分野へ応用できる可能性があることが語られた。仮想通貨やブロックチェーンの未来のために、今後もライトニングネットワークの動向に注目したい。

CoinPost App DL
注目・速報 相場分析 動画解説 新着一覧
05/09 木曜日
18:49
TOKEN2049で注目を集めたCoinW、セキュリティと透明性へのコミットメント
豪雨の中、8000人以上が参加したTOKEN2049で、CoinWが安全性と透明性をテーマにブランド力を際立たせた。有識者パネル等を通してプロモーション展開に注力し、世界をリードする暗号資産(仮想通貨)取引所としての地位を固める。
18:45
Astar zkEVM「Yoki Origins」NFTミントが150万枚突破、ユーザー基盤は月間100%増
Astar Networkが提供するイーサリアムレイヤー2「Astar zkEVM Powered by Polygon」のローンチに合わせた「Yoki Origins」キャンペーンでNFTミントが150万枚を突破。ユーザー基盤も月間で100%増加し、5月31日のフィナーレに向け盛り上がりを見せている。
15:00
米下院、SECによる仮想通貨保管のガイドライン覆す決議案を可決
米国連邦議会下院は、議会審査法に基づき、証券取引委員会が発行した仮想通貨の保管に関する会計公報121号(SAB121)を覆す決議案を可決した。ホワイトハウスはこの決議案に拒否権を行使すると警告した。
14:00
米ロビンフッド1Q決算報告 仮想通貨収益倍増
大手取引アプリ米ロビンフッドは2024年第1四半期(1~3月)の決算報告を発表。仮想通貨収益が前年同期比で倍増していた。
13:20
DeFimansが中高生向けにWeb3講座を開催 筑波大学附属駒場で
株式会社DeFimansが筑波大学附属駒場中・高等学校で中学1年生から高校2年生を対象にWeb3講座を開催。ブロックチェーンとAIの活用案を考えるワークショップなど次世代育成に注力。
12:00
米トランプ前大統領、NFT購入者と夕食へ 仮想通貨に肯定発言も
米トランプ前大統領は独自NFTの特典として購入者らと夕食をとって過ごす。トランプ氏は仮想通貨に対してさらに肯定的な発言をしたところだ。
11:10
トランプ前大統領が異例発言、仮想通貨業界を味方に
今回の発言を受け業界の一部からトランプ氏を次期大統領として支持する声が増えているが、政治家として支持者を得るためのリップサービスにすぎないとの懸念も見られている。
10:20
金融庁、デジタル証券(ST)の規制緩和へ
日本の金融庁はデジタル証券(ST)を普及させるため規制を緩和することがわかった。早ければ8月にも内閣府令を改正する計画である。
10:00
Polyhedra、ゼロ知識証明の生成スピードで業界標準を刷新
Polyhedra Networkが新たに発表したZK証明プルーバー「Expander」は、業界標準を超えるゼロ知識証明の生成スピードを実現し、セキュリティと効率を大幅に向上する。
07:45
コインチェック、ナスダック上場申請で進展
De-SPACで仮想通貨取引所コインチェックのナスダック上場を目指すTHCPは、SECに申請書類を提出したことを発表。その後にコインチェックは、登録書類を公開することを発表した。
07:20
zkSync基盤のSophon、ノード販売で93億円調達
ノード販売とは、Sophonチェーンのノードを運用するためのNFT(ERC-721規格)ライセンスの販売で、早期段階でプロジェクトの仮想通貨トークンを割引価格で入手させるいわゆるトークンセールの一種だ。
06:45
Core Scientific黒字転換、1Qに270億円相当のビットコインを採掘
米ナスダック上場の仮想通貨ビットコインマイニング企業コア・サイエンティフィック社は、2024年第1四半期に2,825 BTCを自己採掘した。しかし半減期による影響はまだ反映されていない。
05:40
マスターカード、トークン化RWAの決済試験でJPモルガンやシティと提携
現在の課題として、投資適格債のような証券と、商業銀行のお金のような資産は、それぞれ別のシステムで機能している。RSNを利用すれば、単一のプラットフォーム上でトークン化資産の決済手続きを行うことができる。
05/08 水曜日
20:31
日本最大のWeb3カンファレンス「WebX2024」、先着順の読者限定割引コードを配布開始
国内最大手暗号資産(仮想通貨)メディアCoinPostが企画・運営するWeb3カンファレンス「WebX2024」。先着順の読者限定割引コードを配布開始しました。
15:06
EVM互換のZKロールアップとして関心を集める「Zircuit(ザーキット)」とは
暗号資産(仮想通貨)イーサリアム財団からL2研究助成金を獲得し、大手VCのPantera Capitalなどから出資を受ける「Zircuit(ザーキット)」について解説。ステーキングプロトコルは約2ヶ月で30億ドル以上を集めた。

通貨データ

グローバル情報
一覧
プロジェクト
アナウンス
上場/ペア