ミレイ議員が得票率でトップに浮上
アルゼンチン大統領候補のハビエル・ミレイ下院議員は13日、最終候補者を決める予備選挙で最多票を獲得した。ミレイ氏は暗号資産(仮想通貨)ビットコイン(BTC)を支持していることでも知られている。
開票率約97%の時点でミレイ氏の得票率は30%に達しており、個人の候補者として最多を獲得しているところだ。同氏は第三極の野党候補であるため、既存の二大政党への国民の不満噴出が、新興勢力への政権交代機運を高めるサプライズとして受け止められている。
ミレイ氏以下、野党の「トゥギャザー・フォー・チェンジ」候補者連合が得票率28.3%。現政権与党連合「ユニティ・フォー・ザ・ホームランド」の得票率が27.2%と続いた。
アルゼンチンでは、今年10月22日に大統領選挙の第1回投票が行われる予定だ。この投票で勝利するには、候補者が単独で得票率45%を獲得するか、40%を獲得して次点に10ポイントの差をつける必要がある。
ミレイ氏の語るビットコインの役割
物価上昇の著しいアルゼンチンの貧困率は実に4割近くに達するとされ、自国通貨ペソの急落も相まって、長らく経済危機や金融不安に苦しめられてきた。
“無政府資本主義”を自称するミレイ氏はそのような現状について、アルゼンチン中央銀行を通してインフレーションを引き起こしているのは政治家の責任であると批判。「中央銀行は詐欺に等しく、政治家がインフレ税で国民を騙す仕組みだ」などと、中央銀行の廃止にまで言及するなど痛烈な口調で意見を述べている。
これに対して、ビットコインの役割は、マネーを本来の創り手である民間部門に返すことだと独自の見解を披露した。また、ビットコインには発行上限が設定されていることも、法定通貨とは違う点だと話している。
なお、仮想通貨にはインフレを防ぐための半減期を設けているものも多く、ビットコインの次回の半減期は2024年4月と予想されているところだ。
関連:1年を切った次回ビットコイン半減期へのカウントダウン、市場動向と専門家の予測は?
半減期とは
ビットコインなど仮想通貨のマイニング報酬(=新規発行量)が半分に減るタイミングを指す。仮想通貨にはインフレを防ぐために「発行上限」が定められているものが多く、一定周期で訪れる半減期の度に、新規発行量が半分に減る仕組みになっている。供給量が減ることで希少価値が大幅に上昇し、価格が高騰しやすくなるため、仮想通貨特有の注目イベントでもある。
▶️仮想通貨用語集
ハイパーインフレで仮想通貨に注目
ミレイ氏は、インフレーションに対抗する最善の政策として、経済のドル化も提唱している。
アルゼンチンは度重なる経済危機とハイパーインフレーションを経験してきており、こうした状況もミレイ氏の支持につながっているとみられる。5月にはアルゼンチンのインフレ率は前年同月比で約114%上昇している。上昇率は過去30年で最大だ。
こうした背景の下、アルゼンチンでは仮想通貨に対して、投資目的の他、インフレに対するヘッジ手段としても注目が集まってきた。
仮想通貨決済企業TripleAは2022年、アルゼンチンの総人口の5.6%にあたる250万人以上が仮想通貨を所有しているとの見積りを発表している。
ミレイ氏が予備選挙で首位を獲得したことを受けて、ビットコインの価格は対アルゼンチンペソで史上最高値にまで上昇。年初来で、対ペソ価格は約240%高くなった格好だ。
🤔📈#Bitcoin’s value against the three weakest emerging markets currencies this year – the ARS, TRY and the RUB – has soared between 140% and 240% YTD.
— Kaiko (@KaikoData) August 14, 2023
👉Notably, its price in ARS just hit an all-time high! pic.twitter.com/G97nswb22F
一方で現在の政府は、外貨流出を避けるためにビットコイン購入を抑制してきた経緯もある。アルゼンチンは2022年に、インフレ圧力・債務不履行を回避するために、IMFと協定を締結したが、この際には、「仮想通貨の使用を抑止する」という文言も協定文書に含まれていた。
関連:アルゼンチン中銀、決済事業者による仮想通貨の取引・仲介を禁止か